(ここに掲載した記録は5月23日のものです)
会社のパソコンに届いた天体ソフトメーカーからのお知らせ、今夜西の空で月と金星が接近するという。
月と金星か。以前も撮った覚えがある。いろんな理由で今はみかんの丘に上がれていない。仕方無いか、家から撮ろう。そう思いながら帰宅して駐車場から空を見上げた。今夜は快晴。まだ明るさの残る空にひときわ輝く二人の女神の姿が有った。月の女神アルテミスと金星の神ヴィーナスだ。
家に入って最近買ったカメラと三脚を持ちだすと、家の近くの駐車場に戻った。大丈夫。ギリシャ神話の二人の神はまだ西の空に見える。そこでふと思いついた。近頃のスマホのカメラは性能が良い。どこまで撮れるんだろうと、そのスマホを車の屋根に載せてシャッターを押したのが上の写真だ。設定を変えると長時間露光や絞りの変更、感度の調節など、ちゃんとしたカメラと変わらない撮影ができる。スマホだと言わなければ気付かないかも知れない。
結果にそこそこ満足して、今度はカメラを一眼レフに換えた。一眼レフと言いながら、このカメラにファインダー用の鏡は無い。いわゆるミラーレスだ。そのEOS‐Rに40年近く前に買ったおもちゃのTOMYの6センチ望遠鏡を取り付けて空に向けた。それがこれ。
金星と共に写る月の影の部分がかなりはっきり写っている。本来は真っ暗なはずの月の影の部分が地球の反射光に照らされて見える「地球照」と呼ばれる現象だ。この地球照の明るさが3年前から急に暗くなってきたという観測データをアメリカの観測チームが発表した。このチームは過去20年にわたって地球照の明かるさを測っていたが、3年ほど前からそれが大きく変化したと言うのだ。
地球の反射光の大部分は白い雲が原因だ。その雲の量が3年前から急に減った。地球の温暖化によって大陸中央部の砂漠化が進み、蒸発する水蒸気の量が減って雲が湧かなくなったのが原因のようだ。地球の温暖化が夜空の風景にも影響を及ぼす。考えれば空恐ろしい話だ。
地球照を撮ったのと同じシステムで露出を変えて撮影した。地球照は消えて、代わりに月の表面が見えいている。
月の右の丸い模様は豊かの海だ。
レンズを家にしまっているフローライトの8センチと取り換えようかとも思ったが、その気力は残っていない。夜風に吹かれながら、西に沈みゆく二人の女神のランデブーをただボーっと眺めていた。