鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

黄石公と張良図笄 Kougai

2013-04-03 | 
黄石公と張良図笄


黄石公と張良図笄

 人に会う場合には必ず先に来て待つように忠告される。もちろんただ待っているのではなく、相手を知ること、相手を観察することから戦いが始まるのである。この図は我が国では能として演出された背景もあろう、装剣小道具の図としては比較的多い。
 劉邦が項羽に先んじて咸陽を陥落させた際、函谷関において足止めを食わされた項羽は、劉邦に出し抜かれたと考え、その後に両者の会談が設けられた鴻門において劉邦を殺そうとする。張良は事前に察知した樊噲(はんかい)らとともに会談の場に突入して劉邦を先に逃した後、劉邦の行動を釈明して事なきを得る。有名な鴻門の会であり、樊噲(はんかい)も図にとられることが多いので後に紹介する。

黄石公と張良図目貫 Menuki

2013-04-01 | 目貫
黄石公と張良図目貫


黄石公と張良図目貫

 秦始皇帝の暗殺を目論んだのが張良。ところが暗殺は不首尾に終わり、捕縛の手を逃れるように下邳に潜んでいた頃の話。とある老人と出会い、試練を経て、事を為す場合には相手に対しての事前の調査が必要であることなど、武士の心構えを教えられ、最後に兵法書を授けられる。その後、漢の王になる劉邦に仕えて戦国時代に活躍、多くの逸話を残している。
 この笄は、川に落とした沓を拾うよう命じられた張良が、龍神の助けを借りて探し出すというように脚色されたものながら、我が国の武士の戒めにも通じることから好まれて描かれた場面。赤銅地を高彫にし、金銀の色絵を巧みに施している。