イミジはしばらく悩んだ。二人の男の手が少しずつ忍び込んでくるのをそのまま放っておくのか。しかし、二人の男の手がイミジの体の上で思いもよらぬ握手を交わすという不手際を、放置しなければならないのか。イミジは首を振った。首を振って体をひっくり返す気配を感じたのか、二人の男の手はしばらくためらった。しかし、すぐにまた両側から殺気立った二匹の蛇のようにイミジの体に忍び込んできた。イミジは動けなかった。彼女が今すぐにでも体を引き抜けば、さらに性急に近寄った二つの手が、すぐその場で出会ってしまうかもしれなかった。彼女の体の上で二人の男の手が出会うのは本当に身の毛がよだつように感じられた。二つの手が出会う前に・・・イミジは布団の中でこっそりと自分の両手を伸ばし、二人の男の手を一つずつ握って、手を彼らの体の方に向けさせた。そして、螺旋にわざと大きく伸びをして体を叩いて起き上がった。そして、誰に言うでもなく大きい声で言った。私トイレ行きたい。怖い所、誰か私を連れて行ってくれない? しかし、二人の男はわざと寝たふりをした。イミジは部屋を抜け出した。その時イミジは決心した。ここまでよ。ここで終わりよ。
「考えて見て。あんたと会うことにした日、ちょうどその場所でチョンフンと会った。その時僕がどれぐらい驚いたか。あんたもわかるだろう。あんたが計画したことだったから。チョンフンは目頭を潤ませて酒を飲んでいた。あんたとたった今別れたと・・・チョンフンの前の席に座って、僕は淡いあんたの匂いをかぐことができて。どんなに裏切られたと思ったか。チョンフンも同じで・・・それから今までチョンフンとは異常な暗黙の関係でつながっているようだ。話さないけれどお互いに言葉に詰まって・・・」
サンウクが煙草を取り出してくわえてから言った。
「あんたの小説に出てくるあんたと濃厚なセックスをする男、ヨンフンはチョンフンだよね? 私じゃないよね? チョンフンとそんな関係だと言うことは今は理解できる。僕はあんたとはキスしかしなかったじゃない。何と言わなければならないのかな。気分が異常だったんだよ。僕はあんたを本当に愛していたのに小説では・・・なぜ僕があんたを強姦するように出ているの? それはチョンフンじゃない? ところで、また理解できないのはキャラクターを見るとヨンフンという男は僕をモデルにしていることは言わずともわかるけど、どうしてそんな嘘をつくことができるの? 僕は自分がそんな破廉恥漢だと思わないんだけど・・・それは僕を二度殺すことだ。」
小説は虚構だ。嘘だ。イミジは今回はこの言葉さえ言いたくなかった。サンウクとは二回キスをしたけれど、チョンフンとはキスさえしなかった。しかし、そのことを言うことがどんな意味があるのか。代わりにイミジはこの話をしたかった。小説のキャラクターは明らかにあるモデルから創造されうるけれど、大部分いろいろな人の特徴がモザイクのように合成されるのだと。ただ自分がモデルになったと考える現実の人物は、小説の中で単純にいくつか一致する事実だけでも、自分をモデルに利用したと憤慨することも感動することもあるのだと。イミジがサンウクにこんな意図をもって話すと、サンウクは意外な反応を見せた。