特定秘密保護案の危険について、マスメディア、ネットメディアでは批判が繰り広げられています。私たちの運動も公権力に対する異議申立ですので、公権力が一方的に情報を秘匿するならば、市民運動は成り立たないということは身に染みてわかります。また、なにより、市民の「知る権利」を奪うという点で問題です。
さて、スイス在住のAyaka Löschkeさんの投稿をフェイスブックを通してよく拝見しています。洞察力のある内容で、また国際的な視点から日本の問題が見えてきます。
今回は、特定秘密法案をスイスメディアがどのように報道しているかについてです。世界も注目していることがわかります。以下に転載します。
スイスメディアも日本の「秘密保全法」に警鐘!非常に詳しく扱っています。
点線以下に掲載したのは、新チューリヒ新聞(Neue Züricher Zeitung)が2013年11月16日にアップした日本の「秘密保全法」に関する記事の全訳で、写真は記事から転載させていただいたEPA通信によるものです:
http://www.nzz.ch/aktuell/international/auslandnachrichten/japans-buerokraten-moegen-es-geheim-1.18186410
スイスやドイツでは、アメリカのNSAによる監視活動に関する「憤慨」はいまだ冷めやらず、メディアのみならず、市民たちも昼食がてら、自国での情報統制、個人情報保護などについて激しく議論し合っています。
この「新チューリヒ新聞」の記事も示唆しているように、日本の「秘密保全法」はまさに、そうした動きとは対照的。スイスの大手新聞も、西山太吉氏の件に絡めて、「秘密保全法」に警鐘を鳴らしています。
どうかご一読くださり、記事の最後で言われているように、「どうすれば自民党と公明党が、国際的に見てもとんでもない法案を可決しないよう、圧力をかけることができるのか」、皆さん一緒に考えてください!
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《透明性よりも秘密にする日本の官僚たちは秘密にすることが大好き
(Geheimhaltung statt Transparenz Japans Bürokraten mögen es geheim)》
野党やジャーナリストが新しい日本の秘密保全法(Geheimhaltungsgesetz)に抵抗している。彼らは、新しい日本の秘密保全法が官僚に巨大な自由裁量の余地を許してしまうため、乱用を恐れている。(台北にて、Patrick Zollによる報告)
この件を素早く、ほとんど気付かれないまま、国会を通り抜けさせて(einschleusen)しまおうというのが、当初の計画だったようだ。3週間前、日本政府は秘密保全法の草稿を国会に提出。12月に初めに可決する見通しだ。安部首相の率いる自民党は、連立のパートナーである公明党と一緒に、両院で安定多数を有しており、形式的には、(注:法案の可決を)妨げるものはほとんどない。
〈欠陥だらけの提案(Vorlage)〉
当初、可決までのプロセスは、政府の目論見通りに進んだかのように見えた。しかし、その後、抵抗運動が起こった。ジャーナリスト、歴史家、法律の専門家、そして野党の政治家が、「法律はあまりに曖昧に書かれており、乱用のあらゆる可能性が開かれている」と批判した。「提案は欠陥だらけで救いようがない」と、弁護士で共産党の代議士である仁比聡平は判断している。この法律は、メディアが憲法によって守られる基本原則、つまり、報道の自由を踏みつけにしている、というのだ。
具体的には、政府はあらゆる国の機関に、情報を機密事項とすることを可能にするつもりだ。その機関が国の安全にとっての危機を危惧し、万が一、この情報が公にされるときに。法律の反対者さえも、正当な安全性の必要性を承認している。しかし、法案は官僚に、何が秘密にされるべきで、何がそうでないかを決定する完全な自由裁量の余地を与えてしまっている。彼らの決定が法廷や独立した機関によってチェックされることは予定されていない。「機密事項」として扱われる情報は、特定の期間の後、公開されたり、保管されたりはしない。官僚たちはそれらの情報をそれどころか破棄できるのだ。それに対して歴史家が抵抗している。一方、議員たちは、国会が監視の機能を行使できなくなることを恐れている。なぜなら、政府の活動を調査したり、内部文書の提出を要求したりすることが不可能になるからだ。
機密情報を公にする者は、10年間収監されて罰せられる可能性もある。ジャーナリストは、彼らの情報入手の仕方に、(注:法案の中で言われている、機密情報のアクセスに関して処罰が下される)「不適切な方法」が適用されることを警告している。
日本の外国人特派員協会は、多くの注目を浴びた声明において、曖昧な言い回しが「官僚たちが、ジャーナリストを彼らの意向次第で弾圧(verfolgen)できるライセンスになり得る」と書いている。この見積もりは多くの日本のジャーナリストによって共有されている。
政府が、かの地域(注:おそらく尖閣諸島など)で緊張状態にある安全保障の状況が新しい秘密保全法を必要とするようになったと主張している一方、批判者たちはそれを怪しんでいる。公務員法から自衛隊法まで、一連の法律が既に機密事項を十分に守ってきたと。機密事項を公にする者たちが刑法に抵触するということは、既に長い間、可能であったことであるし、西山太吉氏の件もそのことを示していると。彼は70年代の終わり、彼が日米間の安全保障条約の機密事項に関する詳細を公にしたということで有罪になった。後にアメリカの文書が公開され、(注:西山氏の告発した事項が)事実として立証されたにも拘らず、日本政府は公式に、密約のそもそもの存在を否定した。
[日本版・メ二ングではなくて、アメリカ自身が機密文書を後に公開(Kein japanischer Manning)]
「日米同盟の機密事項に関して知られることとなった全ては、アメリカ側で公になっている」と西山氏は語る。彼はそう語っているが、政府関係者の発言とは食い違っている。
政府関係者たちは、法律をとりわけ、安全保障に関わる機密事項が守られるときにのみ、親交のある国々、つまりアメリカと安全保障に関わる重要な情報を共有できるとして、根拠づけている。安倍内閣の最初の防衛大臣であった自民党の小池百合子議員は、コラムの中で、次のように書いている: 情報がよりよく保護されなければならない、なぜなら、今日は定期的に機密情報がメディアに流れているのだから、と。アメリカ側ではウォーターゲート事件からメ二ング(注:Bradley Manning。アメリカ軍によるアフガニスタンでの民間人の殺害などをWikiLeaksで公開。世界では既に有名なのですが、なぜか日本語版のウィキペディアの頁が存在しません!)、スノーデンまで、一連の内部告発者(Whistleblowern)が有名になっているが、日本側ではそれに対して、そういったことはほとんど目につかない。
「毎日」新聞は社説において、野党勢力に、連立与党に法案を可決させないよう、呼びかけている。それが成功するかどうかは疑わしい。ある批判者は、(注:現状に)愕然としつつも、自民党内部でもこの法律が有害であるという認識が広まるのなら、法律はおそらく止められるだろうと考えている。もっと見る