学祭も終わり、再び日常がやって来た。
しかし雪はというと、未だに学祭準備の時からの不調を引き摺っている。
雪はズキズキと痛む腹部を押さえながら、全く耳に入って来ない授業を聴いていた。
「‥‥‥‥」
痛みのピークが去っても、体調は最悪だ。
今日マジでヤバイかも‥何日も経ってるのにどうして一向に良くならないの？
明らかに顔色は悪いが、隣に座った聡美は寝ているし、
太一は同期と座っているので、誰も雪の不調に気づかなかった。
咳が出ないだけで風邪も治りきってない感じだし‥胃も痛い‥
なのに追い打ち‥教養授業の連続講義まである‥
こなさなければならない授業は多いのに、胃の痛みで目の前がぐらぐらと歪む。
雪はなんとか教養の授業までは聴くことが出来たが、それ以上は無理そうだった。
痛くなったり治まったり‥とてもじゃないけど授業に集中出来なかった‥
病院行って薬もらって‥
そう思って財布を開く雪。しかしそこには札が一枚も入っていなかった。
昨日母からおつかいを頼まれたのもあって、明らかに金欠だ。
なんてこった‥
財布から銀行のカードを取り出してみるも、使えるかといったら話は別だ。
う‥銀行にまだお金残ってるっちゃ残ってるけど‥
ここで使えば後の生活費にしわ寄せが‥すでにオーバーしてるしな‥
うう‥
バイトをして生活費を稼ごうにも、まずは身体を治さないと始まらない。
しかし脳裏には、昨日母がこぼしていた小言ばかりが思い浮かぶ。
「お父さん、今日も帰って来ないの？」
「このマンション、私名義じゃなかったらとっくに人手に渡ってるわよ！」
「生活費が足りなくて‥」
頼るべきところは、どこにも無かった。
重たい身体が、その現実を前にますます重く沈み込む‥。
ふと目線を上げると、自販機の前に見知った後ろ姿があった。
長身に黒いロングコート。
「あ‥太一」
藁をも掴む思いで、雪はその後姿へと近づこうとした。
しかし心に残ったプライドの切れ端が、ピタと雪の足を止める。
「‥‥‥‥」
雪は躊躇いの中に居た。
こんなことを頼むのは、生まれて初めてのことなのだ。
今まで聡美にはおろか、太一にはお金の話なんて、一度も口に出したことなかったのに‥
太一から「今日あの店に行ってみませんか」と誘われても、いつも「忙しいから」とその本当の理由を口にしなかった雪。
いくら親しい友人といえど、その線を越えたことなど一度も無かったのだ。
それでも今は、なりふりかまってはいられない。
雪は自身を押し殺して、そろりと太一の方へと歩いて行く。
まぁいいか‥今回だけ‥今回だけなら‥
彼女が近付いて来ていることなど微塵も気付いていない彼は、一人自販機の前で佇んでいた。
しかし彼は雪が思っていた人物、福井太一ではなかった。
彼女が徹底的に避けているその人、青田淳だったのである。
淳は、出て来た缶ジュースを手に取るとゆっくりとプルトップを開けた。
しかしそれに口を付ける様子はない。
「‥‥‥‥」
頭の中には、彼女の後ろ姿ばかりが浮かんでいた。
いつもつるんでいる友人達と歩いて行く背中や、勉強に疲れたのか突っ伏して眠っている背中ばかりが。
ようやく横顔が見えたかと思えば、すぐに後ろを向いてしまう。
「淳がアイスおごってくれるってよ。行こうぜ」
「いえ、胃の調子が良くないので」
淳はずっと、その後姿ばかりを見て来た。
ずっと。
間が‥
会話を始める一瞬の間さえ‥
彼女の前にある扉はひどく分厚くて、接触を試みても完全にシャットアウトされてしまう。
会話一つ、まともに出来ぬ程に。
カンッ
胸中が苛立ちに騒いでいた。
淳はその場に立ち尽くしながら、初めて感じるその感情をただただ持て余す。
‥だからなんでいつもいつも
俺は一体何を‥
その時だった。
「あの‥」
小さな、聞き覚えのあるその声。
いつの間にか淳の隣に、俯いた彼女が立っていた。
鼻を啜りながら、淳の隣に佇む雪。
思いもよらない展開に、淳はただ目を剥いてその場に立ち尽くす。
雪は彼の方を見ないまま、決まり悪そうに言葉を紡ぎ出した。
「私今日うっかりカード忘れて来ちゃって‥だから‥もし現金持ってたら千円‥」
「いや二百円程貸してもらえないかな？」
雪は小さな声でそう言うと、彼の服の端を握ったまま口元をぎゅっと結んで俯いた。
