歌と語りと映像で伝える「万歳峠」
うた・語り 山本晴美
映像 松村誠
「おばぁちゃんの手紙」につづく出会いがありました。
須玉町若神子にある万歳峠という出征する兵隊さんを見送る場所です。
その話を聞いた時、「バンザイ」という威勢のよい声が聞こえてきました。
とても悲しい響きでした。
その日からわたしの新しいライフワークがはじまりました。
「バンザイ峠」を知る人、当時を知る人、なんと手がかりの少ないこと。。
唯一手元には、この話をしてくれた樋口さんからの20年前の放送局のインタビュー映像。
そして現場は、草が生い茂り、ゴミが捨てられ、たくさんの車が通る県道脇に風化されてしまったようにありました。
犠牲になられた多くの方の命を数字をもって重んずるよりも、ひとりひとりの存在を知ることがご供養になる、おばぁちゃんの手紙から万歳峠への取り組みの中で学んだことです。
毎日、音楽と子どもたちと過ごし、時にはケアホームでご高齢の皆さんと音楽と過ごし、様々な年齢の皆さんと音楽でつながっていく毎日、そこから人が生きる限られた時間を意識できるような年齢になりました。
誰もの生きることに一生懸命で真剣な眼差しに触れ、見つめ合っていると、ご高齢者の時代のご苦労を感じ、これからの子どもたちの未来の世の中が平和であってほしいという、私の平和への想いの原点は身近な存在にあることに気づきます。
生きられなかった人たちがいた事実。
そして、ライブ活動で出会った皆さんからいただいた共感。
言葉の持つちからと音楽が持つ可能性を重ね、常に相手がある事を意識した表現に、語りうたへのこだわりがあります。
子どもたちへの歌語りライブで「なぜ戦争がはじまったの?」という質問に、うろたえる私。
その都度現場で歩みを確認し、課題をいただき出来上がってゆくのが私の歌語りです。
伝えるべく映像もどんどん進化しています。
「命」を自分の体の中で育む母親にとって、万歳峠から戦地へ見送る「命」への愛おしさが痛みに変わる時をどのように表現したらいいものか、「・・・君のため」とバンザイに見送られる若き兵隊さんの決意。
しばらく万歳峠にたたずみ耳を澄ませます。
映像は写真家の松村誠さんにお願いしました。
松村誠作品とのコラボライブは毎回贅沢だなぁ・・・と思いつつ、こだわっています。
彼の作品が本当に好きで「声は写真映像の一部になりたい・・・」と志は高く取り組んでいきます。
まだまだはじまったばかり・・・あまりの手がかりのなさにちょっぴり不安ですが、うたと語りと映像で伝える、歌語り「万歳峠」の完成を見守って下さい。
「万歳峠」は今日の山梨日日新聞、文化欄で取り上げていただきました。
あまりにたくさんのスペース(紙面1/4以上)をいただき驚いています。
お若い記者さんが、多くの方が「万歳峠」に出会って欲しいという想いを込めて、記事にして下さいました。
これからもこうやって、それぞれの役割で平和への想いを表現していくのだなぁとつくづく思いました。
今後も過程を報告をしながら、作品に向かい合いたいと思います。
田中さん、ありがとうございました。