猿八座 渡部八太夫

古説経・古浄瑠璃の世界

「国性爺合戦」初演

2024年10月22日 22時19分15秒 | 公演記録

長崎県平戸市が本年度1年間をかけて取り組む「鄭成功生誕400周年記念」事業に招聘されての「国性爺合戦」、猿八座としては、栄えある初演となりました。猿八座公演企画発起人の眞崎三津子氏、平戸市文化観光商工部文化交流課長の里崎忠雄氏、そのほか担当の方々に、大変お世話になりました。改めて御礼申しあげます。

眞崎三津子氏と自作の展示パネル。実物の貝で、平戸が舞台であることを説明していただきました。

 さて、近松門左衛門作「国性爺合戦」の主人公「和藤内」は、明の「鄭芝龍」が父で、母は日本人。妻の小睦も日本人。この「和藤内」が、後の「鄭成功」となり、明の再興のために闘うという話になっている。実際には、明の再興はならなかったが、台湾に渡って、オランダ軍(東インド会社)を追い払って、台湾を解放する。その功績によって台湾では、神様として崇められているとのこと。その鄭成功の出身地が平戸というわけである。平戸市の「鄭成功記念館」は、鄭成功の生家の場所に建っており、そのほかに、母が産気づいた「児誕石」という岩が海岸にあるなど、とにかく、東アジアの英雄「鄭成功」贔屓の町なのである。

鄭成功記念館

児誕石にて、左が、里崎忠雄氏。平戸の観光案内をしていただいた。

 実は、稽古場で、公開稽古をした時の観客の感想は、あまり芳しくは無かった。とにかく長大な話の一部分であるし、「国性爺合戦」の浄瑠璃自体も、かなり難解である。耳で聞いて分かるものではないだろう。ところが、流石、平戸の方々は、内容は熟知されているにちがいない。前半の立ち回りや、敵(韃靼)の武者の首が飛ぶところで、大喝采。平戸の浜での貝拾いや、中国語もどきで「きんにょう、きんにょう」とはなす所なども、うけていただいて、こちらが、ビックリでした。

 午前中のリハーサルで、冗長にならないように、テンポ良く進めようと確認したこともあって、多少早口だったかもしれないけれど、お客様の反応に乗せられて、流れが大変によかった。稽古場での記録が75分だったのに、今回はめずらしく10分も縮めて65分だった。これも又、珍しいこと。たいていは盛りすぎて長くなるものだが。

 椅子が足りなくて、追加したと聞きました。駆けつけて下さった平戸の皆皆様、本当にありがとうございました。

 

 


4回目の 新版 耳なし芳一

2024年10月13日 20時39分55秒 | 公演記録

今年は、「耳なし芳一」を4回、上演させていただきました。新版は今年からですので、第1回めからくらべると、今回の4回目の「耳なし芳一」は、一番上出来だったように感じました。それは、開催場所の阿賀町鹿瀬の皆皆様の反応が大変よいので、うまいこと乗せていただいたという感もありました。阿賀町教育委員会には、2年おきに、猿八座を呼びたいと呼びたいと言っていただいているので、ビエンナーレですね。また、再来年宜しくお願いします。ちなみに、ここは、津川の「狐の嫁入り」で有名なところで、うちにある狐面は、ここのお面です。

今回の記録は、以下のリンクにアップしました。怪談ですが、秋の夜長をお楽しみください。

 

 


新版 耳なし芳一

2024年06月11日 21時36分20秒 | 公演記録

毎年、定期的に開催していただいている「ドナルド・キーンセンター柏崎」での、本年一回目の公演は、小泉八雲原作「怪談」より、「耳なし芳一」でした。初演からもう10年が経ちます。

さて、今回は、座員の巫美麗が、薩摩琵琶の奏者であるので、芳一の琵琶語りを分担できないだろうかということで、トライした作品になりました。しかし、芳一が手にするのは「平家琵琶」です(あるいは「盲僧琵琶」)。なので、琵琶語りの雰囲気は十二分に出ましたが、妙な組み合わせだったかもしれません。やってるときは感じませんでしたが、撮影されたビデオをみて、はじめて感じました。

みなさんはどう、思われましたでしょうか????

以下、ビデオをご覧ください。

 

おまけは、昔話「ねずみ経」・・・最近、こっちの方が人気?