彼女の勘違いが生み出したこんな状況に、淳は信じられない思いで相対する‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
＜雪と淳＞勘違い でした。
雪ちゃん‥病院代くらいはお母さん出してくれると思うよ‥（T T）
親の気持ちになると本当切ないですよね。こんなになるまで我慢して‥と胸が痛くなります。
そして淳は、どんどん雪が気になって来てますね。
缶ジュース投げ捨てるくらいイライラしちゃって‥。
しかし雪‥太一と淳を間違えた！実は服の趣味、先輩と太一は似ているのでしょうか。
そういえば昔こんな一コマもありましたね。
昔といっても、時系列ではこの後の話なのですよね、これ。
変な感じです（＾＾；）
ていうか欲しい服親戚に頼んで買って来てもらったのか淳‥。なんかイメージじゃないな‥
次回は＜雪と淳＞赤面 です。
☆ご注意☆
コメント欄は、＞＜←これを使った顔文字は化けてしまうor文章が途中で切れてしまうので、
極力使われないようお願いします！
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しかし雪はというと、未だに学祭準備の時からの不調を引き摺っている。
雪はズキズキと痛む腹部を押さえながら、全く耳に入って来ない授業を聴いていた。
「‥‥‥‥」
痛みのピークが去っても、体調は最悪だ。
今日マジでヤバイかも‥何日も経ってるのにどうして一向に良くならないの？
明らかに顔色は悪いが、隣に座った聡美は寝ているし、
太一は同期と座っているので、誰も雪の不調に気づかなかった。
咳が出ないだけで風邪も治りきってない感じだし‥胃も痛い‥
なのに追い打ち‥教養授業の連続講義まである‥
こなさなければならない授業は多いのに、胃の痛みで目の前がぐらぐらと歪む。
雪はなんとか教養の授業までは聴くことが出来たが、それ以上は無理そうだった。
痛くなったり治まったり‥とてもじゃないけど授業に集中出来なかった‥
病院行って薬もらって‥
そう思って財布を開く雪。しかしそこには札が一枚も入っていなかった。
昨日母からおつかいを頼まれたのもあって、明らかに金欠だ。
なんてこった‥
財布から銀行のカードを取り出してみるも、使えるかといったら話は別だ。
う‥銀行にまだお金残ってるっちゃ残ってるけど‥
ここで使えば後の生活費にしわ寄せが‥すでにオーバーしてるしな‥
うう‥
バイトをして生活費を稼ごうにも、まずは身体を治さないと始まらない。
しかし脳裏には、昨日母がこぼしていた小言ばかりが思い浮かぶ。
「お父さん、今日も帰って来ないの？」
「このマンション、私名義じゃなかったらとっくに人手に渡ってるわよ！」
「生活費が足りなくて‥」
頼るべきところは、どこにも無かった。
重たい身体が、その現実を前にますます重く沈み込む‥。
ふと目線を上げると、自販機の前に見知った後ろ姿があった。
長身に黒いロングコート。
「あ‥太一」
藁をも掴む思いで、雪はその後姿へと近づこうとした。
しかし心に残ったプライドの切れ端が、ピタと雪の足を止める。
「‥‥‥‥」
雪は躊躇いの中に居た。
こんなことを頼むのは、生まれて初めてのことなのだ。
今まで聡美にはおろか、太一にはお金の話なんて、一度も口に出したことなかったのに‥
太一から「今日あの店に行ってみませんか」と誘われても、いつも「忙しいから」とその本当の理由を口にしなかった雪。
いくら親しい友人といえど、その線を越えたことなど一度も無かったのだ。
それでも今は、なりふりかまってはいられない。
雪は自身を押し殺して、そろりと太一の方へと歩いて行く。
まぁいいか‥今回だけ‥今回だけなら‥
彼女が近付いて来ていることなど微塵も気付いていない彼は、一人自販機の前で佇んでいた。
しかし彼は雪が思っていた人物、福井太一ではなかった。
彼女が徹底的に避けているその人、青田淳だったのである。
淳は、出て来た缶ジュースを手に取るとゆっくりとプルトップを開けた。
しかしそれに口を付ける様子はない。
「‥‥‥‥」
頭の中には、彼女の後ろ姿ばかりが浮かんでいた。
いつもつるんでいる友人達と歩いて行く背中や、勉強に疲れたのか突っ伏して眠っている背中ばかりが。
ようやく横顔が見えたかと思えば、すぐに後ろを向いてしまう。
