昨日の休みの日。朝の5時くらいから机に座り、整理する。この間来、読了した幸田文さんの随筆、「父、こんなこと」 を読んでメモする。ご存じの通り、幸田露伴との父子生活を書いている。この作品の前評判の高いことは聞いてはいたが、さすがにこの緊張させつつも物事を描写する文章力は大したもの。口語文の言葉が生き生きしてセンテンスが立っている。終戦直後を背景にしっかりした日常のこまごまする生活記録ではあるが、この際、古い内容であることは関係ない。ついでに今、わたしの専門分野である植物にリンクしそうな、同じ作者の 「木」 を読みたくて探しているのだが、幸田文さんの場合、文学者にありがちのセンチメンタルで情緒過多の上滑りにならないような気がするのだ。
この系列では武田泰淳さんの奥さんや、つい先日亡くなった女優、高峰秀子さんの文章はどうだったのだろう。探してはいるがまだ未読である。とても、近頃のトレンディードラマの女性シナリオライターあがりの安直な著作物では太刀打ち出来ないだろう。残念ながら、よく知られる向田邦子レベルでは、比すべくもない。
わたしは、日曜日のお決まりの朝のテレビ番組やNHKののど自慢、新婚さんいらっしゃい、をはさんで庭で作業を継続する。北側の前庭にある道路沿いの斜面状のボーダー花壇には広がり伸びた低木 サツキツツジがある。その密植の枝葉部分を垂直に刈り込み株もとの余地に、わが庭で自然に増えた 玉竜 や 石蕗 をびっしり補植する。この場合、土が崩れないように植え方に工夫する。追って、紫花やパトリオットくずれの名無しの ギボウシ もはめこむ予定だ。既に、 日本水仙 や 芝桜 や 花虎の尾 、 やぶ蘭 、 クロッカス 、 細葉万年草 が植わっているが、サツキツツジの日陰でうまく茂られなかったのだ。次に播種床をつくり、ギボウシ14品種や樹木の種子を播いていく。午前10時からはじめて薄暗くなった午後の6時ころに終わる。昼休みを2時間抜くと、都合、6時間30分の労働だ。わたしはその間じゅう、蹲踞、前かがみの姿勢をつづけたことになる。
日脚が長くなる。もう、春である。この関東でも25日の午前に、やや遅れて春一番が吹いた。やがてこれから、二十四節季では啓蟄だ、わたしのような園芸好きはうかうかしていられない。