うざね博士のブログ

緑の仕事を営むかたわら、赤裸々、かつ言いたい放題のうざね博士の日記。ユニークなH・Pも開設。

六軒町のサイカチの木

2024年11月23日 11時30分16秒 | 樹木医の日々片々
 
 11月16日、房州の館山市内の『六軒町のサイカチの木』について現地研修をおこなう。ちなみに、タイトル名の『六軒町のサイカチの木』はネット上の記事で見つけた見出しである。この案件はかなりその方面で流布されているようだ。これは千葉県樹木医会南ブロック主催、当日、20数名以上参加、樹木医会員自体は11名集まった。
 ここでは樹木医のみならず、地元住民、館山市当局、NHK千葉放送局、ミニコミ紙との対応が地域を巻き込む形で進んでいて優れている。そのボランティア活動は地元住民の〈サイカチの木を守る会〉をはじめとして目覚ましいものがある。
 活動の資金不足を補うための会場内の募金箱設置も好ましいことだろう。わたしには、樹木保護の活動としてひとつの理想的なパターンかなと思われる。
 今を去ること2019年の台風15号は、9月9日千葉の房総半島に珍しく上陸した。この台風は風雨が強く房州全体や安房地方はそれにより住宅家屋の倒壊、屋根の破損、市原のゴルフ練習場などが被害を受けた。
 このサイカチは、館山市街地にあり、根鉢や根系がほぼ市道の道路敷きに位置するこのサイカチはその時に元の所有者側の敷地内に倒れた。
 当初、枯死をおそれて後継樹を残すために、現地のサイカチの種子を播種したが発芽せず、静岡産の種子を育てて台木とし、現地のサイカチから穂木を採取して接ぎ育成させて成功した。
 現状では倒伏したサイカチは立て起こしはせずにこのままの状態で経過を見ることになる。今後の樹勢回復の方向性としては、現地でわが先輩樹木医が主導的に調査し、再生についてこの樹木の活力面は元気であり太鼓判を押すという発言をおこなった。現状での治療の詳細は技術上検討することになるが、取りあえず、対処方法では、①呼び接ぎ法、②不定根誘導法を提案されていてわたしも同じ見解を持った。この樹木医には同事例の過去の治療経歴があるのだ。
 ところで、サイカチの樹形から言うと規模が小さいながらも盤根錯節という表現がピッタリくる。根元廻りはとぐろを巻いているようで、平俗で妙なたとえだが、人間で言えば容貌魁偉ともいえるのか。

 以下に、あらためてサイカチの特性について触れる。
 Gleditsia.japonica Miq(ヤポニカ)和名サイカチ、漢字名阜莢。マメ科サイカチ属。 高さ15m、幹径1mになる落葉高木で、本州、四国、九州、中国大陸に分布する。茎に長さ10cmほどの強刺を多数つける。葉は羽状複葉、小葉数はアメリカサイカチ(Gleditsia.triacanthos)より少ない。花は黄緑色で長さ2.5mm、5~6月に咲き、花序は長さ20㎝になる。果実はやや捻じれ長さ25㎝になる。幹に棘が強いので庭木にはなりにくいが、器具用材、薬用などに用いられる。品種にトゲナシサイカチ(f.inermis Mayr)がある。
 以下はわたしの経験で記す。日本国内では北海道を除く全域で植栽されていて、植生上もそうだが繁殖的に自生化傾向にあり、水分を好み川沿いに繁茂するようだ。サイカチは古来、生活上も有用樹木として植えられた。かつて石鹸替わりに用いられたがそれは果実の種子ではなく莢部分である。わたしの幼少期、岩手県南部の各農家では莢を水中で揉み泡立てて落ちにくい汚れ落としに利用していたのを覚えている。
 参考資料:「園芸植物大事典2 小学館」ー323P 記述担当:横井正人氏

 また、余談だが、この際にという思いでわたしは曲亭馬琴の伝奇物「南総里見八犬伝」を読む。舞台はわたしの住む千葉県だが、かつて中里介山の大河小説である「大菩薩峠」以来であった。
 なお、その模様が当日の午後6時45時分からNHK首都圏ニュースで放送された。この見学・検討会には地元のNHK通信員も参加していた。放映の時間配分は予定では1分だそうだが、実はわたし自身もテレビ画面に映っていたので驚いたもの。6時49分から50分台の多分2,3秒程度だろうか。現地の倒伏したサイカチを数人で調査している状況がである。この番組は急なことで録画も知人にも知らせていない。元々自分の面相には自信がないが、その所作や作業服姿はまあまあである。
          
          
          
          
      
          
          
 倒伏前のサイカチ、ミニコミ紙の古い記事である。
          
 館山城山公園の高台に、現地からの接ぎ木苗であるサイカチの後継樹2本を記念的に植樹した。植穴にはぼかし肥料を入れて全員で立込み、水極めで植えた。
          
 館山城付近から館山湾(鏡ヶ浦)を望む。
          
 城山公園・クサギ
          
 城山公園・キダチチョウセンアサガオ

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