自分。よく頑張ってきたと誉めてやろうと思う。
病気になるほど、頑張った。
営業成績のような明白な指標はないけど、強度行動障害を持つ人たちの人生を支えてきたのだ。
自動車産業などに従事し、世の場車として多くの仕事をしてきたのだ。
いろいろ身に着けてきたのだ。
若いころは、通院の必要なく、服薬なく、おかげで4か月おきぐらいに成分献血して銀杯までもらえるほど、健康だった。
十年前は自分の経験と、いわゆる福祉利用者たちを同一視し〈今も一部そうか〉、「あんたの経験を誰かのために使ってやれよ」という外野の声も、よく心の中を通っていた。
福祉職を経験して、さらに福祉利用者を経験してはっきりわかったが、私のように努力して社会適応しようという意欲的な人は、自分でいろいろ情報を集めてやってしまうということ。なにせ今はネット社会。知りたい情報の大半はネット上にあるからだ。
社会適応のための磁力が、重い障害などの影響で努力する意欲や能力がなく、だれかをぶん殴ってスカッとしたいとか、あるいは支援者がやってくれるから何もしなくていいとか、そういう人たちが一定数いる。
福祉支援者はむしろ、そういう人たちに関わることが仕事だから、自傷他害への対応が必須だし、そういう人たちから得られる障害福祉サービスによる経済的利益は大きいから、障害福祉サービスの範疇で自分の経験を活かせることは、ないように感じている。
最近、公共施設のトイレ内で、かつて深くかかわった強度行動障害の人、らしき方がヘルパーを伴って移動している光景に出くわした。
その方は、今まで大勢の強度行動障害の人たちと出会ってきた中でもひときわ狂暴なお方。
本来なら警察沙汰になり措置入院となっても何ら不思議でない暴行傷害、窃盗などの犯罪行為を繰り返す方だったが、親御さんがお金持ちで、すべて金で解決してきた。
おそらくその方が出歩く範囲の小売店はつぶれないと思う。帳尻の合わないものはすべてその方が勝手に抜き取ったものとして請求すればいいから。そうやって、本来なら万引きとして扱われるべきことを「重い障害者だから」で済まされてきたお方。
その日は諸条件重なって、おとなしい様子。
その方の楽しみを考慮する傾向にあった元古巣に行くときは、朝からスーパーハイテンションで、さらに障害者ではなく高齢者中心のヘルパーがつこうものなら、遊びが犯罪レベルにヒートアップし、度重なる公共施設の器物損壊〈リフォームが必要なレベルもあったと聞く〉や、ヘルパーに対する暴行傷害の報告を受けていた。
その方の先天性器質的障害による独特の動きを把握してきたから、その方だと確認できた。
私は声を掛けなかった。これからも一貫して遠巻きにする。古巣の中では私はもっぱら警備役を買っていた。その方にとってはテンションの上がる楽しみな人間だと思う。
今やその地域の福祉とは何ら関係なく、仕事前の貴重な時間を振り回されてはかなわないからだ。
その方がおとなしいのは、古巣ではない別の、その方とその家族が渋々利用している施設利用日で、障害福祉に長けている事情所のヘルパー〈独特の雰囲気でそこの所属だとわかる〉だったからだと思う。
その方が喜んでいくところでは〈甘い対応の事業所をなめていると思うが〉うれしさと興奮を、窃盗や暴行傷害で表現。〈後で親御さんが言い値を払ってすべて解決〉
その方が渋々行くところでは観念しておとなしい。
なんだかな、と思った。
その方の凶暴さはおそらくその方の立ち回り先ではよく知られていること。大事な商売道具を破壊されては、たとえ弁償されても、警察からなだめられても〈地域警察もよく知っている人物だと思う。そして逮捕したとても検挙できないことも理解しておられると思う〉、忘れることはできないだろう。そういえば、今の勤務先は、その方の歩行圏内。
コロナ禍でマスク姿なことと、その方が重度の知的障害を伴うこと。
その方はこれまで非常に大勢の支援者がかかわっていること。
支援者がコロコロ変わることも幸いだと思う。
私としてはその方に、かつて何年もかかわった人だと認識していただきたくないから。
その方の問題は、育ちの問題と言うことではないかもしれない。
その方と同じ診断名を持つ人の半分以上は在宅だという統計を見たことがある。
その障害に由来する狂暴さゆえ、施設が受けてくれないのだ。
そんなことも勉強したな。と思い出した。
日本の厚生労働省による分類では、その方の障害は発達障害に属さないが、発達障害に含める分類法もある。
