奈良の法隆寺は、現存する世界最古の木造建築物で、世界遺産(文化遺産)にも登録された1400年前頃の建物である。
税制上の“耐用年数”は、建物は木造づくり24年、鉄骨鉄筋コンクリート造り50年と決められているが、これはあくまでも便宜上の要件であって、実質的な耐用年数は、建物の使い方やメインテナンスによって全く変わってくる。周りをみるとよく分かるだろうし、まだ使える建物を建替えするのは不合理でもある。
また、建物遺産には、歴史、文化、先人の思い等々のかけがえのない価値があることはいうまでもない。ある市役所では、市庁舎の老朽化にもかかわらず、建て替える財源が無く優先すべき建物もあり、法定耐用年数を超えて使っているそうだ。もっとも法隆寺のように手入れが行き届いていれば長期間にわたって保存できるし、安全性やコスト面等も考慮し、まだ使えるものを利便性、予算確保だけで壊すのはもったいないものである。
帯広市のゴミ処理場管理棟が、法廷耐用年数が来るからといって壊されるそうである。帯広市は財政が豊かだから壊すと思うが、夕張市などは財政破綻しているのでこうはいかないだろう。
北海製缶(本社東京)が所有するレンガ造り倉庫は、小樽運河の景観に欠かせないものだが、老朽化により維持費がかさむため壊すことを小樽市に伝えたそうだ。 しかし、現在の70~80歳代になる人たちを中心に、「運河保存運動」に奔走した小樽市民の保存に対する意識は高く、企業レベルを超えて議論する必要もあろう。
帯広市のゴミ処理場管理棟に話を戻すと、まだ使える建物をいとも簡単に壊すのは、効率化を追求する民間建物だけで良い。これからの日本は、財政的に豊かではないので、まだ使える建物は壊さずに、別途、活用することも考えるべきであろう。
「十勝の活性化を考える会」会長
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