 

さて、秋のドナルド・キーンセンター公演は、11月24日です。演目はいよいよ、近松門左衛門作「国性爺合戦」(前半)です。

 


猿八座の猿八三番叟

2023年11月25日 17時58分13秒 | 公演記録

本年、猿八座は、新潟日報文化賞をいただきました。多くの支援者の方々に報告するとともに、感謝する会を稽古場で開きました。お忙しいところ、多くの方々のご出席をいただき誠に有り難う御座いました。

私が入座してから12年経ちますが、座員の数は、今が最高で、14名を数えます。何年ぶりかで、三番叟の連れ弾きが久しぶりにできたのも、若い座員が増えたお陰です。今回三味線のチャレンジしてくれた和泉猿丸は、琵琶語りを専門とするので、もう、語りの声は申し分がありません。文弥節は手がやさしいので、これから語り分けもできそうです。楽しみが増えました。三味線だけでなく、琵琶も入れて、猿八座独自の浄瑠璃ができると面白いと考えています。

 

 


弘知法印御伝記(前三段)

2023年11月06日 17時51分17秒 | 公演記録

ご当地の柏崎ドナルドキーンセンターの開館10周年記念において、「弘知法印御伝記」を前三段だけではありますが、演じることができたのは、誠に名誉なことと感謝申しあげます。しかしながら、一週間前程から、喉の痛みがあり、養生しても一向に良くならず、かといって悪化することもなく、がらがら声のまま勤めざるを得なかったのはまったく残念なことでした。来週11月12日(日)もまた、弘知法印御伝記を演じます。今度は村上市情報センターでお待ちしております。

三段目五智国分寺の場。弘知の妻、柳の前は、弘知の身代わりにされた馬子によって殺害された。弘知はそのことを知らずにいたが、柳の前の幽霊(左)によって、柳の前は、己の下手な企ての犠牲になったことを知る。一応、火の玉を飛ばしてある。そして、ますます出家の決意を固めるのであった。因みに、御殿の書き割りは五智如来で、右隅にいるのは弘法大師である。


昔話 屁っこき嫁どん

2023年06月06日 11時10分11秒 | 公演記録
ドナルドキーンセンター柏崎の創立10周年記念公演の1回目を無事に終えることができました。リピーターが多い柏崎、今回も満席でした。ありがとうござました。さて、長く関わらせていただいているキーンセンターですが、猿八座の十八番である「信太妻」は、初めての演目だったそうです。ちょっと意外ですが、これは、ここが、新しい演目をおろすのに適している場だからでしょう。先回は、昔話「あんもち三つ」が初演でした。まあ、おまけの作品ではありますが、今回も、昔話を用意しました。「屁っこき嫁どん」です。実は、座員の「八島」は、読み聞かせや、昔話が大変に上手です。またネタも豊富。どちらの演目も、八島の発案によるものです。次の新演目は、まだ未定ですが、来年に向けて、又新しい演目を検討中です。
さて、「屁っこき嫁どん」は以下でご覧ください。

短編浄瑠璃二題

2022年10月04日 11時35分54秒 | 公演記録
新潟新発田の稽古場に合宿していると、毎晩飲むことになる。大概は、馬鹿話で終わるが、時には、そのまま演出の工夫をし出したり、道具を考案してみたり、実際に稽古をしたりと、なかなか有意義なのである。次の外題をどうするか等の座全体の方針もここで決まるのがもっぱらだが、新作が生み出されたのは始めてである。
 8月の稽古の時に、例によって飲んでいたところ、もうきっかけは忘れてしまったが、八島さんが昔話を始めた。「餡餅三つ」というのである。多分、お土産の団子か餅でもあったのだろう。それが、なかなか面白い。というか、八島さんの語り口が大変良いので、つい釣り込まれた。こりゃ、幕間の寸劇にいいかもしれない。調べてみると、日本昔話でも取り上げられている。
 翌日早速、浄瑠璃をつけてみたのが、以下である。そして、早速、ぶっつけ本番で、9月の舞台に乗せた次第。

「狢」は、従来から小泉八雲の耳無し芳一とセットで演じてきた短編です。


古典にこだわらず、こうした題材も、ちょっと気分転換にはいい。お客様もなごんだようだし。

おたよりをいただきました。

2022年01月14日 20時41分18秒 | 公演記録
昨年末、新潟県浦佐の池田美術館で。人形浄瑠璃クリスマス会なるものを演じてきましたが、その時に見に来てくれた子供達からお便りがありました。驚いたことに、こども園の皆さんが、人形や三味線を手作りして、「人形浄瑠璃ごっこ」を始めたというのです。これは大変すばらしいことです。猿八座の分家が浦佐でできるかもしれません。




