今回のネタは山田洋次監督の松竹映画 ≪男はつらいよ!・・・≫を取り上げる。「男はつらいよ・・・寅さんDVDマガジン」である。やっと、この講談社のシリーズも蒐集が終わる。内容は映画館上映作48作にテレビ版などを加えて全50巻になる。
この映画は一年に二度、夏休みとお正月に向けて上映、そして、渥美清の体調に合わせたもので後半は年に一回の割合になってきた。俳句は、50回の配本ごとにその都度一句ずつが掲載された。
あまり意味があるとは思えないが、ここでは労をいとわず、斯界では由緒ある出版社の角川書店の 「俳句歳時記」昭和49年版 にならって季節ごとの分類をしてみた。
俳句はわたしの場合は、一茶 や 芭蕉 ではなく 与謝蕪村 が好きである。和歌は 会津八一 を良しとする。育った東北の田舎が短歌や俳句づくりが比較的盛んな山村の土地柄のせいで、上京以来、結婚し子供ができて小学校入学の30歳台頃からわたしも詠みはじめた。最近はこのブログにも駄句を掲載している。どうしても、わたしのテーマは日常の四季感を表現することになるが、しょせん、下手の横好きの産物である。満足できるのは記憶に残る数句ぐらいだ。
渥美清は、種田山頭火 の自由律が好きだったそうだ。多分、どこかの出版社で句集が発刊されているだろうが、生活上の体温が尾を引く口語体の句作であり、虚実をまとって装う浮草稼業である俳優業のさなかに渥美清、本名の 田所康雄 の口吻が感じられてなかなかの完成度だ。
そういうわけで、ここでは季語ごとに集めてみる。一挙に50句を掲載、どうぞ、その詩境を味わっていただきたい。
風天・渥美清のうた
無季
・ポトリと言ったような気がする毛虫かな
・そのはねであの空飛んだか置物の鷹
・ひとり遊びなれし子のシャボン玉
・お遍路が一列に行く虹の中
・そば食らう歯のない婆(ヒト)や夜の駅
・うなだれし柳と佇む新内流し
・山吹キイロひまわりキイロたくわんキイロで生きるたのしさ
・豆まきもたねまきも家に居ずおそまきに泣く不孝者
・夢で会うふるさとの人みな若く
・初めての煙草おぼえし隅田川
・流れ星ひとり指さし静かなり
・さくら幸せにナッテオクレヨ寅次郎
春
・たけのこの向こう墓あり藪しずか
・なが雨や銀の帯ひく蝸牛
・花道に春雨や音もなく
・うつり香のひみつ知ってる春の闇
・ひばり突き刺さるように麦の中
・がばがばと音おそろしき鯉のぼり
・花びらの出て又入るや鯉の口
・天道虫指先くすぐりあっちへ飛んだ
・雨蛙木々の涙を仰ぎ見る
・いつも何か探しているようだナひばり
夏
・蛍消え髪の匂いのなかに居る
・さざ波のプール校舎にひとの無く
・日の落ちて蠅逃げるように鳴く残暑
・やわらかく浴衣着る女の微熱かな
・汗濡れし乳房覗かせ手渡すラムネ
・あわびかみおくばのいたむ海の家
・すだれ打つ夕立聞くや老いし猫
・うつり香の浴衣まるめてそのままに
秋
・閉ざされし茶亭のすだれのほつれかな
・コスモスひょろりふたおやもういない
・蓋あけたような天で九月かな
・小春日や柴又までの渡し船
・蒼き月案山子に命やどすよう
・ゆうべの台風どこに居たちょうちょ
・赤とんぼじっとしたまま明日どうする
・いまの雨が落としたもみじ踏んで行く
・おふくろみにきているビリになりたくない白い靴
・大根のサックリ切れて手の赤く
・ベースボール遠く見ている野菊かな
・村の子がくれた林檎ひとつ旅いそぐ
・雛にぎるように渡すぶどうひと房
冬
・鍋もっておでん屋までの月明かり
・好きだからつよくぶつけた雪合戦
・冬の蚊もふと愛おしく長く病み
