中西さんが、カウントダウン日記で原告側証人陳述書に触れています(カウントダウン日記参照)。
そこで、「9億円もらって自分たちを利用しただけなのか・・・」という文章ですが、誰がこういうことを言うのかが理解できないのです。と述べておられます。
これについては、私も以前書いた通りで(ここの記事)、やはりそうか、と思う一方、研究費の配分システムにまで突っ込んで、より詳細に論じておられます。この辺は、業界の外の人間にはわからないところで、中西さん本人ならではの意見です。
そして、特に印象に残ったのは下記のくだり。
また、松井さんは、環境ホルモンとナノの共通性は専門家なら言わなくとも分かると言っています。であれば、専門家、少なくとも同じテーマで科研費を受けるような人がこのような批判をする筈もないと思うのです。
ここでの批判は、上のくだりです。「利用しただけなのか」というもの。
文脈上、この批判は、環境ホルモン研究とナノ粒子の研究との関連がわからない人しか行いえない、となってしまいます。
整理しましょう。
有薗さんの人証(松井さんの主張でも同じ)では、研究者は2つのタイプに分かれます。
1)「環境ホルモンとナノ粒子の研究の関連性が当日のプレゼンで分かる人」=専門家A
2)「上記が分からない人」=専門家Bないし非専門家
1)は、「プレゼンが適切だった」という主張に関係します。
2)は、「名誉毀損があった」という主張に関連します。
当日、シンポジウムに来ていた人の多くは1)で、そうでない人、かつ中西さんの雑感を読んで上記の思いに至る人が2)ということになります。
しかし、2)の人は、少なくとも科研費を得るだけの専門家ではある筈です。ならば1)だって分かってもよさそうです。そうでないならば、環境ホルモンで科研費を受け取った研究者にも、1)と2)の「レベルの差」(という言葉が適切かどうかわかりませんが)がある、ということになりはしないか。
プレゼンを聞いた人と、雑感だけを見た人では、情報ソースが異なるので、違った感想を持つのかもしれません。しかし、「次はナノです」という雑感の表現でも、当日のプレゼン「今回学んだ環境ホルモンの研究はどうやって生かせるのか。私は次のチャレンジはナノ粒子だと思っています」でも、大差はありません。そこに「要するに環境ホルモンは終わった」が付いたとしても、関連性が分かる人には「環境ホルモン研究を発展させるのだな」と分からなければおかしいのではないでしょうか。
あまり形式張って突っ込んでも仕方ないのでやめますが、いずれ、何らかの理屈はつけられるとしても、上記1)と2)が矛盾することは確かです。裁判で主張をする場合、普通は、こういった論理の上の矛盾は極力潰します。そうでないと説得力がないからです。それができていないということは、すなわち、主張に無理があるのだ、と思われてもやむを得ないのではないでしょうか。
もっと言えば、原告側の主張にある1)と2)については、以下のように言えそうです。
・1)と2)は大部分が重なっていると考えられる。ここでは仮に全てが重なっていると考える。
・1)と2)を同時に満たす者は存在しない。
・ということは、1)の人がいないか、又は2)の人がいないか、或いは1)と2)の両方の人がいない、ということになる。
どうでしょうね。1)は証人御自身でしょうから、2)がいない、が正解かな、と思うのですが。
というか、結局2)って専門家じゃないヒトではないのか?と、思ったりする訳です。しかし、そうすると証人の発言と矛盾するんだよなあ。「研究者で松井氏を直接知らない人たち」って限定されているし。そうすると始めのほうに戻ってしまい、ますますもって、2)の存在は疑わしい気がします。
うーむ、つまり原告側は証人として、
松井先生にはガッカリだよ!
と言ってくれる研究者を呼ぶべきだったのではないか。え?そんな結論でいいの?