2021年猿八座舞台納

2021年12月28日 20時03分24秒 | 公演記録
コロナ禍二年目の今年、公演数は、少し増えましたが、たったの5公演しかしていません。まあ、ほとんどできなかった一昨年よりはましですけれど・・・まあしかし、猿八座にとってよかったのは、「小栗判官」全段通しの制作にたっぷり時間をかけてきたことでしょう。それは来年4月下旬のお楽しみです。
 そんな一年間の締めくくりは、新潟県文化振興課の「出前コンサート」とい企画でした。会場は雪国南魚沼市の池田記念美術館。演目は、信太妻と狢。この美術館は小泉八雲との縁が浅からずということで、今後、八雲の怪談シリーズなどだできそうな予感がしました。
 さて、人形浄瑠璃クリスマス公演会の中心は子供達。久しぶりのワークショップを、私が楽しみました。よいクリスマスをありがとうございました。






説経「をぐり」

2021年11月08日 21時12分47秒 | 公演記録
村上公演は、今回で10回目。昨年はできませんでしたが、今年は満席200名の村上市教育情報センターホールに、入場制限をかけて、150名満員御礼状態で、公演させていただきました。多くのご声援をいただき感謝に堪えません。
さて、昨年から取り組んでいる「をぐり」の全段通し狂言という途方も無い試みが、また一歩進みました。それというのも、鬼鹿毛から毒酒を語る三段目に続く四段目は、小栗亡き後の照手姫の顛末を語る段なのですが、それを思い切ってカットして、五段目の冥途・墓割れに繋げたというわけです。こうしますと、照手が万屋で水仕をしているという話が抜けてしまうので、そこは解説で補いますが、小栗が毒殺されて、閻魔大王の前に出るという場面に直接繋がるので、流れは良くなるわけです。時間的にコンパクトに仕上げるのにはいい構成です。
照手の姫の所へ、押し入り婿をした小栗判官を、父の横山は、人食い鬼鹿毛で殺そうとしますが、見事に乗りこなしてしまいます。その上、太夫にまで襲いかかろうとしています。びっくり!

鬼鹿毛で殺せなかったので、今度は鬼鹿毛を乗りこなした慰労の酒宴を口実に、毒酒を盛ります。
以上が、三段目
ここから五段目

閻魔大王の前で。本当は家来10人が娑婆帰りだったのが、遺体が火葬されたため帰られず、土葬にされた小栗が娑婆に戻される。

ところが、娑婆に戻った小栗は、元の小栗ではなかった。それを「餓鬼阿弥」と呼んだ。発見者は、藤沢山遊行寺の上人。
此の後は、ご存じの車引きの段です。

まだ、予定ではなく、想定の段階ですが、来年22年5月の連休あたりで、「をぐり」全段通しを公開したいと考えています。


寺泊つわぶき祭り 阿弥陀胸割公演 満員御礼

2021年10月21日 20時01分09秒 | 公演記録

つわぶき祭りにお呼びいただき誠にありがとうございました。より多くの方々に観劇いただくために、連続二回公演となりました。それぞれ40名を越える入りとなりましたこと、深く感謝申しあげます。

天寿姫が、肝を取られる所・・・新鮮なレバーが・・・見えます。今回、新調。新入座員猿丸の作品です。

胸割ですから、最後の場面で、阿弥陀如来お胸から血が出るところが、見せ所ではありますが、太夫として個人的に好きなのは、天寿が肝を取られる瞬間に「異香薫じ、音楽聞こえ、花が降る」所です。阿弥等如来ご来迎の典型的な場面で、神々しい。何度やってもそういう気持ちになります。
 阿弥陀胸割は、世界広しといえども、猿八座でしか御覧いただけません。次回の胸割阿弥陀は、10月31日(日)柏崎市のドナルドキーンセンターです。

ドナルドキーンセンター公演 説経をくり

2021年09月26日 22時53分40秒 | 公演記録
2021年9月23日秋分の日。ほぼ2年ぶりの柏崎ドナルドキーンセンターでの公演が、厳重なコロナ対策の中、実施されました。
昨年は「説経をくり」の前半三段分を制作し、12月に一応の公開稽古を、新発田の稽古場でさせていただきました。今年は、制作ペースがさらにゆっくりとなっておりまして、四段目を抜かして、ようやく五段を公開稽古に掛けることができました。
「をぐり五段目」は、相模国横山館で毒殺された小栗と十人の殿原達が、閻魔大王の審判を受けるところから。家来達は閻魔大王の護衛係に任命されて、小栗ひとり娑婆へ戻されます。


