建前ではない発達障害者への教育と福祉の真実をせきららに描く良書。
もっとも斬新なのは、「弛める」ということを強調する、障害者への運動を手掛けておられる栗本氏の提言が、本の中ほどを占めていること。
具体的に医療教育福祉の現状がどうであり、障害の状況がどうであり、どうしたら楽になれるか、そして発達していけるか、という視点で書かれている。
現象への対応にのみ追われ、当事者の囲い込みに走る支援。発達障害のことを深く勉強せず、薄っぺらいマニュアル・決めつけ・画一的対応に走りがちな支援。利益最大化のために当事者を食い物にする支援。支援づけになることで、かえって生きる意欲を失わせていく支援。という現状が語られ、そうした現状に対する当事者や支援者への提言も盛り込まれている。
具体的にどうしたら改善されるか、という問いへの提言もあり、特に栗本氏からもたらされた知識は大変斬新に感じる。簡単に実践できる方法も紹介されている。
ただ現状認識についてはすでに公にされている情報であり、それほど深く真実をえぐっている印象はない。取り上げられている現実に対する反作用の精神と対抗策の数々が、ギョーカイメジャーの囲い込みから離れて社会で生きていこうとする者には必要であると考える。