まったくなんの知識も無かったウクライナでしたが、すっかりウクライナ贔屓になりました。長く複雑な歴史はよくわかりませんが、ウクライナ人の誇りは、ひしひしと伝わってきます。旧ソ連時代に、スターリンに破壊された文化を、人々の手で復元してきたその強い思いを感じます。
『ボルシチはロシア料理じゃないよ。ウクライナの伝統料理さ。』
肥沃で広大な黒い平原「チェル」が続く、豊かな国。おいしい国。故に常に紛争が絶えなかった。そのうえ、皮肉にも、原発事故のチェルノブイリという町の名も、豊かな土地という意味なのだという。
車窓より(キエフ~ドニプロ間 InterCity列車)
ウクライナ第一日目は、東部の都市「リビィウ」へ降り立ちました。州立人形劇場。信太妻。
びっくりしたのは、終了後、スタンディングオベーションになって、拍手が鳴りやまないのです。私は、まったく初めての経験なので、困ってしまいました。アンコールの用意など考えてもいなかったからです。申し訳なかったですが、ぺこぺこ頭をさげるしかありませんでした。
移動日を挟んで、2回目の公演は、国立キエフ人形劇場です。
キエフには日本大使館もあるので、表敬訪問しました。(お世話になった星野裕一氏)
今回の遠征は、そもそも日本との外交樹立25周年の記念事業ということで、大使館の招聘によるものでした。
今回の出し物は、すべて「信太妻」です。
来ました、来ました。やっぱり来ました。ちゃんとアンコール用意しました。「貉(むじな)」の大切場面。たぬきは持っていきませんでしたが・・・・キツネがいるからまあいいか。
この日、びっくりしたのは、ウクライナの楽器であるバンドゥーラの奏者という女性に三味線を持たせたら、ちゃんと指を立てて爪で糸を押さえたことでした。多分、この人はすぐに弾ける。
更に移動日。長大なドニプロ川沿いにキエフがら約700Km南下して、「ドニプロ」に到着。
州立青年劇場では、この劇場の人形を見せていただきました。写真中央は通訳をしていただいた大使館職員キリル氏。後ろにいらっしゃるお二人が職人気質の劇場職員。
ドニプロの観客の皆さんは、特に感性が優れていらっしゃったのでしょうか。要所要所での拍手のタイミングが、鋭すぎます。ましてや見たことも無い浄瑠璃なのにです。ウクライナでは400円もあれば、オペラが鑑賞できるということなので、どこの会場でも反応が大きいのも納得。どっかの国とは大違いで、芸能的な感覚が研ぎ澄まされているようです。そのアンコールがこれでよかったのでしょうか。下の写真がアンコール場面。次回があれば、大きな宿題です。これ、踊ってるんです。
おまけ:聖ムィハイール黄金ドーム修道院(キエフ)
キエフについた夕方。市内散策をしながら覗いた教会で立ちすくみました。夕方のミサでした。ウクライナ正教のミサというのは、まるで密教です。天から降るような讃美歌は、正に音楽聞こえですし、司祭が読み上げているのはお経にしか聞こえません。早口になると、まるで神名帳を読み上げているように聞こえ,やがて、香炉を振り回しながら、司祭が目の前にやって来て、私に向かって振るので、思わず合掌。人々に香炉を振って回るので、紫雲棚引き、芳香漂う。これは、天国というべきなのだろうなと思いながら、「南無阿弥陀佛」。
実は、教会でこんなに感動を味わった事は今迄無い。これに味をしめて、丁度日曜日だった「ドニプロ」では、ホテルの近くの「プレオブラジェンスキー教会」のミサに参加。1時間のミサを堪能。子供から老人まで、広い教会が満員。集まった人々が声を合わせて歌うのが、これまた感動的。この国は健全だと思う。
在ウクライナ日本国大使館特命全権大使の角茂樹様をはじめ、職員に皆様。又、各劇場のスタッフの皆々様、大変お世話になりました。大変に快適に演ずることが出来ましたこと、改めて御礼申し上げます。