根津さんの都教委傍聴記をレイバーネットHPより転載します。しかし、それにしても現行の教育委員会制度では委員は首長が任命しますので、どうしても政治の影響を受けます。私たちの批判の声はなかなか届かないのが現状ですか、それでもこやって「傍聴」という形で監視していくことは重要だと思います。
●根津公子の都教委傍聴記(2013年7月11日)
「死ねとか殺すとか、教育委員が言うんじゃないよ」~傍聴者が怒りの声
朝8時から都庁前で「都庁前通信」を配った後、教育委員会定例会を傍聴した。
今日の傍聴者は13名。普段よりも傍聴者が多かったのは、前回定例会で実教出版の日 本史を実質採択させない「見解」を出したことと無関係ではないのではないかと思っ た。
議題は、①いじめ防止対策推進法施行に伴う対応について ②東京ジュニア科学塾に ついて ③東京都における発達障害のある児童・生徒に必要な教育基盤の検討につい て の各報告。
傍聴者が入場してすぐに、傍聴者の一人Aさんは実教出版の日本史について「見解」 を出したことに怒り、教育委員たちを糾弾した。「静かに!静かにしなさい!」「次 に不規則発言をしたら、傍聴人規則に従って、退場してもらう」と司会役の木村教育 委員長。傍聴者の意見は聞かず、「都民の声を聞く」担当の教育情報課を通しても、 結局都教委に都合の悪い意見は聞かず、「不規則発言をするな」とは言えないはず だ。
傍聴者の発言を制止して、①の議事に入った。国の「いじめ防止基本方針」を踏まえ ていじめ防止対策推進法を6月28日に公布し、9月28日施行ということで、説明がなさ れた。「管轄警察署との連携」がここでも目を引く。
説明が終わったところで、先のAさんが言った。「死ねとか殺すとか、教育委員が言 うんじゃないよ」「竹花委員は辞任しろ」。
4月11日の定例会での「都内公立学校における体罰の実態把握について(第一次報 告)」に対し、竹花教育委員が「(部活動での)死ね、殺す、出て行け、という強い 発言、…今ぐらいのことは(体罰として)精査しなくていい。こんなのは指導の範疇 だ」(趣旨)と発言したことを指して、言ったのだ。この発言は当日欠席だった乙武 教育委員以外は皆聞いていることであり、どの委員も反論や、疑問を呈することはし なかったのである。頷く委員さえいたのだ。
だから、木村教育委員長はAさんの発言を躍起になって制したが、当の発言をした竹 花教育委員及び、それを容認、あるいは同意したほかの教育委員の見識が問われたの だ。理は木村教育委員長いうところの「不規則発言」にあることは明らかであった。
Aさんの発言を聴き、おかしいと感じたことを表現することは、傍聴者の権利であ り、大事な任務だと感じた。
発言をやめないAさんは、木村教育委員長指示のもと、6~7人の警備員によって退 場させられてしまった。
議事の、いじめ防止は大事な課題だと私も思う。しかし、この間、いじめ問題に関す る教育委員たちの質問・意見を聞いてきて非常に不思議なことがある。子どもの間で 起きることは大人社会の縮図であることを否定する人はいないであろう。子どものい じめを解決するに当たっては、大人社会のいじめに目を向けるのは当然のことと思う が、その視点からの発言が教育委員の誰からも全くない。肝心なことには触れない委 員たち。なぜなのか、とここでも思う。
②、小学生は理科好きが8割なのに、中学生になると理科離れとなる中、「科学に高 い関心を持つ生徒の資質や能力をさらに伸長」させるために40人の塾生を選んで実施 するという。理数フロンティア校小学校50校、中学校50校からの応募で、中学1年生 108名が塾生になる抱負を論文にして応募し、選考の結果40名を選んだとのこと。こ うしたことについては、山口委員「もっと多くの子どもたちに広げられないのか」 等、どの委員もなんと積極的に発言することか。
③、東京都発達障害教育推進会議(仮称)を専門家など13名で構成し、「提言」をま とめるとのこと。
以上の報告が済み、定例会の終了を木村教育委員長が宣言したところで、今度はBさ んが「見解」について審議し直すよう声をあげた。それに続いて、何人もが「審議し ていないではないか。やり直せ」「発言なく、『見解』が通過するのはおかしい」 「自己の考えを表明するのは、教育委員の仕事です」と、木村教育委員長と総務部職 員、警備員が制止する中、教育委員に伝えるべきことをことばにして退場した。
傍聴者の「不規則発言」、怒りの声を、教育委員はしっかり受け止めてもらいたい。