酔漢のくだまき

半落語的エッセイ未満。
難しい事は抜き。
単に「くだまき」なのでございます。

直伝

2014-03-21 09:42:14 | もっとくだまきな話
1908年、明治41年。
味の素の製造が始まりました。
と、こんな話題ではないのです。
この年、発刊されました「海軍割烹術参考書」にある料理が記載されます。

・材料牛肉(鶏肉)人参、玉葱、馬鈴薯、鹽「カレイ粉」麥粉、米
 
・初メ米ヲ洗イ置キ牛肉(鶏肉)玉葱、人参、馬鈴薯ヲ四角ニ恰モ賽ノ目ノ如ク細カク切リ、別ニ「フライパン」ニ「ヘット」ヲ布キ、麥粉ヲ入レ狐色クライニ煎リ、「カレイ粉」ヲ入レ「スープ」ニテ薄トロヽノ如ク溶シ、之レニ前ニ切リ置キシ肉野菜ヲ少シク煎リテ入レ(馬鈴薯ハ人参玉葱ノ殆ド煮エタルトキ入ル可シ)、弱火ニ掛ケ煮込ミ置キ、先ノ米ヲ「スープ」ニテ炊キ之レヲ皿ニ盛リ、前ノ煮込ミシモノニ鹽ニテ味ヲ付ケ、飯ニ掛ケテ供卓ス。此時漬物類即チ「チャツネ」ヲ付ケテ出スモノトス。


「カレイライス」がそれです。
申し上げますが、冒頭の写真がそうですから、すでにお分かりであったかと思うのです。
叔母との会話です。
「ばあちゃんのカレーってフライパンで作ってたけんど・・何してたのすか?」
「あれかぁ、メリケン粉とカレ粉ーさぁ炒めて混ぜてたのっしゃ」
ふと、テレビ「ごちそうさん」を見てましたら、主人公のカレイライスが「魔性のカレイ」と言われておるのを拝見。
んで、自分て作ってみっか?となった次第です。
尤も、初めてではございません。
何度か自分で作っては見ましたが、味が一定致しません。
今一度、頭を整理して、婆ちゃんから叔母に伝わったところの「海軍カレイ」を作ってみることにいたしました。
しかしながら、そこは、酔漢流にアレンジするわけです。

叔母から聞いたことはこうでした。
「肉は豚肉を使う」
「油、牛脂ではなくバターを使って小麦粉を炒める」
「ジャガイモは使わなくても良い」
小麦粉でルウを固めにするのは、艦の中でこぼれにくいようにするためだそうです。これは海軍カレイの一番大事なポイントです。
そして、「カレー粉はS&Bの赤い奴」これは外せないわけです。

ここで、少しこのS&Bのカレー缶について少しばかり語ります。
「海軍カレイは1908年」これは先ほど語ったところですが、S&B赤缶、所謂国産初のカレー粉の誕生は1923年大正12年です。
S&B創業者「山崎峯次郎」が、イギリス「クロス&ブラックウェル社」「C&B」のカレー粉と出会い、国産のカレーを作るために開発されたものです。
ですから、初期の海軍カレイは、このイギリスのカレー粉を使っていたようです。
考えれば、当時の海軍はイギリスと親密に行き来しており、そうした交流があったかと考えます。
さて、酔漢流カレーも、このS&B赤缶を使います。
では、ご紹介いたしましょう。

ルウは、小麦粉250g。バター200g。これが大体8~10皿分となります。
カレー粉は、SB赤缶の大きいサイズには、軽量スプーンが入ってますが、これが、すり切り1杯で一皿分ですから、辛さを見ながら8~10杯分使います。
少し、深めのお鍋にバターを溶かします。



このときから、もう中火以下、弱火が基本です。

バターが溶けきったら、小麦粉を入れます。出来たら、篩にかけた方が良いかもです。



何よりも、焦がさない事が肝要です。
火は超弱火です。
ここから先は、この鍋から絶対に離れない事です。
そうなんです、決して孫娘に預けてはいけません。夜なべ仕事で鍋の底をこすらなければならなくなります。
孫娘が、途中で忘れて遊びに行くかもしれないからです。
この作業に入るときは、アルムオンジになり切る事が何より大事になるわけです。



