経団連:移民受け入れ提言 人口減対策、定住前提に--あす発表
日本経団連は少子高齢化に伴う人口減少対策として、定住移民の受け入れを提言する。労働力不足や内需の縮小などが、日本の経済社会を不安定にする恐れがあると判断して「期間を限定した外国人労働者の受け入れ」という従来の方針を転換、14日に発表する。だが、移民については労働条件の悪化や治安の悪化につながるとの反発も強い。
国立社会保障・人口問題研究所によると、2055年の総人口は現在より約30%減の8993万人で、15歳以上65歳未満の生産年齢人口はほぼ半減の4595万人になると推計される。その場合、高齢者1人を働き手1・3人で支える計算となり、若い世代の負担増で社会保障制度は破綻(はたん)し、医療や介護、教育、治安などの経済社会システムが脆弱(ぜいじゃく)化する。また、個人消費の長期低迷も懸念される。
経団連は「人口減対策に早急に取り組まなければ、若い世代の将来不安は解消しない」として、移民による人口維持が必要と判断した。日本は現在、日系人や専門技術者、技能研修などで外国人労働者約65万人を受け入れている。しかし、定住化を前提に受け入れることで、優秀な人材の確保にもつながることや、働き手世代の増加で人件費上昇を抑えられるとの期待もある。
提言は移民促進のための法整備や担当相の設置の必要性に言及するとともに、定住後も行政と地域、企業が連携し、日本語教育の充実、社会保障制度の適用を進めることを盛り込む。経団連は提言を議論のたたき台に国民の合意形成につなげたい考えだ。【後藤逸郎】
毎日新聞 2008年10月13日 東京朝刊 (毎日jp)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/kyousei/security/20080805-OYT8T00328.htm (より、一部抜粋)
〈欧州、社会統合進める〉 欧州では90年代後半以降、外国人を受け入れるための「社会統合政策」を国レベルで進めてきた。外国人が社会に適応できない問題が深刻化したためだ。
フランスは05年以降、国内約30か所に専門相談機関を設置。政府と外国人が個別に契約を結び、語学教育、職業訓練、仕事の紹介など個別のニーズにあわせた支援を行っている。オランダでも98年以降、各地の就労所得センターで同様の支援を行っている。
また、ドイツは05年から、言葉と文化など600時間以上に及ぶ講座の受講を義務づけており、参加を拒否する場合、罰金を科すなどしている。
各国がこうしたプログラムを実施するにあたって必要な費用は、外国人1人あたり、年間20万円から100万円近くに上る。
経団連は、移民受け入れ提言を「少子高齢化に伴う人口減少対策として」と言っていますが、これまでと同様に人件費を抑えるために安価な労働力を欲しているだけなのではないでしょうか。また、その陰で、日本人の雇用はどうなるのでしょうか。
過去、65万人受け入れたという日系人について、地域に溶け込むための努力やその子弟の教育などに、企業が十分なフォローを実行してきたでしょうか? 先日、「失踪、途中帰国1万2000人 企業で技能実習の外国人」(2008.10.9)というニュースを見ました。 受け入れた企業やこの政策を容認した政府は、このことに責任を感じてもらいたいものです。行方不明の外国人がその後どうなったのか、不法滞在者になっている人もいるのではないでしょうか。
一度受け入れれば、彼らの行く末に関わるすべてを日本の社会が負わなくてはなりません。そして、もし一時的に働き手世代が増加したとしても、かれらも数十年後には高齢者になるのです。
数を合わせることに早急な解決を求め、安易に移民を受け入れた結果、わが国の在り方が根本的に変容するかもしれない、このことを危惧します。人口維持を名目とする移民提言に反対するとともに、このような重大なことを、おそらく目先の労働力確保の面からしか考えていない経団連に怒りを感じます。