
読書感想78 サンダカンまでー私の生きた道―<o:p></o:p>
著者 山崎朋子<o:p></o:p>
生年 1932年<o:p></o:p>
誕生地 長崎県佐世保市<o:p></o:p>
本籍地・故郷 福井県<o:p></o:p>
出版年 2001年<o:p></o:p>
出版社 朝日新聞社<o:p></o:p>
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感想<o:p></o:p>
著者はノンフィクション作家で女性史研究家である。歴史の闇に埋もれた、日本とアジアを舞台にした底辺に生きた女性たちの姿を、緻密な取材とフィールドワークでよみがえらせた、からゆきさん三部作「サンダカン八番娼館」(1972年)「サンダカンの墓」「あめゆきさんの歌」が有名である。また、「サンダカン八番娼館」を生みだす契機になった「アジア女性交流史研究会」を主宰し、小雑誌「アジア女性交流史研究」を1967年から1977年まで18号刊行している。<o:p></o:p>
著者の略歴は次のようである。<o:p></o:p>
福井県出身の海軍士官の父親と大地主の娘の母親と1歳下の妹の4人家族の長女として育つ。1932年に長崎県佐世保市で生まれ、直ぐに広島県呉市に移り、そこで成長するが、第二次世界大戦中に広島市に移り、敗戦直前に福井県の母親の実家に疎開する。潜水艦館長の父親は1940年の演習中の事故で亡くなる。母親の実家は戦後の農地改革で財産を失い、母親は自活のために華道と茶道を教える。著者は高校時代に演劇を始め女優を目指し上京を望むが、母親の反対で福井大学教育学部2部に進学し小学校の教員になる。夢を諦めない著者は東京の小学校の教員試験に合格し、念願の上京を果す。そして劇団に入り初舞台も踏む。小学校を止めて、朝鮮人の東大院生と知り合い事実婚をするが別れる。その後ストーカーによって顔を切られ、女優の道を断念する。そして児童文化史家の上笙一郎と結婚し、ノンフィクション作家の道を歩む。<o:p></o:p>
この自伝の中で対立した母親と娘の生き方が対照的である。母親は海軍大佐の未亡人としての体面を大事にし、安定した職業や学歴のある家柄の良い人との結婚を望む。娘は志だけで飛び出していく。安定した生活から外れることを恐れない。最初は女優になるために。そして女性史を研究するために。選ぶ夫も志のある男で、民族や学歴や貧しさは度外視していく。すごく感心したのは貧しさに対する耐性と乗り越えていく力だ。貧しさに対する強さを培ったのは戦後の貧しさと北陸の風土だと思う。大学に通うために父親の実家に寄宿するが、農家なので朝夕の食事作りという家事労働を担わせられる。あてがわれた部屋は屋根裏部屋で雪が吹きこんでくるような所だ。そしてそのパイオニア精神のたくましさにも驚いた。現にないなら、自分で作って行こうと言う姿勢だ。「アジア女性交流史研究会」がそうである。また、どんな人に対してもまっすぐに向き合うという姿勢にも頭が下がる。これがストーカー被害を受ける一因にもなったが、信頼してくれる人が多い理由だろう。彼女は亡き父親や広島で一瞬のうちに命を奪われたクラスメート、戦争で亡くなった人々に対する想いが深い。その悼む気持ちがたくさんの表現を生んだ。戦争を体験し、無から始まった戦後を駆け抜けた著者は、自ら波乱万丈のドラマを手繰り寄せた時代の子でもある。
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朴ワンソの「裸木」22<o:p></o:p>
P71~P72<o:p></o:p>
「必ずよ」<o:p></o:p>
「僕も頼むことがあるから、必ず聞いてもらわなければならないしね」<o:p></o:p>
彼は私の物まねをして、〈必ず〉をひときわ強調しようと口をちょっと突き出した。<o:p></o:p>
「何なの?」<o:p></o:p>
「今晩パーティーに一緒に行ってくれるよね?」<o:p></o:p>
「あら、またあんな粗末なパーティーのこと。誰があんなところへ行くのよ」<o:p></o:p>
「僕は行きたい。是非ミス李と一緒に」<o:p></o:p>
「私は行きたくないと言っているの」<o:p></o:p>
「いいよ。じゃ僕もオクヒド先生のお宅はわからないから。それでもいいかい?」<o:p></o:p>