私には、その方の困難が自分の経験からわかることではない。また、家族状況もかなり異なり、全部金で解決できるだけの力もない。
過去の取り組みについても調べたが、良好なものは皆無だった。
その障害であっても良好な人は障害ゆえの人懐っこさでなんとかなっているが、良い条件が重ならないと社会適応困難。
その方の家庭も金持とはいえ、かなりの金銭と労力をはたいてその方の家庭生活を維持していることを思い出した。
福祉の仕事をしてきてうつ病になってしまい、いろいろな物事に心が動かなくなってしまった。それから、今までの仕事を通して肩や腰も壊してきた。
もう、こういうすごい事例と対峙できるだけの精神力も身体能力もないことを、いまさらながら気づいた。
今の私はかつての私とは条件が異なる。
今の私は今の私ができることをする。
福祉組織的には当事者の経験や家族としての経験など害悪でしかないと、福祉現場では聞いている。
「ピアワーカー」なる存在とは、研修会でしか出会わない。
障害をオーブンにして福祉職をしている人たちとは大勢であってきたが、私もそうだったが、ただのワーカーである。
ピア的なことを意識してきたが、無駄なこと。有害なことだったと思っている。
福祉組織的には、当事者経験?家族としての経験?知ったこっちゃない。
おとなしくいてくれて、次のステップに進むなどもせず、そのまま組織のサービスの囲いにいてくれて、永遠に金を生むめんどりでいてくれることが最もいいのだ。
「その方」は、古巣では実は大変嫌がられたが、福祉当局との付き合い上、断れない感じだった。
古巣は準大手の社会福祉法人。リスクを取らくなても今までのお客さんだけで経営は十分に回るが、福祉当局からお願いされると、社会福祉法人ゆえに当局の指示には逆らえないようだ。
その方が好きでない渋々利用している施設は、金もうけを前面に出している株式会社だから、毎日利用してくれと言わんばかりだった。
おとなしくしてくれれば職員を一人貼り付けてもペイする。その方には、マンツーマン対応しても利益率3割程度の利潤が出るレベルの福祉サービス費を請求できるかただ。
ただ、親御さん的には労働を強いる傾向にある、その株式会社はあまり好きではないようで、こんなに重い障害者に仕事させるのかと、愚痴っておられたことを記憶している。
まあでも、古巣はフェイドアウトしていく〈すでにフェイドアウトした?〉し、本人が暴行傷害できなくなるほどテンション上がらない、その株式会社に行くことで、はた目から見れば「社会適応が増した」ということになる。
古巣は内心嫌がっていてもトップまで出てきてその方を楽しませてハイテンションになるようなことをしていた。それではだめだろうと思っていたが、トップからしてこんな姿勢ではだめだとあきらめていたことを思い出した。
それで、久しぶりに会ったその方は、薬と行動療法で感情を抑えられていた感じだった。
そうじゃないと、困るしな。おとなしいほうがいいや。
私は、社会の中で生きていきたいのなら、社会ルールを守ることに必要な支援は必要だと思う。
その方への支援として、株式会社さんたちのやっていることは社会的にも事業者利益的にもよく、結果的に居場所が得られるから本人たちの利益にもなると思う。
たとえ本人心情に沿わないとしても、犯罪行為は容認してはならないと、私は心から思う。
※その方について大変ぼかした書き方にしてあります。個人を特定させないための措置です。ご了承いただきたくお願いします。
長くなったけど、その方を久しぶりに見て、私の足跡を振り返りました。
若いころ、一生引きこもりといわれてきても、
県の発達障害者支援センターの偉い児童精神科医に「家事をする引きこもり」が治療目標とされても、
そんな連中の言うこと聞かないで、
大学出て、社会人として働いて、稼いで財産形成してきて、いろいろ勉強して経験してきたから、
今の自分があるのだと実感します。
度重なる適応障害でうつ病と診断され、障害年金ありきの人生になりましたが、無理を避ける人生に転換できたのも、知識経験と財産の蓄積があるからです。
しっかり生きてきたから、自分の人生に納得できます。
しっかり働き、学んできたから、主治医や支援者たちの勧告を受け入れて、大企業の障害者雇用という、セミリタイア的な生活ができるのです。
自分の経験は、福祉職として役に立たなかったかもしれないけれど、こうして皆さんに読んでいただいて、参考事例として何かの参考にしていただければ、まことに幸いなことです。