この間に続けざまに、やっと、購入していた「フーテンの寅」を2本見た。このシリーズは2週間に一回、書店で配刊される。わたしにとって、最近はなんだか、心身ともに慌しくて半ば義務的なものという強迫観念に迫られるのと、ほんの少しの慰安の気分であった。
このブログをご覧になっている方はわたしが「フーテンの寅」の大ファンであることは理解していると思う。これが、ぽっと出の俄かファンではなく、映画化される前のテレビで放映時代からだからかれこれ40年近くなる。
第七作「男はつらいよ 奮闘編」。今回は榊原ルミが相方の女性役で、わたし自身にとっては、昔を思い出しながらも、この作品が一番出来がいいように思えた。
ちょっと怪しい津軽弁を、小学校教師の朴訥な配役を俳優の田中邦衛や、中卒で集団就職の知恵遅れの女性を榊原ルミが演じているのは御愛嬌そのもの。そうだとしても、その役柄、それを勝る表情やキャラクター作りに引き込まれる。なんだか、その時代を切りとったような作品だ。わたしにとって、実際に青森県の舞台を知らない訳でもなく、この映画ではその契機、場面、シチュエーションを丹念に作り込む。
わたしたちにとって、いつでも、日々の生活の哀歓はとりとめもなく過ぎていく。それを面白くするには江戸時代から続く落語の世界を模していきドラマ仕立てにすれば面白くなる。日本の原風景にあこがれをもつ満州育ちの山田洋次監督のシナリオの秀抜さはそこにあるだろう。
見終わった後に、榊原ルミの消息をインターネットで検索したら、結婚後、女優を引退し幸せに暮らしているようで、わたしは嬉しく思った。この人にとって女優業は仮の姿だ。変な話だが、ほっとした。
誤解を招くことを承知で言わせてもらうならば、まあ、わたしにとって、物を造る仕事がいつでも仕事の上位にあって、かたちのないものを売る俳優とか銀行員とかIT職とかの水もの商売、世にあるサービス業の職業を蔑視していることにもなるのだが。
いやいや、これは妄言多謝の極みである。