蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

構造神話学 農協パラダイムの終焉 1

2017年12月22日 | 小説
(2017年12月22日投稿)

投稿子(部族民通信の主宰・蕃神)は本年(2017年)4月より構造人類学の巨匠レヴィストロースの著作を取り上げています。題名は「猿でも分かる構造主義」「猿でも構造悲しき熱帯を読む」「神話学 生と調理」など続いて「レヴィストロースを読む神話と音楽」の8回目投稿を11月28日に終えました。「生と調理」及び「神話と音楽」は構造神話学の嚆矢(先がけ)とされるLe cru et le cuit =生と調理となりますが定冠詞Leが被さる意味に合わせると「生ということ及び調理されているということ」が訳となります。
「神話学 生と調理」では序章(Ouverture序曲と命名されている)32頁の解説に取り組みました。神話は3の分節として構成される、それぞれに形体が思想とともに設定されていると構造主義による分析を繰り広げています。関心をお持ちの方は9月13、15、18日の拙投稿に立ち寄りください。
序章での神話分析は個々の神話、その一編一編の構成の説明している。
さて投稿子はレヴィストロースに親しみ構造神話学を読んでこれをやっと理解したと喜んでも、実際はそのつもりになっただけと知る。陥穽に落ち込んでいるも、分かったからよかったねと慰める。しかし、これではもの足りない。自身が今生きるこの日本の神話を読み解かなければ、正しい理解ではないと常々思いこんでいた。それにしてもLe cru et le cuitの序曲は高尚さが過ぎて、取りつきの様がなかった。

しかるに神話学2巻目の「Du miel aux cendres=蜜から灰へ」では個々から神話群へと解析手法を発展させている。言語学ソシュールが主唱したサンタグム、パラディグム(syntagme,paradigme)の概念を取り入れ、神話を群として解析している。それが新鮮、幾十の行に目を落とし、頁を開きながらはたと気がついた。日本の神話解析にこれ、サンタグムとパラダイムが使えると。

サンタグム・パラダイムの解釈から始めよう。
サンタグムは連辞、パラダイムは範疇と訳される。これは構造言語学での用法です。構造神話学では訳語がないけれど、分かりやすい語を当てはめて、前者を「同列」、他方を「変移」とした。
ネットで言語学の解説頁にアクセスすると、パラダイムの概念は難しい。最も易しい理解の仕方は「パラダイムシフト」。1990年代、主にアメリカ企業のマーケティング担当が多いに引用した語である。ここで友人のK氏に登場を願う。彼はこの時期にアメリカ企業に勤務していた。電球からジェットエンジンまで製造している企業らしい。G社としてその医療部門のマーケティング職でK氏は「ブイブイ」煩かったらしい。
市場解析でパラダイムとは?の質問に、
「ある製品のアイデアがあって商品化する。1号機を発表して、2号機と頃合いを見て市場に出す。3号4号機と商品化されていくのですが、あくまで使われ方は始めのアイデアの範囲。その制約を守って改良し高機能化を付加していく。この製品の流れをパラダイムと言う」首を傾げる投稿子を前にK氏は分かりやすく;
「冷蔵庫を例に取ると、食品を腐らせない水を冷たくというアイデアがある。売れそうだと商品化する、最初は一枚扉で小型。だんだん大きくなって、冷凍室が付加されて、5枚扉で500リットルと大型化する。これがパラダイム」


図の解説:ヤコブソンがサンタグムとパラダイムを説明した図。思想を水平軸にとり、冷蔵庫洗濯機テレビをおいて(サンタグム)、垂直の軸に1扉2扉、白黒カラーなどの変移を置くと構造神話学になる。ネットから拝借しました。

シフトとは;
「5枚扉に行き着いて数年経って消費が鈍った、それならより大型、10枚扉の2000リットルの冷蔵庫を作ろうとしても売れないと予想できる。これまでの製品の変移の様、より便利で大型という=パラダイム=をシフトしないと新規の需要は見込めない。
しかしこのシフトが難しい、シフトできずの状態。そのまま沈滞するのが通例」だそうです。早期退職に追いつめられたK氏が嘆いた背景は、パラダイムシフトが成就出来なかったから。
サンタグムはマーケティング語としてはあまり使われていないが、しっかり存在する。その意味は、製品の上の思想、冷蔵庫であれば「幸福な電化生活」という「根本思想」を設定して、それをそもそもの中心に置いて、各商品である冷蔵庫、洗濯機、テレビなど、これも「思想」を「同列」に配置する。すなわち「サンタグムは思想の同列、パラダイムは思想を具現する形体の変移」1990年代のマーケッターはまさに構造主義を実践していたのだ!
そしてこの思考の進め方は日本神話の解析に使える、投稿子がハタと手を打った。

パラダイムとして日本神話を解析するにあたり、投稿子は3のサンタグム、同列思想を抽出した。それが農協パラダイム、続いて団地パラダイム、そして殿(しんがり)にはセレブパラダイムです。
(農協パラダイムの終焉1の了)
なおParadigmeはフランス語でパラディグムと発音します、パラダイムとして人口に膾炙しているので、こちら英語読みを使います。
(農協パラダイムの終焉 2回目投稿は12月24日)
コメント
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