「淳がアイスおごってくれるってよ。行こうぜ」
「いえ、胃の調子が良くないので」
淳はずっと、その後姿ばかりを見て来た。
ずっと。
間が‥
会話を始める一瞬の間さえ‥
彼女の前にある扉はひどく分厚くて、接触を試みても完全にシャットアウトされてしまう。
会話一つ、まともに出来ぬ程に。
カンッ
胸中が苛立ちに騒いでいた。
淳はその場に立ち尽くしながら、初めて感じるその感情をただただ持て余す。
‥だからなんでいつもいつも
俺は一体何を‥
その時だった。
「あの‥」
小さな、聞き覚えのあるその声。
いつの間にか淳の隣に、俯いた彼女が立っていた。
鼻を啜りながら、淳の隣に佇む雪。
思いもよらない展開に、淳はただ目を剥いてその場に立ち尽くす。
雪は彼の方を見ないまま、決まり悪そうに言葉を紡ぎ出した。
「私今日うっかりカード忘れて来ちゃって‥だから‥もし現金持ってたら千円‥」
「いや二百円程貸してもらえないかな？」
雪は小さな声でそう言うと、彼の服の端を握ったまま口元をぎゅっと結んで俯いた。
彼女の勘違いが生み出したこんな状況に、淳は信じられない思いで相対する‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
＜雪と淳＞勘違い でした。
雪ちゃん‥病院代くらいはお母さん出してくれると思うよ‥（T T）
親の気持ちになると本当切ないですよね。こんなになるまで我慢して‥と胸が痛くなります。
そして淳は、どんどん雪が気になって来てますね。
缶ジュース投げ捨てるくらいイライラしちゃって‥。
しかし雪‥太一と淳を間違えた！実は服の趣味、先輩と太一は似ているのでしょうか。
そういえば昔こんな一コマもありましたね。
昔といっても、時系列ではこの後の話なのですよね、これ。
変な感じです（＾＾；）
ていうか欲しい服親戚に頼んで買って来てもらったのか淳‥。なんかイメージじゃないな‥
次回は＜雪と淳＞赤面 です。
☆ご注意☆
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ほら、あんなに待ち望んでたでしょー！
このチャンス、絶対に逃さないで～～
という青田ファンの声が届き、
必死で雪との接点を途切れさせないようにする今度の展開に期待です。
雪ちゃんの予想外の行動にビックリして目を丸くする先輩の顔、大好きなんですU+2661萌え萌えです。
雪ちゃんにとっても、高いハードルを越えて珍しく誰かに頼った行動だったのに…。失敗しちゃいましたね。
うん、ドンマイ！
ちなみに、缶のジュースはちゃんと飲み干してから捨ててますよね？
（そうであることを願います）
最後の1コマ、先輩顔ちっさ！
肩パッドいっぱい入ってるのかな？
私も青田先輩、太一と服の趣味似てるんだなーと、Yukkanenさんと同じコマ思い出しましたU+266B
これ凄い恥ずかしいですもんね。
しかも一番見せたくないところを
一番見せたくない人に・・・
私が雪だったら寝ようとベッドに入ってると
いきなり思い出し、変な悲鳴あげながら
空(ていうか布団)をパタパタ蹴ります。
ちなみに、雪が頼んだお金は「1万ウォン・・・ううん、2千ウォンだけ貸してくれ」ですが、これを単に円に変換して価値を感じようとするのはちょっと・・・だって現地物価を考えないと。バス代は1200ウォン、コンビニのオニギリは7~900ウォン、安価のT shirtは5000ウォンの内外です。
読者にとってはドキドキの展開。
この勘違いは、でかしたー！と叫びたくなります。
でもそこはチートラ、期待通りの少女マンガ的な展開を期待してよいものか…
二人の仲は進展しなかったのは決定事項ですもんね。
弱ってる雪ちゃんが勘違いに気付いたときの慌てっぷりとダメージが気になります。。
Yukkanen さん、親心ですよね！分かります！
幼子を持つ母としては本当に心が痛いですね。
結局、親には相談しないんだろうなぁ、雪ちゃん(涙)
もどかしいです。
私も淳くんのビックリ顔、きょとん顔に萌えます！ブラックな時と違って、ピュアな子供、小学生ぐらい？のような淳くんが見れた気がして。見た目は大人、中身は子供。某バーローの逆バージョンみたいと思う時があるのは私だけでしょうか。
