時事関係の記事は消えるので全文引用。
京大「想像で絵を描くのは人間だけ」
産経新聞 10月28日(火)7時55分配信
京都大霊長類研究所の松沢哲郎教授と中部学院大、滋賀県立大のグループは、人間の子供とチンパンジーを比較する研究で、想像をもとに絵を描けるのは人間だけだったとの結果を発表した。その場にないものをイメージする能力が関係している可能性があるという。米国の学術誌の電子版に28日掲載される。
松沢教授らは、1~3歳の人間の子供約60人と、チンパンジー6頭に絵を描かせる実験を行い、結果を分析。人間とチンパンジーはともに白紙上に抽象画のような絵を描くほか、あらかじめ描かれた図形に印をつけたり線をなぞったりすることができた。
一方、目や鼻のない猿の顔を見せたところ、欠けた部分を補って描き入れることができたのは、人間の子供だけだった。
こうした結果から、松沢教授は「今そこにないものを想像する能力は言語の獲得や記号の利用に関係すると考えられる。今後こうした能力を人間が身につけた過程を探りたい」とした上で、「発達障害などの子供が描いた絵を理解する手がかりにもなるのではないか」と述べた。
(引用ここまで)
「今そこにないものを想像する」ことは,目前に迫っていない自己の不幸や死を想像することにつながる。
また,「今そこにない」神秘的,超越的存在を認識したり共有したりすることにもつながる。
宗教にはこれらの能力が欠かせない。そういう意味では,ヒトという種と宗教との分かちがたい関係性を示唆する報告のように思える。
しかし、他方でピダハンの例は,ヒトがそこまで想像力を働かせる文化を必ずしも有する必要がないという実例になる。
想像力を働かせる範囲は「それぞれ」でありうるということだ。ようは,ある場所で,ある一定の時間,維持される文化のバリエーションにすぎない。ヒトは皆メメントモリを伴うものではない。
すなわち,ヒトのこの能力は,宗教の必要条件であっても十分条件ではない。
ところで、動物による絵画といえば、ゾウは上手な自画像(というかゾウの絵)を描くことで知られる。また、仲間の死に対する哀惜の感情表現もする。ゾウの想像力と宗教的感情との距離は、どの程度であり、チンパンジーとはどう異なるか?
あるいは、手話を訓練されたゴリラが、死を理解していたらしいという報告もある。ゴリラとチンパンジーでは、やはり宗教的感情との位相が異なるように思う。ひょっとしたら、チンパンジーは動物の中でも「想像力」が乏しい部類だ、という可能性も排除出来ない。
京大「想像で絵を描くのは人間だけ」
産経新聞 10月28日(火)7時55分配信
京都大霊長類研究所の松沢哲郎教授と中部学院大、滋賀県立大のグループは、人間の子供とチンパンジーを比較する研究で、想像をもとに絵を描けるのは人間だけだったとの結果を発表した。その場にないものをイメージする能力が関係している可能性があるという。米国の学術誌の電子版に28日掲載される。
松沢教授らは、1~3歳の人間の子供約60人と、チンパンジー6頭に絵を描かせる実験を行い、結果を分析。人間とチンパンジーはともに白紙上に抽象画のような絵を描くほか、あらかじめ描かれた図形に印をつけたり線をなぞったりすることができた。
一方、目や鼻のない猿の顔を見せたところ、欠けた部分を補って描き入れることができたのは、人間の子供だけだった。
こうした結果から、松沢教授は「今そこにないものを想像する能力は言語の獲得や記号の利用に関係すると考えられる。今後こうした能力を人間が身につけた過程を探りたい」とした上で、「発達障害などの子供が描いた絵を理解する手がかりにもなるのではないか」と述べた。
(引用ここまで)
「今そこにないものを想像する」ことは,目前に迫っていない自己の不幸や死を想像することにつながる。
また,「今そこにない」神秘的,超越的存在を認識したり共有したりすることにもつながる。
宗教にはこれらの能力が欠かせない。そういう意味では,ヒトという種と宗教との分かちがたい関係性を示唆する報告のように思える。
しかし、他方でピダハンの例は,ヒトがそこまで想像力を働かせる文化を必ずしも有する必要がないという実例になる。
想像力を働かせる範囲は「それぞれ」でありうるということだ。ようは,ある場所で,ある一定の時間,維持される文化のバリエーションにすぎない。ヒトは皆メメントモリを伴うものではない。
すなわち,ヒトのこの能力は,宗教の必要条件であっても十分条件ではない。
ところで、動物による絵画といえば、ゾウは上手な自画像(というかゾウの絵)を描くことで知られる。また、仲間の死に対する哀惜の感情表現もする。ゾウの想像力と宗教的感情との距離は、どの程度であり、チンパンジーとはどう異なるか?
あるいは、手話を訓練されたゴリラが、死を理解していたらしいという報告もある。ゴリラとチンパンジーでは、やはり宗教的感情との位相が異なるように思う。ひょっとしたら、チンパンジーは動物の中でも「想像力」が乏しい部類だ、という可能性も排除出来ない。