本日、「日の丸・君が代」強制反対・不起立処分撤回大阪ネットワークは、下記質問要請書を提出し、記者会見を行います。
2022年6月24日
大阪府知事 吉村洋文さま
大阪府教育委員会教育長 橋本正司 さま
質問・要請書
「日の丸・君が代」強制反対・不起立処分を撤回させる大阪ネットワーク
共同代表;井前弘幸・寺本勉
連絡先;090-5900-0783(山田光一)・メール:yamadak@nike.eonet.ne.jp
大阪府は、「令和30年(ネ)第100号損害賠償請求控訴事件」において、大阪高等裁判所の2021年12月9日付け判決の最高裁への上告を行ったが、本年6月16日最高裁一小法廷(安浪亮介裁判長)は、6月16日、本件を上告審として受理しないことを決定しました。このことについて、以下の質問及び要請を致します。
【質問・要請事項】
①この判決を大阪府・府教委としてどう受け取っているのか、梅原さん不合格の決定は間違っていたことを認めるのかどうかを明らかにすること
②吉村知事が、大阪府として上告する際の決定過程・理由を明らかにすること
➂これまでの再任用決定のシステム自身について問題点があったと考えるのか、そうだとすると今後どう改めるのかを明らかにすること
④今回の判決確定を受け、直ちに賠償金(315万4441円及びこれに対する2017年4月1日から支払い済まで年5分の割合による金員)を支払うとともに、梅原さんへの謝罪をすること
【理由】
大阪高裁は府教委に対し、「君が代」不起立で戒告処分を受けた梅原さんが採用を拒否され、同じ年に体罰で減給という重い処分を受けた者が採用されている状況について合理的な説明を求めました。しかし、府教委は合否の基準も明らかにせず、総合判断というブラックボックスから出た結論という以上の十分な説明ができませんでした。その結果、高裁はこの状況について「合理性を欠くといわざるを得ない」と断じました。
府教委は、再任用での任命権者の裁量は幅が大きく、誰を採用しようがしまいが自由だと、制度の意義をはき違えた乱暴な主張をしてきました。しかし、判決では「雇用と年金の接続を図る総務副大臣通知が出ていることや、再任用希望者のほぼ全員が採用されている実情などから、裁量判断が客観的合理性や社会的相当性を著しく欠く場合には、裁量権の逸脱濫用として違法と評価される」としました。そして、この件で再任用を拒否した判断は裁量権の逸脱・濫用にあたり、違法であると結論して、府に過失が認められるから損害賠償として315万円の支払うように命じたのです。
府教委ならびに府は、これまでの違法な再任用拒否の過ちを改め、憲法と人権を尊重し、さらに卒業式・入学式等行事の際における「君が代」斉唱時の起立斉唱を命じた「教育長通達」についてもただちに撤回すべきことを付言しておきます。
以上の質問・要請につき、直ちに回答と協議の場を持つことを要求致します。
〔資料・裁判の経緯〕
日の丸・君が代条例
「日の丸」掲揚・「君が代」斉唱を学校教育の場に持ち込むことについては、戦前の愛国心教育への反省や思想良心の自由などの問題から多くの教職員・生徒・保護者からの反対の声がありました。2011年、大阪では維新の会が、当時の橋下徹知事の下、多くの反対を押し切って全国で唯一、卒業式等での「君が代」斉唱の際に教職員の起立斉唱を義務付けるいわゆる「日の丸・君が代」条例を成立させました。当初、教育委員会は「君が代」斉唱の際に起立斉唱の命令を出すことには抵抗していましたが、橋下氏らに押し切られる形で、全教職員に対し「君が代」斉唱時の起立斉唱を求めるとする「教育長通達」を発出、また校長には職務命令を出すことを指示しました。しかし、反対する教職員は不起立で強制に反対する意思を示し、2012年の卒業式以降多くの教員が懲戒処分を受けることになりました。〔現在まで累計で戒告64名(うち2名は人事委・裁判で取消し)減給3名、再任用拒否も多数〕しかし、「君が代」の強制は思想良心の自由を侵害するものとして闘い続けられてきています。
再任用拒否と「意向確認」
「君が代」不起立で処分を受けた人が60歳で定年の際に再任用を申し込むと、「意向確認」がなされます。これは「今後、卒業式等の国歌斉唱における起立斉唱の職務命令を含む上司の職務命令に従いますか」と問われるもので、Yesと答えれば再任用選考に合格、Yesと答えることができなければ不合格とする運用がずっとなされてきたものです。これは、踏まなかった者をキリシタンとして死罪としたまさに「踏み絵」そのものです。これについて私たちは以前から批判してきましたが、府教委はこれをあらためませんでした。
2017年再任用拒否と裁判
2017年大阪府立高校教員だった梅原聡さんは、定年に際して再任用を申し込みましたが、府教委は不合格としました。理由は過去に「君が代」不起立で二度の戒告処分を受けていることと、校長から受けた「意向確認」に答えなかったことだけです。校長からの勤務実績などの4項目の評価はすべて「適」とされていました。
梅原さんが「意向確認」に答えなかったのは、高校での就職指導で思想信条に関わるような質問には答えないように指導しているからです。この点に関して私たちの訴えを受けた府の商工労働部は改善を要請しましたが、府教委は知らぬふりをしているかに見えました。ところが、翌年から「意向確認」の文言をこっそりと「今後上司の職務命令に従いますか」と変更していたのです。府教委は自らの過ちを十分に認識していたのです。
その年、梅原さんは再任用を拒否されたことについて、府教委を相手に国家賠償請求訴訟を起こしました。年金支給年齢が引き上げられ定年延長等の措置が求められている現在、再任用は原則として希望者全員を採用すべきものである。また、この再任用拒否が「君が代」強制に反対する者を差別的に排除しようとしたものである。そういったことを中心に訴えた結果、一審の大阪地裁はこれを認めなかったものの、大阪高裁は訴えを認めて、府に賠償を命ずる判決を下し、今回の最高裁の決定で勝訴が確定しました。