・ただひとり風の音聞く大晦日
・冬めいてションベンの湯気ほっかりと
新年
・年賀だけでしのぶちいママのいる場末
この映画は一年に二度、夏休みとお正月に向けて上映、そして、渥美清の体調に合わせたもので後半は年に一回の割合になってきた。俳句は、50回の配本ごとにその都度一句ずつが掲載された。
あまり意味があるとは思えないが、ここでは労をいとわず、斯界では由緒ある出版社の角川書店の 「俳句歳時記」昭和49年版 にならって季節ごとの分類をしてみた。
俳句はわたしの場合は、一茶 や 芭蕉 ではなく 与謝蕪村 が好きである。和歌は 会津八一 を良しとする。育った東北の田舎が短歌や俳句づくりが比較的盛んな山村の土地柄のせいで、上京以来、結婚し子供ができて小学校入学の30歳台頃からわたしも詠みはじめた。最近はこのブログにも駄句を掲載している。どうしても、わたしのテーマは日常の四季感を表現することになるが、しょせん、下手の横好きの産物である。満足できるのは記憶に残る数句ぐらいだ。
渥美清は、種田山頭火 の自由律が好きだったそうだ。多分、どこかの出版社で句集が発刊されているだろうが、生活上の体温が尾を引く口語体の句作であり、虚実をまとって装う浮草稼業である俳優業のさなかに渥美清、本名の 田所康雄 の口吻が感じられてなかなかの完成度だ。
そういうわけで、ここでは季語ごとに集めてみる。一挙に50句を掲載、どうぞ、その詩境を味わっていただきたい。
風天・渥美清のうた
無季
・ポトリと言ったような気がする毛虫かな
・そのはねであの空飛んだか置物の鷹
・ひとり遊びなれし子のシャボン玉
・お遍路が一列に行く虹の中
・そば食らう歯のない婆(ヒト)や夜の駅
・うなだれし柳と佇む新内流し
・山吹キイロひまわりキイロたくわんキイロで生きるたのしさ
・豆まきもたねまきも家に居ずおそまきに泣く不孝者
・夢で会うふるさとの人みな若く
・初めての煙草おぼえし隅田川
・流れ星ひとり指さし静かなり
・さくら幸せにナッテオクレヨ寅次郎
春
・たけのこの向こう墓あり藪しずか
・なが雨や銀の帯ひく蝸牛
・花道に春雨や音もなく
・うつり香のひみつ知ってる春の闇
・ひばり突き刺さるように麦の中
・がばがばと音おそろしき鯉のぼり
・花びらの出て又入るや鯉の口
・天道虫指先くすぐりあっちへ飛んだ
・雨蛙木々の涙を仰ぎ見る
・いつも何か探しているようだナひばり
夏
・蛍消え髪の匂いのなかに居る
・さざ波のプール校舎にひとの無く
・日の落ちて蠅逃げるように鳴く残暑
・やわらかく浴衣着る女の微熱かな
・汗濡れし乳房覗かせ手渡すラムネ
・あわびかみおくばのいたむ海の家
・すだれ打つ夕立聞くや老いし猫
・うつり香の浴衣まるめてそのままに
秋
・閉ざされし茶亭のすだれのほつれかな
・コスモスひょろりふたおやもういない
・蓋あけたような天で九月かな
・小春日や柴又までの渡し船
・蒼き月案山子に命やどすよう
・ゆうべの台風どこに居たちょうちょ
・赤とんぼじっとしたまま明日どうする
・いまの雨が落としたもみじ踏んで行く
・おふくろみにきているビリになりたくない白い靴
・大根のサックリ切れて手の赤く
・ベースボール遠く見ている野菊かな
・村の子がくれた林檎ひとつ旅いそぐ
・雛にぎるように渡すぶどうひと房
冬
・鍋もっておでん屋までの月明かり
・好きだからつよくぶつけた雪合戦
・冬の蚊もふと愛おしく長く病み
・ただひとり風の音聞く大晦日
・冬めいてションベンの湯気ほっかりと
新年
・年賀だけでしのぶちいママのいる場末