僕の感性

詩、映画、古書、薀蓄などを感性の赴くまま紹介します。

北杜夫さん天国に召される

2011-10-26 14:50:42 | 文学
私の大好きな北杜夫氏が84歳で天国に召されました。

彼に私淑したのは私が高校生の時。通学のバスに揺られ彼の作品を貪り読みました。
視力が急激に下がったのもこの頃からです。


年端もいかない若造が、様々な知識を吸収したのも彼の作品からでした。
特に『ドクトルマンボウ昆虫記』は夢中になって読んだ記憶があります。

躁鬱病という病気があるということも、「臍(ほぞ)をかむ」という言葉の意味も
彼の書物を通してでした。

純文学も日記やエッセイも巧みな彼にどんどん引き込まれていきました。

斎藤茂吉の次男ということもあり一層の親しみを持っていました。

当時気になっていた女性に
「ドクトルマンボウシリーズは面白いよ!」と紹介したら

「私はムツゴロウシリーズがすき」と言われ
どこか噛み合わなかった青春時代でもありました。

「マンボウという魚は海にぷかぷか浮いて、色んな魚たちが休憩するオアシスになっているんだよ。そして疲れた身体を癒してあげる海のお医者さんなんだ。」
こう彼が言ったかはわかりませんが・・・

心より哀悼の意を表します。

リンドウの事

2011-10-13 18:30:09 | 
秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種(ななくさ)の花

萩の花 尾花葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝貌(あさがお)の花

                          (万葉集 山上憶良)

ご存知、秋の七草は山上憶良が選定したものです。
歌に見える朝貌の花は「桔梗」のことです。

残念ながら竜胆(りんどう)は秋の七草に選ばれませんでした。

伊藤佐千夫の名作『野菊の墓』で、政夫と民のやりとりが出てきます。

「道理で民さんは野菊のような人だ」
「民さんは何がなし野菊の様な風だからさ」
政夫がこう話すと民は口真似のようにこう返すのです。
「政夫さんはりんどうのような人だ」

そう、直接告白しないで、花になぞらえて愛を語るなんて素敵ですよね!

自分も竜胆は大好きで、月山自然湖に赴いた時2葉の写真を購入しました。
一枚は、朝日連峰の「オヤマリンドウ」、もう一枚は、月山山頂に咲く
「エゾオヤマリンドウ」です。





そして今日、恒例の吉田様宅のりんどうの花・・・













今年も沢山撮らせていただいてありがとうございます。
いつのまにか季節は過ぎていきますね・・・

ペンネームの妙

2011-10-11 22:38:16 | 文学
歴史小説家の海音寺潮五郎というペンネームの由来が洒落ている。
以下の文はほとんどウイキペディアの抜粋である。

海音寺は中学の教師をしていたが、小説を書くという行為に対して世間の理解が乏しかったため、本名を隠すためにペンネームを検討していた。

そのうち、うとうと眠ってしまった海音寺は、これまで一度も行ったことがないにも関わらず、紀州の浜辺で眠っているという夢をみた。

その夢の中の夢で、誰の声ともわからないが「海音寺潮五郎、海音寺潮五郎、…」と呼ぶ声が聞こえ、そこで夢から覚めた。そして、「ああ、これでいいや。これならわかるまい」と思い、ペンネームとして「海音寺潮五郎」を用いることにして、小説を応募したとのことである。

なぜ「海音寺潮五郎」という名前が急に思い浮かんだのかについて海音寺は、「上田敏の訳詩集「海潮音」や近松門左衛門と才をきそった紀海音などのことが意識の深層部にあったのかもしれない」と説明している。

小説家になるぐらいなら「くたばってしまえ!」と父から罵倒された言葉を
ペンネームとした二葉亭四迷よりずーっと好きな謂れだ。