今月22日の厚労省副反応検討部会では、心筋炎による若者の死亡例も報告された。8月にモデルナ製の2回目を打った3日後、24歳の男性が自宅で死亡。解剖の結果、死因は急性心筋炎とされた。
9月には27歳の男性がファイザー1回目の16日後、劇症型心筋炎で死亡。厚労省の担当者は「(原因は)ウイルス性心筋炎で矛盾はないが、ワクチンの影響も否定できない」との専門家の意見を紹介した。いずれの事例も、ワクチンとの因果関係は調査中か不明だ。
「偶発的事象」と区別できず
「ワクチンで死者続出」「ワクチンは殺人兵器」。ちまたで根拠を示さない言説が流れている。部会の委員は9月「死亡報告が1000を超える中、解剖や検視もしているのに因果関係を認めるのはなかなか難しいことを、国民に分かるようにした方がいい」と提案した。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)によると、ワクチンと死亡との関係を判断する「評価」は、PMDAが選定した呼吸器、循環器、神経科などの専門家が2人1組で実施。意見が分かれると3人目が加わる。
これまでワクチンとの関連が否定できない「α(アルファ)」分類は皆無。アナフィラキシーなどで死亡すればアルファとなり得るが、大半は評価不能の「γ(ガンマ)」。理由は「ワクチンがなくても起き得る偶発的な事象と区別ができない」(PMDA)からだ。
焦らず慌てず、科学的に正当な説明を
ワクチン接種後の死因で多いのは65歳以上が狭心症や心筋梗塞などの心疾患、65歳未満は脳卒中や不整脈で、接種しなくても起きた可能性がある。
そうした例と、ワクチン接種による死亡を区別するにはどうしたらよいか。PMDAは「症例を積み上げざるを得ない」とする。将来的に多くの死亡例が集まるまで判断は難しいとの立場だ。
毎回「ワクチンの安全性に重大な懸念は認められない」との結論を出している部会では、委員から「現代医学の限界についても(国民に)理解いただく必要がある」との本音も漏れる。
22日の部会に参考人として参加した川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、過去の感染症ワクチンを例に「因果関係の解明を待っていては病気が広がる。ワクチンの利益と副反応のバランスに専門家は常に悩んでいる」と説明した上でこう助言する。
「確実な副反応だけでなく漠然とした不安が原因の場合もある。焦らず慌てず、科学的に正当な説明を、国民の疑問を聴きながら双方向に行うべきだ」