こんな感じです。
そして、小麦粉をいれた直前がこんな様子となります。



この木のヘラで、ゆっくりかき回しながら、絶対に焦がさない覚悟でもって作業するわけです。

20分後にこのように色が変わって来ます。



更に、10分後には、このように固まって来ます。
ここで、カレー粉を入れます。
入れた直前だけ、一度中火にします。



カレーの香にして来ましたら、再び、超弱火で料理を続けます。

単純な作業ですから、「J-WAVE」を聞きながらです。
この頃には、木べらに粘土のように着くわけですから、力も入れなくてはなりません。


そして、さらに15分後。



カレーソースのように、緩めです。
ここで火を止めます。

ボウルに移しておきます。
ボウルに移して、2時間後、しっかり固まります。


この状態であれば、1か月は持ちます(要冷蔵です)。保存を先に考えるときは、四角いタッパーに入れて固めます。
ルウが出来上がりました。
ルウとは、小麦粉とバターで練り込んだソースです。この前の段階。カレー粉を入れる前は、ホワイトシチューのルウとなります。

ルウが出来たところでカレー作りに入ります。

材料をご紹介いたします。
先に申しておきますが、ジャガイモは入れません。(お好みなのです)

玉ねぎ 中玉 4個
ニンジン 小 2本
セロリ  三分の一本
野菜は以上です。
みじん切りに致します。
お肉は、豚肉肩ロースブロック 約500g
カットトマト缶詰1缶

他に、香辛料野菜として。
ニンニク3片
生姜 三分の一
これらは、いずれもみじん切りに致します。
煮込むときのローリエ 葉を3枚用意します。

野菜は基本的にみじん切りにして、大きくしてはいません。
これも、酔漢の好みです。





そうだ、ここで。
「玉ねぎをみじん切りにすると、涙が出る」というのは、これはいたしかたない事ですが、よく、テレビなどで、大げさに水中メガネを使用したりしております。(ドラマの中とかで)。
これは意味がなくて、玉ねぎに含まれる硫化アリルは鼻から入って行くわけです。
ですから、鼻呼吸をせず、口呼吸が一番の方法ですが、そうもいきません。
舌を上の歯茎に着けることで、これが可能です。ティシューを鼻に詰めるのも・・・・。
一番大事な事は、玉ねぎの細胞をつぶさない事ですから、切れる包丁が良いのです。

野菜の下ごしらえが終わったから、お肉に入ります。
豚肩ロースを少し大きめに切って、あらかじめカレー粉をまぶしておきます。


熱した鍋に、ヘット(牛脂)をいれて溶かします。
お肉を入れて炒めます。




後で、煮込むので、表面にしっかり火が通ったら、別に移して置きます。



お肉をどけた鍋はそのままで、野菜に準備に入ります。
まずは、ニンニクとショウガを炒めます。



生姜、ニンニクの香が出て来ましたら、野菜を入れます。
火は中火です。
以前のミートソースでも、語ったところですが、玉ねぎがブラウンになるまで炒めます。
これも、大量の野菜ですから、水分を飛ばしながら、炒め続けます。
鍋の上部まであった野菜が、約三分の一程までになったところで、トマトを加えます。



トマトは潰しながら、炒めます。
トマトと玉ねぎが混ざって来ましたら、先ほど、どけておいた肉を入れます。

ここで、炒めて、更に、玉ねぎが茶色になって来て、水分がそこそこ出尽くした状態になったら、煮込む為の鍋に移します。
二度手間のようですが、炒める時に、深い鍋を使いますと、手が異常に疲れてしまいますので、それだけの理由です。
あとは、市販のカレーを作る時と同じ要領です。
最初のルウを加えて、煮込むだけです。



最後の最後に、ガラムマサラを大さじ3杯をいれて馴染ませたら、出来上がりです。



海軍カレーのレシピではないのですが、祖母、叔母から教えられた、レシピを参考に作ります。
祖母は横須賀の海軍公衆所で、聞いたレシピだったと、叔母から聞きました。
公衆所では、カレー粉が通常時では、売っていたとも聞いております。
横須賀鎮守府ですから、「榛名」あたりのカレーだったのかもしれませんね。
艦ごとに味が違っているのは、今も昔も同じなのでしょうね。
「カレーだけは、武蔵の方が大和より旨かった」古村さんが言っておったと、これも聴いた話です。


