「志」の英語教育

英語教育実践について日々の雑感を語ります。

ああ、中だるみ・・・

2008-10-19 17:34:47 | その他
高校の教員がよく使う言葉の中に「中だるみ」という言葉がある。入学当初の緊張感が薄れ、再び緊張感をもって勉強へ臨む受験勉強開始の時期までのことをいう。だから、中だるみの時期は大抵は1年生の途中から2年生の途中までである。

よく、中だるみに対してどのような対策を講じるべきかという議論がなされる。勤務校のPTAを対象とした講演会(春)でも、中だるみに対してどのような指導をしているのかという質問を受けた。

これに対して、私は「中だるみは必ずしも悪いことではない。そこから再度這い上がってこその中だるみである。問題はたるんだままの状態を必要以上に引きずってしまうことである」と答えた。案の定、講演会語のアンケートでは、なんと悠長なことをという非難の声。

タイミングは外してしまったが、これについてちょっと詳しく説明してみる。

いろんなところで言われているように、高校生の成績が一番大きく変動するのは1年生の11月である。逆に言えば、それまでの成績と卒業時の成績の相関関係は高くない。ある調査によれば、卒業時の成績上位者と1年夏までの成績上位者の「かぶり」は35%程度とのこと。一方、1年生の11月時点の成績上位者と比較してみると「かぶり」は70%弱へと跳ね上がる。その後、「かぶり」の割合はずっと一桁で緩やかに上昇するのである。

これはすなわち、1年生の11月まで緊張感を持続させて学習習慣を定着させれば、高校3年間の学習は非常に有利になるということだ。多くの高校生はそれ以前の夏休み前後で緊張感が抜けてしまう。だから、私たちは高校入学時から11月までは、しっかり圧力をかける。

しかしながら、この圧力は諸刃の剣でもある。圧力をかければかけるほど追いつめられていく生徒も多い。いつの時期か一旦は緩めてやらないと、成績降下以上に大きな問題が起きかねない。そもそも、外圧で引き上げられた成績など本当は力のうちに入らない。自ら勉強しようという気にならなければ骨太の学力は身に付かないのだ。

かくして、1年の冬以降に「中だるみ」を始めさせる。それでも、今までの貯金があるから、しばらくの間は悲惨な成績になることは少ないだろう。そのことは前述のデータが示すとおりである。

私はこの時期に高校生活で楽しむべきこと、感じるべきことをしっかり体験して欲しいと考えている。好きな本を読んだり、質の高いテレビ番組を見たり、人生について友と語りあったり自由にできるのはこの時しかないのだ。

そして、2年の夏休み明けから冬までに、もう一度真剣に勉強に向き合うことを自ら選択して欲しい。そのときに、1年生のうちに半年間続けてきた勉強の習慣が大きく物を言うことになる。学習の工夫は勉強時間の確保が前提だ。学習時間が長いから方法が洗練されてくるのだ。

いわゆる超難関大学に合格する生徒は2年の冬頃に変化が見られることが多い。また、それらに続く難関大に合格する生徒は年が明けてから3年に上がるまでに変化が見られることが多い。もちろんタイムラグはあるから、彼らが真剣に勉強に向かいだしたのは、それよりも最低3ヶ月くらいは前のことだと思う。

「中だるみ」はすべての学力層に見られる現象である。それなら、もっと肯定的に捉えるのはどうだろうか。真の学力が花開くまでの「猶予」の期間を待つ忍耐力は大人の方に必要なのだと思う。


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