いいえ、勿論よくはないのです。
だって、この証人がなんと答えるかと考えてみるに、
「松井先生が宗旨替えしたと思いガッカリしました!」
「では、環境ホルモンとナノ粒子の研究の関連性はあると思わなかった?」
「はい!思いませんでした!」 → ×(原告主張「専門家なら分かる」に反する証言)
「関連性は分かりました!」
「では、『宗旨替え』ではないと分かるのでは?」
「それは分かりませんでした!」 → ×(論理の欠如。証言の威力なし)
「今は分かりましたよね。それで、今も松井先生にガッカリしていますか?」
「私の誤解でした。今はもうガッカリしていません。」 → ×(原告主張「名誉毀損があった」を事実上無効化。名誉回復は簡単で損害を認める程ではない)
「今でもガッカリしています!」 → ×(矛盾する証言。威力なし)
ということで、いずれにせよまともな証拠になるのは無理です。そう考えると、実際の原告側証人と証言はよく考えられている、とも言えるのでしょうかね。
そこで、「9億円もらって自分たちを利用しただけなのか・・・」という文章ですが、誰がこういうことを言うのかが理解できないのです。と述べておられます。
これについては、私も以前書いた通りで(ここの記事)、やはりそうか、と思う一方、研究費の配分システムにまで突っ込んで、より詳細に論じておられます。この辺は、業界の外の人間にはわからないところで、中西さん本人ならではの意見です。
そして、特に印象に残ったのは下記のくだり。
また、松井さんは、環境ホルモンとナノの共通性は専門家なら言わなくとも分かると言っています。であれば、専門家、少なくとも同じテーマで科研費を受けるような人がこのような批判をする筈もないと思うのです。
ここでの批判は、上のくだりです。「利用しただけなのか」というもの。
文脈上、この批判は、環境ホルモン研究とナノ粒子の研究との関連がわからない人しか行いえない、となってしまいます。
整理しましょう。
有薗さんの人証(松井さんの主張でも同じ)では、研究者は2つのタイプに分かれます。
1)「環境ホルモンとナノ粒子の研究の関連性が当日のプレゼンで分かる人」=専門家A
2)「上記が分からない人」=専門家Bないし非専門家
1)は、「プレゼンが適切だった」という主張に関係します。
2)は、「名誉毀損があった」という主張に関連します。
当日、シンポジウムに来ていた人の多くは1)で、そうでない人、かつ中西さんの雑感を読んで上記の思いに至る人が2)ということになります。
しかし、2)の人は、少なくとも科研費を得るだけの専門家ではある筈です。ならば1)だって分かってもよさそうです。そうでないならば、環境ホルモンで科研費を受け取った研究者にも、1)と2)の「レベルの差」(という言葉が適切かどうかわかりませんが)がある、ということになりはしないか。
プレゼンを聞いた人と、雑感だけを見た人では、情報ソースが異なるので、違った感想を持つのかもしれません。しかし、「次はナノです」という雑感の表現でも、当日のプレゼン「今回学んだ環境ホルモンの研究はどうやって生かせるのか。私は次のチャレンジはナノ粒子だと思っています」でも、大差はありません。そこに「要するに環境ホルモンは終わった」が付いたとしても、関連性が分かる人には「環境ホルモン研究を発展させるのだな」と分からなければおかしいのではないでしょうか。
あまり形式張って突っ込んでも仕方ないのでやめますが、いずれ、何らかの理屈はつけられるとしても、上記1)と2)が矛盾することは確かです。裁判で主張をする場合、普通は、こういった論理の上の矛盾は極力潰します。そうでないと説得力がないからです。それができていないということは、すなわち、主張に無理があるのだ、と思われてもやむを得ないのではないでしょうか。
もっと言えば、原告側の主張にある1)と2)については、以下のように言えそうです。
・1)と2)は大部分が重なっていると考えられる。ここでは仮に全てが重なっていると考える。
・1)と2)を同時に満たす者は存在しない。
・ということは、1)の人がいないか、又は2)の人がいないか、或いは1)と2)の両方の人がいない、ということになる。
どうでしょうね。1)は証人御自身でしょうから、2)がいない、が正解かな、と思うのですが。
というか、結局2)って専門家じゃないヒトではないのか?と、思ったりする訳です。しかし、そうすると証人の発言と矛盾するんだよなあ。「研究者で松井氏を直接知らない人たち」って限定されているし。そうすると始めのほうに戻ってしまい、ますますもって、2)の存在は疑わしい気がします。
うーむ、つまり原告側は証人として、
松井先生にはガッカリだよ!
と言ってくれる研究者を呼ぶべきだったのではないか。え?そんな結論でいいの?
いいえ、勿論よくはないのです。
だって、この証人がなんと答えるかと考えてみるに、
「松井先生が宗旨替えしたと思いガッカリしました!」
「では、環境ホルモンとナノ粒子の研究の関連性はあると思わなかった?」
「はい!思いませんでした!」 → ×(原告主張「専門家なら分かる」に反する証言)
「関連性は分かりました!」
「では、『宗旨替え』ではないと分かるのでは?」
「それは分かりませんでした!」 → ×(論理の欠如。証言の威力なし)
「今は分かりましたよね。それで、今も松井先生にガッカリしていますか?」
「私の誤解でした。今はもうガッカリしていません。」 → ×(原告主張「名誉毀損があった」を事実上無効化。名誉回復は簡単で損害を認める程ではない)
「今でもガッカリしています!」 → ×(矛盾する証言。威力なし)
ということで、いずれにせよまともな証拠になるのは無理です。そう考えると、実際の原告側証人と証言はよく考えられている、とも言えるのでしょうかね。