ここでは、天王洲アイル植栽計画を立てるに際して事前におこなった、20数年前の耐潮性樹木に関する試験植栽計画研究のあらましをUPします。むろん、このこと自体民間では珍しいことである。
なお、現代はWeb面でコピーアンドペーストの簡単な世の中、この文章の転載を希望される方はできる限りご連絡ください。
現在では色々な実験・栽培経験、植栽施工履歴データなどで海浜地区の気象の解明がなされてそれに適した樹木、好ましい配植プランが分かってきている。
天王洲アイルには、休日ごとに植物愛好家がカメラを持って散策するリピーターもいる。そのなかでも、なんどかこの業界の植栽計画担当者が訪れているようだ。この天王洲アイル植栽計画が多少なりとも業界で認知され、その後の東京湾沿いの海浜開発計画に活かされているものと思う。
試験植栽計画 ──耐潮性樹木の調査, 研究──
【 背景 】
耐潮性樹種の選択範囲の可能性を探る目的で試験植栽の必要性を感じて、 ㈱アール・アイ・エーのS氏と手を尽くして東京湾周辺に試験地の場所を探した。最初の候補地はセイタカアワダチソウの繁茂する江東区東雲の某ゼネコンの管理する遊休地に、二番手の候補に大井競馬場があった。その敷地内の一角は競走馬のトレーニング用に設けられたもので最近山砂で埋め立てたばかりであり、植栽基盤として好条件のロケーションである。境栽垣の植栽工事を無償でおこなうとの条件で数年間その一部を借りることになった。
1. 試験植栽の概要
・予算
¥ 5,000,000
・期間
平成元年 9月 → 平成 4年 9月
・所有者
東京都競馬㈱
・協力業者
芝茂造園建設㈱/ ㈱富沢造園
・場所
大井競馬場内運河沿い緑地 ---- 東京都品川区勝島 2丁 目地先
・方位
試験地は東京モノレール軌道に隣接した敷地である。位置的に
東方向へ平和島運河に交差している京浜運河があり、その方
角に都立大井埠頭中央海浜公園が対面し、それを飛び越えると
東京湾に直面する。
・面積
1,212.27 ㎡
・樹種
* 数量-- 59種 483+α本
* 高木
特殊樹 1種 1本 ワシントンヤシ
常緑樹 8〃 17〃 アラカシ クスノキ タブノキ ホルトノキ
トウネズミモチ マテバシイ モリシマアカシア フサアカシア
落葉樹 12〃 29〃 エノキ ケヤキ ネムノキ メタセコイア
モミジバフウ ナンキンハゼ ハナミズキ アキニレ イチョウ
エンジュ オオシマザクラ トゲナシニセアカシア
* 中、低木
常緑樹 13種 260本 イヌツゲ イヌマキ イチイ キンモクセイ
サザンカ ヒイラギ マサキ ヤブツバキ アベリア クチナシ
ツツジ類 ヒペリカム ボックスウッド
落葉樹 11〃 170〃 ムクゲ エニシダ キソケイ
タニウツギ ドウダンツツジ ヒュウガミズキ ボケ
ユキヤナギ レンギョウ ヤマハギ ヤマブキ
* 地被、蔓物
8種 株 コトネアスター ツルシキミ アガパンサス
マツバギク タマリュウ ヘデラ類 シバザクラ コウライシバ
* 推奨木
6種 6株 アセビ カラタチ キャラボク ナワシログミ
ハマナス フヨウ
・配植方法
* ホームベース(野球の) 形の植栽地 [40,000×20,000] + [(40,000+15,000)×16,500×1/2]
* 縦横5.0mピッチ 客土量--東京都建設局仕様 防潮ネット( 一部)
cf. 蒸散抑制剤 化成肥料 ケイ酸肥料
* 組合せ
土壌改良剤 無施用・バーク堆肥・バーミキュライト+パーライト・ピートモス+保水剤 → 5パターン
支柱形式 → 4パターン
・気象観測機材
* 百葉箱
* 長期巻自記温湿度計
* 風向風速計
* 最高最低温度計
・生育状況調査項目
* 気象状況 →
* 樹木形状計測 →樹木計測
* 枯損状況 →生育状況
2. 試験植栽の目的
わたしは造園設計を業務としてウォーターフロントのあるプロジェクト(品川区内)に関係してきた。植物にとって難しい海浜植栽の可能性についての調査、研究をおこなった。従来の計画では厳しい環境圧(気象害)に対し防風、飛砂防止の目的を持った機能植栽が多くなされている。その多くの植栽計画はしばしば単調で古典的なデザインに見受けられる。
この調査、研究ではプロジェクトの性格上、つまり快適な海浜の都市景観を創出する目的でプラザ~プロムナードに修景的な意匠を強調し、なおかつ機能植栽の面を併せもつ自然風の植栽計画がもとめられた。
