チンソクの視線がその向かい側のチョンフンとチャンギの方にちらちら向かっている。彼女はチンソクが誰を指しているか直感的にわかるようだ。チャンギはゴルフマニアだが、チョンフンは全くゴルフをしない。そうなら恐らく前回ゴルフ会で男のメンバーは近所のサッカーボールのように、自分たちの気の向くままに駆けて行ったかもしれない。おお、かわいそうなチョンフン。
イミジは自分も分からない苛立ちが込み上げてチンソクの膝をばんと叩いた。
「やめて!」
「わかった、わかった。何、そのくらいのことで本性を出すの?」
その時折よくチンソクの携帯電話が鳴る。
「まあ? サンウク? どうして今日ダメなの? あんた一人だけお金を稼いでいるんじゃないの。遅くても来てよ、ねえ。そうよ、チャッシ、みんな来たのよ。今日はミジの本のサイン会も兼ねた日じゃないの。遅くても来て。私達はご飯を食べて二次会は多分前に行ったブルームーンに行きたいんだけど・・・行って私が電話するかどうかする。誰? そうよ、あんた。チャンギもチョンフンもミンスも全員来た。女の子も全員よ。誰かかわってくれ? ミジ? 代わろうか?」
急にチンソクが自分の携帯電話を彼女の耳にあてる。イミジは仕方なく携帯電話を耳に当てた。
「ミジ? お久しぶり。僕は今日そこへ行けないかもしれない。仕事も仕事だから・・・そのまま聞くだけ聞いて。二次会が終わって家に帰る時僕に電話くれない? 家が同じ方向じゃない。あんた今日車持ってきてなかったよね?
電話して、わかった?」
「ううん、」それは必要ないわ。」
イミジは携帯電話を耳から外して電話を切ってチンソクに渡した。
秘密の花園
サンウクは転科(前科)3犯だ。メンバーが20歳の大学新入生だった時に、彼は23歳だった。初め彼は両親の強い勧めに耐えられず、医科に進学したが、直ぐ辞めて翌年は仏文科に再入学した。そうしていつも彼特有の徹底したデカダンスの退廃の波に押し流され、酒に浸って過ごすから、単位に触れることもできなかったと言う。それで最後に決心したことが転科だった。結局、哲学科だった。それで彼は私たちの年齢より3歳多かった。転科(前科)3犯、彼は自分をそう呼んだ。哲学科も満足そうではなかったが、これ以上転科をすることは両親のためにも自分のためにも、一種の深刻な犯行と思われたので転科(前科)3犯で止めたと言った。いずれにしても哲学が彼にご飯を食べさせることはできなかったが、彼は今はご飯を食べて当然生きていた。
彼の妻はフロンティアのメンバー出身で、イミジ一人が彼女を知らない。イミジには3年後輩のサンウクの妻は金持ちの家の出身のしっかりした女性だということだけ聞いて知っている。サンウクが軍隊に行って来て復学した時に入ってきた新入生だと聞いた。サンウクは現在妻の実家の事業を受け継いで妻と一緒に運営している。名前を言うだけでわかる端正なフレンチレストランだった。
フロンティアのメンバーとブルームーンで二次会が盛り上がっている時に、サンウクから携帯電話が来た。11時を過ぎた時刻だった。話があるからすぐ会おうと言って、ブルームーンの駐車場で待つからイジミに素早く抜け出せと言った。ちょうど酒に酔ったチンソクがまた自伝小説の話を切り出し、話題をさらっていることにうんざりしていた上に、横に座ったチョンフンの憂鬱な目付きと、照明を受けて更に冬の平原のように荒涼と見える彼の毛の薄い頭がなぜか我慢できなかったからだ。トイレへ行くふりをして駐車場へ行くと、暗がりの中で高級車が一台非常灯を点滅させた。サンウクの車だった。しかし、運転席のドアを開けて出てきたのはサンウクではなく、彼の運転手だった。運転手がうつむいて後ろのドアを開けてくれた。サンウクが手を挙げた。