「なんて卑怯で冷たい…いいわ。一緒に行ってあげるわ」<o:p></o:p>
私はちょっと腹が立ったけれど、彼のせがむ胸の内には全く憎むことができない何かがあり、パーティーに対する好奇心もないことはなかった。<o:p></o:p>
彼は丸く巻いた電線の束をぐるぐる回しながら、<o:p></o:p>
「結局オクヒド先生の欠勤が僕を助けたわけだね?」<o:p></o:p>
「オクヒド先生はどうしたのかな。やはりここを辞められるんじゃないかな?」<o:p></o:p>
「まあ、仕事の量がここの半分程度の職場も滅多にないのに。何かちょっと具合がよくないのかね。それはそうとミス李、今晩何か着るものを持っている?」<o:p></o:p>
彼の頭はパーティーのことでいっぱいだった。<o:p></o:p>
「どうして? このままではミスター黄の体面が傷つけられるんじゃないかと心配しているの?」<o:p></o:p>
私はみすぼらしい紺色のスーツの裾をさがしながら、ちょっとすねたふりをした。<o:p></o:p>
「いーいえ、僕はそのままのミス李がいいよ」<o:p></o:p>
彼の声がかすれるように静まって、目に不思議な光がこもったので、突然彼が大人のように見えた。<o:p></o:p>
いつもと同じように笑い飛ばすはずだったけれど、「ピイ」と言って私はわざと慌てて口をぴくぴくさせて、彼の次の言葉尻を奪い取ることが出来なかった。<o:p></o:p>
閉店時間が他の日よりも1時間ぐらい繰り上げられて、みんなは夜のパーティーの話でくすくす笑ってそわそわしていた。<o:p></o:p>
2階の休憩室には清掃の小母さん達がもうすでにビロードのチマ(スカート)と絹のチョゴリ(上衣)に着替えてだらっと座って、顔に最後の手入れをしながら、あんたのものは〈カネボウ〉とたたき、私のものは〈京都〉とたたき、この最高の余所行きの服の優劣を比べようと、目を血走らせていた。<o:p></o:p>
私は片隅で髪をとかすふりをしていて、ぼんやりと泰秀を待った。<o:p></o:p>
地下室へ行く階段を最初にビロードのチマ(スカート)の群れが尻を振りながら下りていき、わからないほどさっぱりとした服装の労務者雑役夫達が、そしてセールスガール達の絢爛たる服装がぎっしりと階段を埋めた。<o:p></o:p>
私は次第に気恥ずかしくなり、後では逃げ出してしまいたくなるほど、パーティーに行くのがむかついた。<o:p></o:p>
「長く待ったかい?」<o:p></o:p>
ほどなく現れた泰秀が赤いタイを結んだ首の周りを苦しそうに触りながら照れた。彼の照れはまるで若芽のようにみずみずしく、うっかり潰してしまう勇気が出なかった。<o:p></o:p>
「本当に行かなければならないの?」<o:p></o:p>
逃げ口上を一言言って、彼が突き出した手を素直に握って、階下〈スナックバー〉に入った時は、もうすでに広くないホールは足の踏み場もない混雑ぶりだった。<o:p></o:p>
音楽とめちゃくちゃに混じり合った口喧嘩のような騒音で、耳がぼうっとするだけで人々の所に行こうとしても何も見えなかった。<o:p></o:p>
私達はお互いに手を握ったまま、しばらく押しのけられるまま押されていようとしていると、自然にその口喧嘩の周りまで押されていた。<o:p></o:p>
音楽は小さいポータブルの電蓄から流れ出ていて、音楽を圧倒する口喧嘩は聞き取れないはずの近くで、コーラの箱、ポップコーンの袋などを囲む周りから、負けず嫌いのいざこざが起きていた。<o:p></o:p>
「ちょっと礼儀正しく焼いてください。韓国人の体面を考えても…」<o:p></o:p>
こんな調子の愛国者はどこでも一人か二人は必ずいる。<o:p></o:p>
「ちぇ、体面が何かわからない、ねじれた体面、体面が腹を一杯にしてくれるのかね」
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町田市小山ケ丘5丁目38番地にある三ツ目山公園に行く。京王相模原線の多摩境駅から徒歩20分ぐらい。駐車場はない。
公園の入口。
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