藤沢山遊行寺は、今もあるお寺で、小栗の墓もあります。その墓が割れて、出てきたのが小栗なのですが、「餓鬼病(あぎやみ)」あるいは「餓鬼阿弥」とも言われる姿です。それを、熊野湯の峰まで、人々が引いて行きます。


この「餓鬼病」が乗る車が餓鬼病車といいますが、藤沢から東海道を引かれて、岐阜県大垣の青墓の宿万屋(よろずや)の前まで来た時、三日間放置されてしまいます。それを、みつけたのが、妻の照手姫です。夫とは知らずに、その胸の札を読みますと、「ひと引き引きば千僧供養、ふた引き引けば万僧供養」と書いてあるので、夫の供養の為に引くことにするのでした。



11月7日(日)によていされている村上市情報センターでの公演では、三段目の「鬼鹿毛曲馬」「横山毒酒」からこの五段目の
「冥途墓割」「照手暇乞」「照手引」を続けて御覧いただく予定です。(※四段目はありません)

2020年 猿八座 活動開始

2020年01月13日 22時16分14秒 | 公演記録
昨年は、新潟県国民文化祭で大変お世話になりました。また、沢山の応援をいただきました。本年もよろしくお願いいたします。さて、新年を言祝いで、三番叟でスタートいたしました。小泉八雲の狢は、まあ、いわばお年玉。

柏崎ドナルドキーンセンターにて第6回の古浄瑠璃を楽しむ会

ところで、今年は、落ち着いて新作に取り組むことになりました。制作と稽古に集中するので、公演は少し減るかとお思いますが、出来たところから、公開稽古で試演していくので楽しみにお待ちください。さて、演目は「をくり」小栗判官照手姫です。宮内庁所蔵、岩佐又兵衛作の御物絵巻を全六段16場に構成し直して、お届けしようと考えています。「山椒太夫」全6段に匹敵する大作になると思われます。


照手姫

国民文化祭公演 全日程無事終了

2019年12月01日 20時55分16秒 | 公演記録
9月21日にスタートした新潟県国民文化祭参加公演「山椒太夫」は、全9公演を無事に終えることができました。最終日は、再び柏崎のドナルドキーンセンターに戻って、公演を締めくくりました。なによりも。ご来場いただきました皆々様に御礼申しあげます。この間の観客動員数は、千人近い数字となったと聞いております。全面的にご協力いただいたブルボンをはじめ、ご後援をいただいた各社様にも深く感謝申しあげます。
 猿八座としても希有な経験をさせていただきました。集中的に同じ演目を繰り返して演じる機会はなかなかありませんので、実践的稽古となって、手前味噌ですが、少しは実力アップにつながったような気がします。少なくとも自信になりました。
 
 さて、この「山椒太夫」は、そもそも「丹後国の金焼地蔵」の本地物語です。由良の如意寺の地蔵堂に納められております。猿八の芝居では、口で紹介されます。


安寿と厨子王の額につけられた焼き金の傷は、地蔵菩薩の験力によって消されますが、その傷は地蔵が負うので、これを「身代わり地蔵」というわけです。「金焼地蔵」にはその傷があるわけです。安寿は別れ際に、持仏の地蔵を形見として厨子王に渡します。



その地蔵菩薩の持仏は、母との再会の後、もう一度奇跡をおこして、母の目を開かせます。



この度は、連続九回、これらの奇跡が起こったわけです。ありがたし、ありがたし。

本年の猿八座公演はすべて終了いたしました。
来年2020年の初舞台は、1月11日(土)同じく柏崎ドナルドキーンセンターで、「三番叟」「狢」です。
少し、気が早いですが、よいお年をお迎えください。



国民文化祭参加 山椒太夫 新発田・村上公演終了

2019年11月18日 19時36分36秒 | 公演記録
後半の山場、二日連続公演でした。同じ場所ならむしろ連続公演はいいのですが、場所が違うと、舞台の組み立てばらしが続くので重労働です。ところで、新発田公演の会場「きやり館」は、元々料亭だった建物ですが、昔からの置屋さんが並ぶような所ですから、なにか別な住人がいらしゃるようで、開幕直前に幕が落ちる、開演中に電気のコードがたれる。最後に持仏のお地蔵さんが、舞台下に転がり落ちる等々、さんざんに悪戯をされました。翌日、村上公演は使い慣れた教育情報センターホールでしたが、前日のことがありましたから、念入りにお祓いをして臨みました。おかげさまで、今回の山椒太夫公演の中でも最高の舞台になったようです。さて、あと残すところは1回。最終回は再び柏崎のドナルドキーンセンターに帰ります。11月30日をお楽しみに。

新発田市きやり館  撮影:藤田雅善