不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Nativita

2006-01-13 09:46:00 | アート・文化

16日の公現祭(エピファニア:Epifania)は
イエスキリストの誕生の知らせを受けて
「神の子」を訪問してくる東方三博士が
イエスキリストの元に辿り着く日。

どの教会もそれぞれに伝わる「プレセピオ」を飾ります。
「プエセピオ」はイエスキリストの誕生を人形で表現したもの。
登場人物は幼子のイエスキリストを中心に
聖母マリア、ジュゼッペ、牛やら羊、羊飼いに東方三博士など。

このプレセピオはいわゆる期間限定のものだけれど
「キリスト生誕」をテーマにした芸術作品は多く、
一年中教会や美術館で見ることができます。

ローマではこの「キリスト生誕(Nativita)」は
古くは「ピエトロとマルチェッリーノのカタコンベ」

Catacombe di Pietro e Marcellino)の壁画や
サンタ・マリア・マッジョーレ教会

(Chiesa di Santa Maria Maggiore
)の壁画に描かれています。

またサンタ・マリア・イン・トラステヴェレ教会
Chiesa di Santa Maria in Trastevere)にある
1291
年頃のピエトロ・カヴァッリーニ(Pietro Cavallini)の作品や
コルシーニ美術館(
Galleria Corsini)の
ジョヴァンニ・ダ・ミラノ(
Giovanni da Milano)の作品も有名。
この二点をはじめその時代の作品には
馬小屋、聖家族、牛、ロバ、天使の姿が描かれているものの
羊飼いや東方三博士の姿はなく

1400
年代から1500年代にかけて制作された作品になると
こうした登場人物が描かれるようになります。
たとえばサンタ・マリア・デル・ポーポロ教会
Chiesa di Santa Maria del Popolo)の
ピントゥリッキオ(
Pinturicchio)の作品では
前面に羊飼いの姿があり、背景にはまもなく到着する
東方三博士の姿が描かれています。
またこのピントゥリッキオの作品のジュゼッペ(
Gipuseppe)は
メランコリックな年配の男性として描かれていて
その後の時代の作品でもたいていは同じようなイメージで描かれます。

実際の年齢ではジュゼッペもマリアほどではないものの若者であったはずで
敢えて年配として描かれるのは、彼が「分別」の象徴であるからで
カラヴァッジョ(
Caravaggio)の1969年に盗まれた
「パレルモのキリスト生誕(
Nativita di Palermo)」では
表情や容姿は若く、しかし、白髪の男性として描かれています。
東方三博士はそれぞれ「ヨーロッパ」「アジア」「アフリカ」の象徴であるため
カピトリーニ美術館(
Musei Capitolini)のスカルセッリーノ
Scarsellino)の作品にも見られるように
3人のうち一人は肌の色が浅黒く描かれることが多くなります。
17
世紀になるとイエス・キリストは幼子であるだけでなく
光の源のように描かれることが多くなります。
この好例がカップチーニ教会(
Chiesa dei Cappuccini)にある
ランフランコ(
Lanfranco)の作品といわれています。

こういうひとつのテーマで
数あるローマ市内の芸術作品を見るのも楽しみ方のひとつかも。