トラップなんか仕掛けなくても、雪ちゃんとのなかは深まるような気がするんですが、、、
今まで人をコントロールしてきた方法でしか恋愛もできないんでしょうか？恋愛？初心者感を感じる。その不器用さも小学生男子のように思います。声かけられてよかったね。
雪ちゃんに私もお金かしてあげたいよ。(涙)
自分を押さえてるところが二人の共通点。
それを何となくわかった淳くんだから、他の人達のたかりとは違って、
勘違いでも頼られて、この時嬉しかったんじゃないかなあ。うれしいまではいかんか？
ttps://www.youtube.com/watch?v=3VXyjhKW9tc
歌詞の内容とピッタリのパロディ動画です。
ごめん、雪ちゃん。
たぶん、判別できないくらい辛かったんだよね…ごめん…ごめん…ごめwwww
ていうのを、5分くらいやりました。（笑）
缶ジュース飲み干してますかねぇ‥。口も付けずに捨てた気も‥。それとも一気飲みか‥？
そして最後の一コマ‥先輩の肩幅すごいことになってますね 笑
まるで二人羽織‥。
CitTさん
あっ！！ここ、「１万ウォン‥いや２万ウォン貸してくれない？」だと思ってたら、２千ウォンだったんですね？！勘違いしてました！！すぐ直させて頂きます！ありがとうございますーー！
じゃあ雪ちゃんは医者に行くお金ではなく、本当に栄養ドリンク一本分のお金を太一に貸してくれって言ってたんですね‥。
か‥悲しすぎるーー（TT）！！
ふわふわさん
偶然とはいえ、今までの後ろ姿から正面から話せたんですものね！淳、ラッキーですよね。
ちよさん
親ならもっと頼ってもらいたいと思いますよね。でも親の余裕の無さを見ているからこそ、言い出せない娘の気持ちもなんとなくわかるし‥もどかしいですよね（TT）
１２３さん
今まで人をコントロールしかしてこなかったからこそ、制御不能の雪にどう接して良いのか分からなくて苛立ってるんでしょうね～。
雪ちゃんも「恋愛とは互いを配慮し合うことのはずなのに、先輩はいつも私の欲しい答えを先回りして差し出す」と言っている通り、淳はまだ本当の恋愛に達してないのかもしれません。最終回までに恋愛出来るようになるのか‥先輩‥。
青さん
すいません‥内容が全然分からないーー！！号泣
でも映像、面白かったです！
まさこ。さん
爆笑したんですかｗｗしかも５分もｗｗ
ほんとコ◯ンですね！
思い通りにならなくてイライラしてる先輩の肩をトントンして、
「それって恋の始まりなんじゃない？」って教えてあげたいです。
そしてキョトンとする先輩の顔が見たい（笑）
青田ファン（略してアヲタ）としては、思いが通じなくて悲しそうな顔も、キレてるとこも、狂気のときも（イっちゃってる目も！）
結局全部萌えなんですけどね（笑）
あー、手と首すじと頭の形も好きだー。
そして、コメント読んでビックリです。
借りようとしていたのが2000ウォンだったとは！！
勇気出してハードルを飛び越えたと思ってたのにやっぱり雪ちゃんは雪ちゃんで胸がギューっとなりました。せつない。
そしてそのあとの先輩の気持ちも。
ttp://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=443214&id=44362987
走って逃げだしたくなる三つのシチュエーションが出てきて、
・「友達を見つけて後ろから頭を小突いたら『どちら様？』」
・「急に腹が痛くなってトイレに駆け込んだら女性用だった」
・「『今日はおごる』と言ったら友達が300人来た」
という内容です。今回のシーンの直後にこれが鳴り響くことを考えるとニヤつかずにはいられなかったという…。
NORAZOはこんなコミックソングをたくさい歌っていますが、音楽のレベルはめっちゃ高いです。一度ライブで生歌聞いたことがありますけど、しびれました。笑
「販売王」
ttps://www.youtube.com/watch?v=W2w5tLPg-nA
歌詞リンク
ttp://papercascade206.blog.so-net.ne.jp/2011-11-05
それにしても、2000ウォンは、韓国だとお札ですけど、日本円に換算すると200円ですからね。日本語に直すとよりみじめさが増します…。