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JFK暗殺事件の真相――オズワルド単独犯行説の虚構を暴く 38 リンドン・B・ジョンソンの証言

2018-06-05 | JFK暗殺事件について
 このことはジョンソンの公式証言の欺瞞性、さらには彼とウォーレン委員会との一種の「共犯」関係を考える上で、非常に重要である。
 強調のため公式のジョンソンの証言の要点を挙げてみたい。

①副大統領車が教科書倉庫ビル前を通過した時点で、周囲を驚かせるような大きい発砲音が鳴り響いた。
②危機を察知した前席のシークレットサービスが振り返り、肩を打つか押すかして後席の副大統領の上体を下げさせた。
③彼は同時に後席のほかの二人にも伏せるよう叫んで指示した。
④彼は座席を乗り越えて副大統領の上に腰をおろした。
⑤その体重で副大統領は上体を二人の方に曲げた。
⑥副大統領は首を巡らして、夫人らがすでに頭を下げて伏せていることを確認した。
⑦この間、さらに複数回発砲音が続いた。

 しかし、アルトジェンズの写真で確認できる事実は、これと明らかに矛盾する。

 繰り返すが、この写真は、公式説によればケネディの被弾後、すなわちオズワルドによる二発目の発砲後の一瞬を写し取っている。しかし、①と⑦の銃声に対し、ジョンソンを除いて同じ車上の人物が全く反応を示していない。

 かつ、ジョンソンがすでに頭を伏せており、オズワルドの二発目の発砲後であるからには、この写真は少なくとも②及び③、ないしそれ以降の状況を写していることになる。しかしそのどれもこの写真では生じていないのは、誰の目にも明らかである。
 何より、副大統領夫人と上院議員にはこの全てに関し気づいた様子すら見られないのだ。

※なお⑦について補足すれば、オズワルドの犯行だとすると銃声は①のあとは「二回」だけである。しかし、⑦に関する証言は "other explosions" という複数形で表現されており、それ以上の発砲を示唆していることにも注目したい。

 つまりジョンソンの証言は、写真に表れた状況とどう見ても一致しない。端的に言えば、彼は自らに直属する調査委員会に対して、事実と異なる虚偽証言をしているのである。

 かくして、アルトジェンズの写真は、オズワルド単独犯行説を視覚的に否定しているばかりか、時の大統領の「嘘」をも証明している。
 改めて、車列先頭方向から現場の様子を撮影したこの唯一の写真が、事件の真相を開示する決定的証拠であることがわかる。

 では、委員会による報告当時現職大統領という立場にあったジョンソンが、一見無用とも思われる偽証をあえて行ったのはなぜか?

 ひとつの動機として、あくまで推測であるが、この写真及び後で引用する言葉からして、ジョンソンが周囲の誰よりも真っ先に銃撃に反応していたことがあると思われる。
 それは「昔とった杵柄」の喩えのとおり、元軍人として身に付いた身体反射だったかもしれない。もっとも彼はあまり銃撃戦と縁のなさそうな海軍将校だったのだが。




※軍人時代のジョンソン(上)とケネディ(下、右端の人物) ケネディが海軍軍人として魚雷艇で日本の艦船と戦ったのは有名である。国のトップリーダーに軍歴・実戦経験が求められる時代だったことがわかる。そしてまた、この時代の軍の権威のほどがうかがわれる。公式の検死が、銃創を扱う経験値を度外視してケネディにゆかりのある海軍病院で行われたのも、結局そうした事情によるものだったのだろう。

 しかし、ことによると彼は銃撃を予期させる情報を、いずれかの筋から事前に得ていたのかもしれない。だとすれば、この素早い反応も説明がつく。

 そう、ウォーレン報告書の成立に当たって、彼はそんなふうに「暗殺を予期していた」と勘ぐられることを、何としても避けなければならない立場にあった。
 彼は副大統領として、不測のケネディの死によって自動的に大統領に昇格している。殺人によって最も利益を受けた人物が最も疑われるのは当然である。

 実際、大統領に昇格した彼の隠しきれないその喜びぶりは、前掲のエアフォース・ワンでの写真を見てもわかる。野心的な政治家であった彼にとっては、喉から手が出るほど欲しかった僥倖だったであろう。悲嘆するケネディ夫人の前であまりに不謹慎とはいえ、その人間臭さは非難する気も起きない。


※エアフォース・ワンでの宣誓後の写真(再掲)

 そんなジョンソンは、自身が暗殺に関与していたという当然想定される疑念を回避するためにも、事実と異なる証言をする必要があった。それが正しいか否かはさておき、ある意味でそうしたとしても当然と言える立場にあったのである。
 この推測が正しいとすれば、彼の偽証自体はさほど「罪」はないと言えるかもしれない。

 しかし暗殺の事前情報を得ていながら黙過していた場合には話は別である。確かにその可能性は十分にある。そのことは後で触れたい。

 さて、彼が偽証したのには、動機としてもうひとつの事情があったのだと考えられる。おそらくそちらの方が決定的であっただろう。


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