※Tネット通信第1号は、教え子の一人、隅田聡一郎さんが、Tネット結成集会の寄せて送ってくれたメッセージを紹介します。
彼は、高校生の頃から、社会に対する関心が高く、大学進学の後も、積極的に社会活動に参加しています。
彼との議論は私にとっても刺激的であり、考えさせられることが多々あります。
現在は平和についての活動、特に3.11以後は放射能汚染・内部被ばくの問題について発信しています。
Tネット結成集会に寄せて
今こそ、人権教育としての平和教育を 2012.10.21
教育基本条例下で子どもたちの「学習権」が脅かされています。評価・育成システムによる教員「序列」化は、子どもたちの個性・能力・家庭環境に配慮した本当の意味での教育を困難にさせているのです。
戦後65年が経とうとする今、「戦争を知らない」若い世代が、戦争体験に関する証言をじかに聞くことによって、その方々の人生から「過去の戦争」に関する歴史を「リアル」に学ぶという貴重な機会が失われつつあります。しかし、現代の、オスプレイ配備(沖縄基地問題)、領土問題、朝鮮学校無償化除外問題などは、歴史認識という文脈を抜きにしては語ることのできない社会問題です。また、東アジアの国際情勢をフラット化するためには、過去の「記憶の伝承」だけではなく、現在の「歴史対話」による「新たな記憶」を創造する必要があります。
しばしば誤解されていますが、平和教育とは、何も抽象的に「戦争反対」を生徒に「押し付ける」ものではありません。日本国憲法前文では、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」という「平和的生存権」が謳われています。貧困問題やワーキングプア問題が広がる現代日本社会においても、「恐怖と欠乏」が子どもたちを襲っています。つまり、平和教育とは「人権教育」を含んでいるのです。それは、「差別」や「在日コリアン」の問題のみならず、市民社会における「権利主体」として、例えば、生活保護バッシングを問題視したり、「労働法」普及によって「ブラック企業」への対処術を身につけることでもあります。
もちろん、こうした社会問題に対して、「教育」にすべて期待することはできません。しかし、そもそも、教員各自が子どもたちに見合う「人権学習」を構想する時間と余裕をあまりにも持てない現状が問題なのではないでしょうか。
NPO法人セイピースプロジェクト代表
隅田 聡一郎
参考
■セイピースプロジェクト( SAY-Peace PROJECT )とは
アジア( Asia )×若者( Youth )×平和( Peace ) をキーワードに集まった若者たちからなる 平和NGO です。会員数は現在、正会員 50 人ほど、サポート会員・賛助会員を合わせると全体で 70 名(団体含む)ほどです。
■歩み
セイピースプロジェクトはイラク戦争が始まった 2003 年にスタートしました。 平和や戦争の問題について大学生を中心に若い世代が同世代で話し合い、共有できる「場」を創るためディスカッションイベントの開催を中心に活動を行い、徐々に取り組むテーマや活動の形態を広げてきました。
2009 年 7 月に東京都の認証を受け、正式に「特定非営利活動法人(NPO法人)」となりました。
■基本コンセプト
「平和に生きる権利」を確立し、「軍事力によらない平和」を実現しよう
私たちが住むアジアでは、軍事力依存の「安全保障」が国境を隔てた相互不信と緊張を招く一方で、広がりを見せる貧困や不公正が人々の生存を脅かしています。
こうした中で日本でも、沖縄や在日外国人、そして、東日本大震災と原発事故の被害に遭った人々など様々な立場にある人々の人権と生存が脅かされています。
セイピースプロジェクトでは、こうした状況を変えるため、「平和の生きる権利」の確立と「軍事力に依らない平和」の実現を目指し、様々な人権と平和のための取り組みを展開しています。