僕の感性

詩、映画、古書、薀蓄などを感性の赴くまま紹介します。

運命の赤い糸

2008-03-07 20:23:07 | 薀蓄
 昔々、あるところに活玉依姫(いくたまよりひめ)という容姿端麗な娘がおりました。ある日娘が素性の知れない男の子どもをみごもってしまいます。相手は誰なのか父が娘を問いただしても、首をふるばかり。
 「今度男が来たとき、その衣服にこっそり長い糸を通しておくように」
と父は策を講じました。
 また男が通ってきて、父の言いつけどおり娘は男の衣のすそに糸を通した針を刺しました。男は夜明け前に帰っていきました。翌朝、その糸の先をたどっていくと、はるか三輪山の神の社につづいており、この男は三輪山の祭神、大物主大神(おおものぬしのおおかみ)であったことがわかりました。
 これが「三輪山伝説」で、ここから「運命の相手とは、生まれた時から小指と小指が赤い糸で結ばれている」と言う伝説が生まれたのです。

2008-02-27 00:15:58 | 薀蓄
 自分はどちらかというと「晴れ男」だと思っています。ただ雨は好きですね。
日本には昔からたくさんの雨を使ったきれいな言葉があります。
 思いつくままに、通り雨、小糠雨、氷雨、時雨(しぐれ)そして吉行淳之介の芥川賞受賞作「驟雨(しゅうう)」などあげられます。
 そんな雨がつく言葉の中でもっとも気の利いているのが「遣らずの雨」だと思います。お客様を帰したくないかのように、突然降ってくる雨のことです。

天正大判

2008-01-07 22:21:40 | 薀蓄
 1592年以降に豊臣秀吉が作らせた天正長大判金です。縦17,5cm、横10,2cmで金貨幣の中では世界一の大きさになります。
 当時、大判は日常の取引用ではなく、家臣への恩賞用、朝廷・公家などへの贈答用に鋳造された特別の貨幣です。表面には「拾両」という文字と、「後藤」という彫金師の名前が墨書されています。
 拾両というのは額面単位ではなく、重さの事で、約165gにあたります。因みに、一両の四分の一が「分」で、分のさらに四分の一の「朱」とあわせ、この四進法による貨幣単位が江戸時代においても踏襲されることになります。
 十両の天正時代の値打ちは、米40石と古い記録にあり、ひとり一日三合の米を食べたとすると、40年分の米代に相当します。天正長大判金の現在の価格は、希少性や状態の良し悪しで多少差がありますが、概ね一枚3千万から5千万円ぐらいになるのでしょうか。

ビクター商標ニッパー

2007-12-09 22:29:50 | 薀蓄
 中学生の頃、初めて購入したステレオがビクター製でした。陶器製の犬をもらった記憶があります。そのステレオでビートルズの赤版、青版のレコードを何度も何度も聴いていました。
 あまりにも有名なビクターの商標の犬のマークは、フランシス・バラードというイギリスの画家の作品なのです。モデルは兄の愛犬だったニッパーというフォックステリア。飼い主の死後、飼い主であった兄の声を入れたレコードをかけたところ、懐かしそうに聴き入っている姿を描いたものということです。
 この絵にhis master's voiceの文字をいれ、著作権出願していたのを、英国蓄音機(グラモフォン)が目をつけて買い取り、これを「ビクター・トーキング・マシン・カンパニー」の創業者、エミール・ベルリーナが商標としてアメリカで登録したものです。
 由緒ある歴史があるものですね。

山吹の花

2007-05-22 22:41:11 | 薀蓄
 野草園では山吹の花も見ごろでした。山吹の薀蓄をひとつ。
江戸城を築城した事で知られる室町中期の武将、大田道灌は鷹狩の途中でにわか雨にあい、近くの農家で蓑(みの)を借りようと立ち寄りました。すると少女が出てきて、ただ無言のまま黄色く咲いた山吹の一枝を差し出しました。道灌はその意味がわからず、「花をもとめたのではない」と不機嫌のまま帰宅します。事の始終を家臣に話したところ、それは、
 「七重八重 花は咲けども山吹の 実の(蓑)ひとつだに なきぞ悲しき」
という古歌で返答したのだと教えられます。「家が貧しくて蓑さえ持ち合わせがない」とゆかしく断ったのでした。この時道灌は、自分の無学を恥じ、以来大いに発奮してついには歌人としても名をなしたということです。1450年ごろの出来事といわれています。山吹は実がならない花なのです。