※毎日新聞「大阪は変わったか」(中)は教育についてです。
目立ったアドバルーン式の改革のもとで、私たちは、そもそも学力ってなんだろうって考え込んでしまいます。
点数や順位は確かにわかりやすいし、競争の成果も目に見えて表れるでしょう。
しかし、目にみえない部分で、橋下教育改革が与える影響も考えなければなりません。
小・中・高の校内暴力が大阪で悪化しているのことに意味を考える必要があるのではないでしょうか。
大阪は変わったか:橋下改革の5年/中
学力向上に成果 極論、重点予算で道筋
毎日新聞 2013年02月07日 大阪朝刊
◇機会不均等、今も
同級生と額を寄せてテスト勉強をしたり、ボランティア講師に方程式の解き方を尋ねたりする中学生たち。大阪府高槻市立第二中学校(約820人)で毎週水曜に開かれている放課後学習会に、十〜二十数人の生徒が集まる。元中学校長ら6、7人のボランティア講師は悩みの相談にも乗る。1年の服部愛結(まゆ)さん(13)は「授業中は発言しにくいけれど、ここでは分からないことをためらわず聞ける」と喜ぶ。
橋下徹・大阪市長は知事就任1年目の08年9月、全国学力テストの市町村別結果公開を府教委に迫り、渋る教委を「くそ教育委員会」とののしる一方、学力向上策に多額の予算を投じた。放課後学習会もその一環で、08〜10年度、運営費として計1億円を市町村に補助し、公立小中に導入を求めた。補助終了後も高槻市は独自に予算を付け、全小中学校で続けている。府内全体の導入率は08年度に4割未満だったが、11年度に小学校約8割、中学校で9割超と広がった。全国学テの小学校の成績は改善し、算数(基礎)は07年の41位から12年に14位へと上がった。
府教委幹部は「橋下氏の過激な発言で学力向上を重んじる流れができた。府が直接所管しない義務教育にも積極的に予算が付けられ、学力アップにつながった」と分析する。
ただ、経済面や生活面で課題を抱える子供たちを巡り、気になる状況がある。府教委などによると、12年に自宅学習が30分未満の子供の割合は小学生で全国平均比8・3ポイント多い22・6%、中学生で5・2ポイント多い21・8%。全国平均との差は小中とも08年より広がっている。小中高の校内暴力も07年度の全国ワースト6位から、11年度に同4位へ悪化した。
支援を要する子が多く通う小学校の校長は、「予算が付いても、この辺りは教育への関心が低く、交通の便も悪い“陸の孤島”なので放課後学習のボランティアに敬遠される。金よりも人を手当てしてほしい」と訴える。
橋下氏は公立と私立の学校間競争を促すため、10年度から私立高の授業料無償化を導入した。ただ、ある中学校では受験生のうち約1割が経済的事情で第2志望の私立高の受験断念を余儀なくされている。校長は「経済的に本当に苦しい子は交通費や入学金などを払えず、結局自転車で通える公立高に行く。支援が必要な層の機会均等が保障されていない」と嘆く。
問題を抱える子をいかにフォローし、学習環境を整えるか。格差の広がりに懸念を残しながら、改革は進む。
◇私立高の無償化導入
橋下氏は知事就任1年目の08年、「百ます計算」など反復学習で定評のある陰山英男氏らを教育委員に登用し、学力向上に取り組むよう強く求めた。09〜10年度は、教材活用や備品購入費として1校あたり75万円を、681小中学校に上乗せし、教員増や府教委のモデル教材作成にも予算を付けた。10年度からは毎年64億〜174億円を投じ、私立高授業料の実質無償化を導入した。