不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

La madonna col Bambino di Pintoricchio

2008-06-24 13:09:05 | アート・文化

Pintoricchio(ピントリッキオ)
もしくはPinturicchio(ピントゥリッキオ)は
Bernardino di Betto(ベルナルディーノ・ディ・ベット)の画名。
1454年にペルージャに生まれ1513年にシエナに没。
ペルジーノの弟子で、つまりラファエロとは同門。
5人もの教皇に仕えたことでも知られ、
ヴァチカンのシスティーナ礼拝堂や
シエナのドゥオーモのピッコローミニ図書室なども手がけています。

豪快な作風のミケランジェロよりだった
ヴァザーリには生涯認められず
その繊細さ、装飾性などは酷評されていましたが
ウンブリア派の画法をよりよく受け継いでいる画家の一人。

彼の生誕550年祭からのイベントで
ペルージャを中心に彼の作品が展示され注目を浴びています。
Palazzo Baldeschi al Corso(バルデスキ・アル・コルソ宮殿)でも
一枚のピントリッキオの作品が展示されています。

この作品はフィラデルフィア美術館に収蔵される、
有名な作品「Madonna che insegna a leggere al Bambino
(幼子キリストに読みを教える聖母)」に
非常に似た構図になっています。
フィラデルフィア所蔵の作品が装飾や小物つかいにより
宗教的な意味合いが非常に強くなっているのに対して
本作は宗教的な意味合いが薄れ、
ある意味牧歌的あるいは世俗的な印象も受けます。

Pintoricchio_02
その表れとして
幼子イエスがダルマチカを身にまとわず
薄い透明なヴェールとパッチワークの施されたようなショールを
さらりと身につけているのが印象的。
彼の描く幼子はきちんとダルマチカを着ていることが多いのですが。
また受難の象徴であるザクロやトリ、
もしくは世界を象徴する玉や聖書を意味する本ではなく
手にはスミレの花を握り聖母の注意を引こうとしている
その幼子イエスの一生懸命な姿も
救世主であることを忘れさせる独特な感じになっています。

背景には北イタリア風の高い鐘楼のある町並みが描かれ、
聖母を囲むように2本の樹木が描かれて
画面全体にリズムをつけています。
春の空にはピントリッキオの作品にはよく描かれる
飛ぶ鳥の姿も見られます。
聖母の背後に描かれる水面には小さな船が浮かべられていたり
とてものどかな景色が細かく描き込まれているところが
非常にピントリッキオらしい。
同じように聖母の服の金装飾や
幼子イエスが足を乗せているクッションの装飾なども
とても繊細に描きこまれているのがわかります。
イエスキリストの後方には
急ぎ足で聖母子の元に駆けつけようとしている
洗礼者ヨハネの姿も描かれています。

この作品は1800年代終わりにはローマに住んでいた
貴族階級のTheodoli(テオドリ家)の所有となっており、
ローマの邸宅に飾られていたようです。
1898年に他の作品とともに売りに出され、
オーストリアの画家Philipp Schumacherの手に渡ります。
その後1936年にインスブルックの市長の手に渡り、
更にウィーンの蒐集家Lukas Schumacherの所有となります。
その後オーストリア国内の個人所有となったようですが
絵画の行方がはっきりしなくなっていたところ
2007年4月24日のウィーンの競売にかけられることが発覚。
競売でペルージャの
Fondazione di Cassa di Risparmio di Perugiaが落札。
現在は上記のカッサ・ディ・リスパルミオ・ディ・ペルージャ財団の
コレクションとなっています。

ピントリッキオらしい画風、
ひいてはルネッサンス時代のウンブリア派らしい画風の作品。
ペルージャのウンブリア国立美術館で開催されている
ピントリッキオ展と並んで
6月29日までバルデスキ・アル・コルソ宮殿で展示されています。

Madonna col Bambino di Pintoricchio
開催期間:2008年6月29日まで
開館時間:10:00-19:00
会場:Palazzo Baldeschi al Corso Perugia
入場料:3,00ユーロ

Pintoricchio
こちらのピントリッキオ展も6月29日まで。