3. 海浜植栽の現況
東京湾周辺の植栽環境を現地に踏査してみた。東京都港湾局. 建設局関連では、湾岸道路沿い、13号地.各埠頭公園、海上公園、臨海水族園にスポーツ施設、 そして民間では浦安の東京ディズニーランドおよび近接した各ホテル群などである。その結果言えることはすべて埋立て地の用途にかなうようにするため、その地上部の構造物、施設を保護する目的の機能植栽であるということである。樹種構成の内容はトウネズミモチ・マテバシイ・ヤマモモ・シイノキなどの早期緑化の目的をもつ樹種であり、密閉植栽用樹種である。このことを配植計画の視点で見ると、求められている『緑』は無機的に機能的にあるものであり必ずしも人々を楽しませ寛がせるものではない、と指摘できる。一方、東京ディズニーランドの計画はこの限りではなく、敷地外周部分に防風的な「土塁」を築いておりそれが効を奏し、樹林状に植物を配したアミューズメントゾーンでは、多種多様な樹種構成による配植と単木等を整形剪定技術で仕上げたトピアリー、刈込み等で植栽目標の修景性を得ている。
4. 試験植栽と植栽計画
試験地は当プロジェクトに酷似した海岸線より2 ㎞、京浜運河に面した埋め立て地内に1,212.00㎡の区画地に設けており、時間の経過は平成元年9月から3年にわたろうとしている。
樹種の選択には高木から地被、草花までの成木59種を選んだ。開始植付け時期に堪水等の問題が発生し不充分な面もあるが、これからの天王洲アイル植栽計画の上では参考になり得たとおもわれる。
樹種面では、落葉性高中木として、サルスベリ・ネムノキ・アカバナエゴノキ・ムクゲの花木、常緑性樹木はホルトノキ・モリシマアカシア・オリーブ・フェイジョアなどの暖地性の厚葉物がこの東京地区で順調な生育をしている。蔓物の場合はどんな樹種でもだいたい良好であるが、初期成長と吸着誘引を考慮すると人為的に栽培した育成伸長品よりポット苗にすべきであり、その方が風の影響を逃れることができる。低木、地被は乾燥害に留意が必要である。またこれは試験の最中に気づいたことだが、耐潮性樹木とは道路沿いの路傍植栽樹木と類似していることがわかった。
高木の配植は計画地内に街路樹のパターンにてアキニレ・シイノキ・ホルトノキを80本ほど,地中支柱にて施工している。
潮害は基本的に風が仲介して起きるものであり、海には海風という局地風があり海浜地域に無風状態のケースはあり得ない。それに加えて季節風の影響を一年を通じてを考えた場合、冬期の北風による乾燥害・寒害、3月~5月の南東風による樹木の幼芽の生長阻害、9月以降の台風による物理障害などが主たるものであり、それに樹木の生理が関係してくる。
過去の事例では海浜地域の土壌の場合は、痩悪土が多く見られ保水性・保肥力が劣りしばしば水収支のバランスをくずして枯死に至らしめる例が多い。
わたしはこの調査、研究にあたり数種類の資料を参照したが、結果としておおむねそのデータを首肯するものである。このプロジェクトは天王洲アイルを訪れる人々を楽しませるデザインコンセプトを持った植栽計画ということでスタートした。既に工事は完了し、その後の植栽管理業務として樹冠散水、補植作業を継続的に行っている。 以上
現在の状況はどうなっているか、下のサイトをクリックしてみてください。
天王洲アイル
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【手元の参考資料】
・「天王洲アイル・メモランダム 平成14年 3月28日発行 事業主へ提供」
・「天王洲アイル・品種名調査報告書(サクラ・ツバキ・オリーブ)平成13年 9月発行 事業主へ提供」
【出版書籍】
・「東京人- 東京湾ウォーターフロント特集号 緊急増刊 昭和62年10月1日発行 (財)東京都文化振興会」
・「新建築- 都市空間へ-RIAの計画と技法 臨時増刊 平成 8年11月発行 ㈱建報社」
・「都市再開発- 建築計画・設計シリーズ32 平成 8年11月10日発行 ㈱市ヶ谷出版社」
ほかに、天王洲アイル開発計画に関する建築設計図書・その後の経過等の資料など、お問い合わせ、ご質問に際して、連絡方法は下段のコメント(0)をクリックするか、少々面倒ですがこちらのH・P 有限会社グリーンワークスから入り、お問い合わせフォーム、メール等でお願いいたします。