私のまわりにも、うつ病、ひきこもり、アスペルガー症候群などを抱える人が多数いて、居場所を探している。きっと、生きづらい世の中なのだろうだと思う。「一人悩まないで、一緒に悩もう」と言いたいのであるが、それほど簡単なことではない。
コロナ不況で元気の出ない中で、作家 佐藤愛子氏が、著書 “何がおかしい”を出版したが、いまの世の中、“何かが変だ”と思う。皇后陛下の雅子さんも長い間、「適応障害」で苦しまれたようで、こころの病になる人が多いように思う。現に、診療科目に心療内科や精神科と書いている病院が増えているように感じる。
適応障害とは、生活の中で生じるさまざまなストレスにうまく対処することができず、抑うつや不安感などの精神症状が現れて日常生活に支障をきたす病気のことである。他の精神疾患と明確に区別できない場合もあり、発症当初は適応障害と診断されても、経過を追ううちにうつ病や統合失調症、不安障害など診断名が変わることもある。
本人の苦悩は、本人でないと分からないし、本人も分からないこともあるだろう。何かできることはないか、何かしてあげたいと感ずるのが人情だと思う。しかし、苦しむ人々は閉じこもりがちで、声も小さい。でも当事者にとって、的を得たアドバイスほど有難いものはないだろう。「科学」の進歩は目覚ましいが、「こころ」の方は低下してきているのではないかと思う。
昨年11月、東京都内の地下鉄の駅で視覚障害者の男性が電車にはねられる死亡事故があったが、当時、反対側のホームには電車が止まっていて、視覚障害者の男性は電車が来ていると誤認した可能性があるらしい。自分も障害を持って初めて分かるのだが、「障害者は、何かをやってほしい」と思う時がある。
一方で健常者も、「何かをしてあげたい」と思うのだが、ボタンの掛け違いになることが多い。ある時、友人の難聴者が、「障害者は自ら手を上げて改善を要求すべきだ」と言っていたが、自分もそのように思っている。
私は昨年、アイヌに関する講演をしたが、アイヌの差別にも同じようなことがいえるのではないだろうか。日本人は、自分たちの民族の歴史をあまり知らないのではないだろうか。アイヌ民族の歴史を調べると、1899年に制定された「北海道旧土人保護法」などをもとに、①土地の没収、②日本語の強要、③漁猟の禁止などの差別が、公然と行われてきた歴史があった。
話は変わるが、ケインズと並んで近代経済学の理論を確立したヨゼフ・シュンペーターが、70年以上前に資本主義について、次のように考えていた。
「病人は精神身体症によって死に至る。ガンではなく、ノイローゼがこの病気なのである。病人は自己嫌悪のかたまりとなり、生きていく意思を失う」。つまり、資本主義は自信を失い衰退していく。そして、「その後継者として社会主義を強く志向するような事態をつくり出す」と予測した。シュンペーターが見ていた資本主義の未来が、現実になりつつあるのだろうか。
確かに、資本主義の弊害はコロナ禍により顕著化して貧富の拡大が進んでいるが、一方で社会主義国家は、覇権、独裁化、思想統制等が進んでいるようにも見える。すべてにおいて、主義や思想を超えてルールを作り、「共生」を志向する必要があるのではないだろうか。
「十勝の活性化を考える会」会長
注) 北海道旧土人保護法
北海道旧土人保護法は、北海道アイヌを「保護」する目的で制定された日本の法律である。
江戸時代より、江戸幕府は北海道を管轄する松前藩に対し、北海道アイヌの待遇改善を指示してきた。田沼意次の蝦夷地開発を目的とした北方探索などで、松前藩の北海道アイヌに対する差別的待遇は明らかであったが、当時の各藩の独立性に加え、遠隔地であるために政府の影響力が弱かったため、改善には至らなかった。
明治維新後に政府はアイヌ保護政策をとり、授産と教化を進めてきたが、アイヌが貨幣経済に馴染めなかったこともあり、充分な成果は上げられなかった。1891年(明治24年)に道庁が授産指導を廃止すると、耕地を捨て放浪する者が現れ、政府が与えた生活基盤の多くが失われてしまった。
こうしたアイヌの窮状を救う目的で、1893年(明治26年)に加藤正之助によって第五回帝国議会へ北海道土人保護法案が提出、アイヌ自身も代表を送り法案成立を目指して国会に陳情し、1899年(明治32年)に制定。
施行によって給与された土地の農耕を忌避する文化をもつアイヌはおおむね和人に賃貸し、自らは却って困窮するといった現象を生じた。この実情に鑑み、1937年(昭和12年)同法改正案を可決・施行し、土地の無償給与(8,338町歩、一戸あたり2.2町歩)、進学者への学資、住宅改築8割補助金の給付等のアイヌ保護育成策を構じた。
アイヌ民族からはじめての国会議員である萱野茂によって国会で廃止提案され、1997年(平成9年)7月1日、アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律(1997年、アイヌ文化振興法)は、国会で全会一致で可決。この法律は貧困にあえぐ「北海道旧土人」(アイヌ)の保護を目的とし、土地、医薬品、埋葬料、授業料の供与、供与に要する費用にはアイヌの共有財産からの収益を用い、不足時は国庫から出すこと、アイヌの共有財産は北海道庁長官が管理すること、供与地の換金を防ぐ目的で相続以外の譲渡や永小作権設定の禁止などが定められていた。
(出典:『ウィキペディア(Wikipedia)』より抜粋)
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