鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

牡丹獅子図小柄 Kozuka

2016-03-12 | 鍔の歴史
牡丹獅子図小柄


牡丹獅子図小柄

 古美濃の作を江戸時代の金工が小柄として仕立て直したものであろう。先に紹介した二所物と同じ手である。下地である銀の小柄は、片切彫で牡丹が描き出されており、新旧の競作とも言い得る面白さがある。この金紋部分も、裏が観察できるのであれば、先の目貫同様に打ち出しと打ち込みの匠な鏨使いが楽しめるだろう。高彫された文様の隙間を透かし抜く技法も、裏からの観察で楽しめる。

牡丹獅子図二所 古美濃 Komino Menuki

2016-03-11 | 鍔の歴史
牡丹獅子図二所 古美濃


牡丹獅子図二所 古美濃

金地を裏面から打ち出し、表面からも打ち込んでくっきりとした高彫に表現した作。牡丹の表現が面白い。花弁の縁を肉高く残し、打ち込みによってその湾曲した様子と肉感を表わしている。花弁の縁には牡丹の特徴的な揺らぎがあり、筋があり、その表情は葉にも枝にも及んで生命感と動きとなっている。花の中央に蕾を描き、開き始めた牡丹としているようだが、定型化した花の表現がみられ、ここに古作の特徴も窺える。

牡丹に桜図目貫 海野 Unno Menuki

2016-03-10 | 鍔の歴史
牡丹に桜図目貫 海野


牡丹に桜図目貫 海野

 明治初期に活躍し、近代日本の彫金芸術を牽引した海野勝派の作。穏やかな春の光を受けて育った牡丹に、桜が咲き競っている。金無垢地を容彫にし、赤銅、素銅、銀、朧銀といった素材による別彫りの部分を置金に仕立てている贅沢な作。印象においても贅沢な空間描写だ。金の明るさが凄い。

枝牡丹図小柄 高瀬榮壽 Eiju Kozuka

2016-03-09 | 鍔の歴史
枝牡丹図小柄 高瀬榮壽


枝牡丹図小柄 高瀬榮壽

 手折られた一枝の白花牡丹。鮮やかな銀で花弁が描かれており、花弁も肉厚感が明瞭。ふっくらと開きかけた花弁の奥に覗き見えるのはたっぷりとした蕊、そして香りが立ち上ってくるかのような空気感も魅力。写実的牡丹図の典型。

牡丹図縁頭 青雲舎東峰 Toho Fuchigashira

2016-03-08 | 鍔の歴史
牡丹図縁頭 東峰


牡丹図縁頭 青雲舎東峰

 緋色銅と呼ばれる、鮮やかな色調を呈する銅合金を花弁に活かした作。赤銅地は全ての色を呑み込んでしまうかのように深い黒であり、それが故に他の色は、特に金は鮮やかに際立つ。ここでは花弁に緋色銅と銀が用いられており、葉は金。見事な色使いである。厚手の花弁が持つ優雅さと妖艶さは牡丹の特質。これが風に流されているように構成されている。このしなやかさも魅力だ。

牡丹図揃金具 直義 Naoyoshi Kozuka・Kogai

2016-03-07 | 鍔の歴史
牡丹図揃金具 直義


牡丹図揃金具 直義

朧銀地高彫金色絵。朧銀地は表面の手擦れによって色合いに微妙な変化が起こる。突き詰めれば劣化なのだが、その妙なる濃淡のある色調が古画を想わせる。この揃金具では、さらに金色絵を加えてあり、その手擦れも加わって更なる変化が生まれ、墨絵の淡彩を見ているようで美しい。絵画表現を突き詰めた作である。

牡丹図鍔 久平 Hisahira Tsuba

2016-03-05 | 鍔の歴史
牡丹図鍔 久平


牡丹図鍔 長州萩住久平作

 鍔の外形が牡丹の花。大胆な構成である。先に紹介した京透と同じように花を真上から見ているのだが、表現が違えばこのように異なる。当たり前だが頗る面白い。長州鍔工は、植物図を正確な構成と写実的な描法で彫り表わすを得意とした。本作もその一つで、決して写実的という訳ではないのだが、動きがあり活きいきとしていて素敵だ。

牡丹透図鍔 京透 Kyo-Sukashi

2016-03-04 | 鍔の歴史
牡丹透図鍔 京透


牡丹透図鍔 京透

鉄地に細い線で牡丹を描き表わしている鍔。重なっている花弁を構成しているのだが、いかにも上品で優雅な花の風合いが感じられる。造り込みは木瓜形。線の幅に強弱抑揚があり、花びらが揺れているような雰囲気。

牡丹図鍔 埋忠 Umetada Tsuba

2016-03-03 | 鍔の歴史
牡丹図鍔 埋忠



牡丹図鍔 埋忠

 平象嵌や布目象嵌を駆使して平面的描法になる文様表現を得意としたのが埋忠派。桃山三名人として知られる明壽には、墨絵のような表現からなる作品がある。室町時代に隆盛した墨絵の、金工による表現と捉えて良いのか、良く云われているように琳派の美観を狙ったものかは判らないが、文様美に優れていることは確か。この鍔はその美意識を受け継いだものと思われる。造り込みも面白い。花弁が重なっているかのような鍔の造形とし、その要所に毛彫と平象嵌の手法で牡丹唐草、鉄線唐草を線描写している。定型化していない牡丹が美しい。

牡丹図鐔 平田 Hirata Tsuba

2016-03-02 | 鍔の歴史
牡丹図鐔 平田


牡丹図鐔 平田

 山銅地を木瓜形に造り込み、腐らかしの手法で薄肉に牡丹唐草を浮かび上がらせた作。大胆な図案ながら、薄肉処理は頗る繊細。このバランスがいい。妙趣が感じられるのである。腐らかしとは、酸などで金属の表面を腐食させることで文様を彫り込むため、腐食させずに彫り残した部分が薄肉に浮かび上がる。平田彦三などが得意とした。この鐔では、細い線で表した牡丹や唐草に新趣が感じられる。

牡丹図目貫 古金工 Kokinko Menuki

2016-03-01 | 鍔の歴史
牡丹図目貫 古金工


牡丹図目貫 古金工

 山銅地容彫金色絵。彫口が濃密であり、葉や花弁の重なり合っている様子に量感があり、深く斬り込むような彫刻と、地を透かし去っていることによって牡丹の特徴が鮮明に浮かび上がっている。古典的な図柄構成で、写実的というわけでもないのだが、香りさえ漂ってきそうに感じられる。名品である。裏板の様子は、実用の時代の汚れが残っているため判然としない部分もあるが、打ち出しと打ち込み、際端を絞るような処理の様子が良く判る。