不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Antonio Canova e la venere vincitrice

2007-10-23 07:14:58 | アート・文化

ローマのボルゲーゼ美術館に所蔵される彫刻作品は
フィレンツェのバルジェッロなどにある
ルネッサンス盛期の作品とは異なり
非常に繊細な雰囲気をたたえたものが多くなっています。

Paolinab
1838年からボルゲーゼ美術館が所蔵している
「Paolina Borghese-Venere Vincitrice」は
Antonio Canova(アントニオ・カノーヴァ)作の
ネオクラシックの彫刻作品。
カノーヴァの代表作のひとつであり、
彼の彫刻作品の頂点ともいえる作品。

カッラーラ産の真っ白な大理石の塊から掘り出した
この作品は艶やかでしなやか。
Camillo Borghese(カミッロ・ボルゲーゼ)に嫁いだ
パオリーナはNapoleone Bonaparte
(ナポレオン・ボナパルテ)の妹であることでも有名。
当時のヨーロッパの最高権力者の賞賛を受けた傑作です。

1804年に着工、1808年までに完成されて
ボルゲーゼ家の所有となっていましたが
現在のボルゲーゼ美術館の展示となったのは1889年から。
テーマはパオリーナの肖像ですが、
カノーヴァはギリシャ古典を題材にして
そこに実在の人物を反映させたことで
当時の文芸界でも話題となりました。
ベースになっているのは勝利のヴィーナス。
トロイア王子パリス(Paride)によって権力の神ヘラ(Giunone)、
芸術と科学の神アテナ(Minerva)、
愛と美の神アフロディテ(Venere)のなかから
選ばれたアフロディテ(ヴィーナス)。
勝利のヴィーナスであることを示すように
左手に小さなリンゴの実を握っています。
古典作品のシンプルさをベースに
当時のトップクラスの貴族の気品さを表現。
余裕のある表情とゆるやかに横たわる裸体が
なんともいえない上品さを醸し出しています。
木で作られた置き台の内部は機械仕掛けになっていて
カノーヴァのほかの作品にも見られるように、
彫刻像がゆっくりと回転する仕組みになっています。

この美しいパオリーナ像を中心に
カノーヴァがこの作品を作るに至った経緯や
作品製作の流れがわかるような
約50点の作品を集めた展覧会開催中。
世界各地の美術館からカノーヴァの作品が集められ
パオリーナ像のほかに2体のヴィーナス像、
4体のアモーレ像、有名な三美神像などが一堂公開。

Antonio Canova e la venere vincitrice
会場:Galleria Borghese Roma
会期:2007年10月18日から2008年2月3日まで
開館時間:9:00-19:00(2時間入れ替えの完全予約制)
休館日:月曜日、12月25日、1月1日
インフォメーション

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