しらせシーフードカレー:砕氷艦「しらせ」
ハヤシライス:護衛艦「くらま」
うみぎり季節のカレー:護衛艦「うみぎり」
ポークカレー:掃海艦「はちじょう」
みねゆきカレー:護衛艦「みねゆき」
ビーフカレー:護衛艦「ひゅうが」
カレー:護衛艦「おおよど」
和風カレーライス:掃海艇「みやじま」
スパイシービーフカレー:掃海管制艇「おぎしま」
カツカレー:掃海艇「いずしま」
野菜カレー:掃海艦「つしま」
ポークカレー:護衛艦「さわゆき」
れんこんカレー:岩国航空基地隊
野菜カレーライス:潜水艦「あらしお」
しまかぜカレー:護衛艦「しまかぜ」
海自カレー はつゆき風:護衛艦「はつゆき」
牛スジの煮込みカレー:護衛艦「やまゆき」
激辛カレー:潜水艦「はやしお」
たかなみ特製カレー:護衛艦「たかなみ」
ひびきカレー:音響測定艦「ひびき」


写真は、那覇航空基地隊の「愛情たっぷりカレー」です

艦の人気は、カレーの味で決まったり?
今も昔も変わらないのですね。

さて、今回のカレーの味です。
「親父、喰えるゾ!旨い!」次男。
「呑んだ後では、少しボリュームあり過ぎかなぁ・・でも旨い」とシティラピッド。
「時間かけたからねぇぇ・・・・美味しいよ」家内。

家族には評判でした。でも、少し重かったかな?
小麦粉の分量と水分量(煮込むとき)を調整した方が、よさそうです。

たまには・・・ネ!



















ルウ

コメント (3)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 故郷へ | トップ | 冬の名残り  仙台公園から »
最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
これぞ「カレーの王道」ですね。 (すず)
2014-03-21 13:40:28
 こんにちは。名高い「海軍カレー」のレシピは、高校の家庭科の授業で習いました。実際に作ったんですが、小麦粉を炒めるのが、まぁめんどくさくて(爆)手軽に作れる「カレーの素」の偉大さを知りました。

>そうなんです、決して孫娘に預けてはいけません。

 大笑い!あのこげたチーズの回は、子どもながらにいろんな事が辛くて切なくて、忘れられないお話でした。

TVで高校野球の開会式を観て、大阪が良いお天気で、つくづく日本ておもしろいなぁと思っていたのですが、彼岸荒れで、夜中から雨風が吹いていたのが、ぴたっと止んで晴天となりました。
返信する
こんにちは (見張り員)
2014-03-21 16:46:21
『海軍割烹術参考書』復刻版を私も持っていて時どき読んでいます。
ああ、カレー!!先日食べたばかりですがまた食べたくなりました。
私も時に、カレー粉と小麦粉を痛めて『海軍カレー』(なんちゃって、がつきますがw)をいたします。
でも・・・酔漢さんのように素晴らしくない!負けました、師匠!!
さすがです、いつかごちそうしてくださいませ^^。

カレーは『武蔵』のほうが『大和』寄りおいしかった・・・!?古村さんみびいきでなく?w。
でもできるなら一度、双方のカレーを食べてみたいものであります。
返信する
「護衛艦カレーグランプリ」ga (すず)
2014-03-23 09:36:49
 コメント欄に、ニュースのURLを張り付けるのは不作法かもしれないんですが、あまりにもタイムリーなイベントのニュースがあったので、ごかんべん下さい。

★「ロケットニュース / 【カレー好き集まれ】横須賀で海自カレーの頂上決戦開催 「護衛艦カレーグランプリ」が開催されるぞ〜ッ!!」

http://news.biglobe.ne.jp/trend/0319/rct_140319_5353551947.html

返信する

コメントを投稿

もっとくだまきな話」カテゴリの最新記事