鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

扇流し図小柄 古金工

2023-04-12 | 鍔の歴史

扇流し図小柄 古金工

 

幅広く少し長めに仕立てられた、所謂大小柄。扇流し図は、川に落としてしまった扇が、流されることによって思わぬ美観を呈したことから図に採られたというエピソードがある。着物や他の器物の図として頗る多く、またこれが展開されて破れ扇図が生まれたのも面白い。

背景は具体的な描写もあるが、所謂青海波文に簡略化された例も多い。この小柄は、表の扇の背景が立波、小柄の裏面が青海波風の線描写。裏行きにまで美観が求められたものである。

 

 


鏃図小柄 後藤程乗

2023-04-12 | 鍔の歴史

鏃図小柄 程乗作 光壽(花押)

 

小柄にも表裏がある。

小柄の裏面は、小柄櫃に収められているため、拵に装着されている状態では見ることができない。多くは平滑に仕立てられて鑢が切り施されているのみで装飾がない。後藤の作では金の薄板が焼き付けられた金哺(きんふくみ)とされる。

時に小柄の裏面にも装飾が施されることがある。例えば、後藤家でも江戸時代中頃には装飾性の高い裏板とされるようになる。加賀前田家に出仕した理兵衛家の顕乗や程乗などが優れた作品を遺している。写真は程乗と極められた小柄。赤銅地に金の削継。次は加賀金工の小柄で、朧銀地に金の割継。さらに三つ目は時代の降った町彫金工の作で、色金が多用されている。

 

鏃図小柄 後藤程乗

 

虫尽図小柄 加賀金工

 

月に雁図小柄 無銘園部