「志」の英語教育

英語教育実践について日々の雑感を語ります。

Free The Children 2

2008-02-14 21:43:59 | 授業
グローバリゼーションにより、先進国の有力企業は国際的に通用する競争力を求められる。そして、効率向上を求めて経済活動の一部を海外に移動することを目論む。

例えば、国内の生産工場を閉鎖し海外へを移転する。移転を受ける発展途上国は経済の活性化を期待して工場誘致を歓迎し先進国大企業の経済活動に有利な条件を整える。

その結果、法整備は不十分なまま発展途上国に生産工場が設けられる。生産工場は直営のものもあろうが下請けのものもある。当然、労働環境は劣悪である。

発展途上国においても競争原理は働き、より安価な労働力・より従順な労働者である低年齢者を雇用する動きが加速する。これにより、大人の労働者は雇用の機会が減少する。

また、労働環境の悪さのため低年齢労働者も早いうちに不健康になる。健康状態が悪化した労働者は早期に解雇される。

若年のうちに解雇された大人が生きていく保証を得るもっとも簡単な方法は、子供をもうけ働かせて収入を得ることである。親は家族が生きていくために、働ける年齢になればできるだけ早く子供を労働現場へ送るのだ。

労働現場へ送られた子供は教育を受けることができない。また、働くほどに健康は蝕まれ親と同じ道へと追いやられることになる。


まさに悪循環である。


一方先進国にも問題は起こる。

生産拠点を海外へ移出されると国内の雇用は減る。また、国内の同種の生産活動はコストの面で海外に張り合うことができず廃業へと追い込まれてしまう。

・・・先進国内でも「格差」が拡大する。


児童就労の問題は単に幼い子供に重労働を課して残酷だというだけにとどまらない。ちょっと想像力を働かせるだけでもこれだけ根の深いものだということが分かるだろう。

もちろん、これが総てではない。児童就労問題は環境問題や望ましくない民族主義の台頭にもつながっているのだ。


私は素直なところ、教えている生徒に今すぐに政治活動を起こして欲しいと思っているわけではない。しかし、少なくとも先進国の有利な条件の下で勉強ができる自由が与えられていることの有り難みを十分に感じて欲しいとは思っている。

将来、この社会のリーダーになるはずの彼らには自分の側にいる人だけでなく、遠く離れた場所にいる人、さらに時間的に遠い未来の人たちへの責任も感じて欲しいのだ。


重たい話になってしまい申し訳ありません。週末はロッド・エリス大先生の話を聞く予定です。通算で4回目。今回は最新のTBLT論ということでとても楽しみです。

Free The Children 1

2008-02-14 07:08:57 | 授業
英語Ⅰの授業は児童就労を題材にした課にはいる。この問題と闘うために、まだ12歳の少年の頃に Free The Children という団体を作ったカナダ人、Craig Kielburger の話である。

スキーマ作りのためネット上の児童労働の悲惨な現実を訴えた記事を前時に渡しておいた。

Part 1はクレイグ少年が初めて児童就労問題と接点を持つ新聞記事の話。パキスタンで就労児童として4歳から働き続けた Iqbal Masihという少年が、児童就労反対運動を起こし、そのために銃殺されたのである。

授業はいつものようにテンポ良く進む。単語テストからファーストリーディングで読み聞かせ。そのあとは簡単な英問英答による内容確認。最近は時間節約のため教科書を開けたままなので、生徒は答えを本文から探そうとするのだが、それでも多くの生徒が答えるときには教科書から目を切って答えている。ちょっとしたことだがとても大事なこと。この1年の成果が出ているようでうれしい。

その後は読解の重要ポイントを確認した上、フラッシュカードを使いチャンクでまとめた語彙の音読。本文訳の確認。

本文訳の確認は完全に個々の活動。スラッシュで切った本文をコラムナー形式で立てに連ねその右に予習として訳を書かせている。授業では机間巡視の上予習ができているものだけに訳例をわたし自分の訳と見比べさせる。

生徒が訳の確認をしている間に、たいていは次の再生活動に使う質問などを板書するのだが、今回はかわりに児童就労問題の根の深さをフローチャートにして板書。題材が重たいときには表面的な理解だけではどうしても物足りないのだ。