不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Boicottaggio della Disney

2010-02-23 13:57:29 | アート・文化

イタリアはアメリカ的な産業主義を毛嫌いする傾向が強く
フィレンツェにマクドナルドが進出した
十数年前の騒ぎも記憶に新しいところ。
アメリカ企業のマス的展開により、
消費が画一化されることを懸念し、
イタリアらしい生活基盤が揺るがされる
と考えている人が多いのも事実。

2010年の期待の映画といわれて公開が待たれる
ディズニー配給の「不思議の国のアリス」が
上映公開を目前にして
ディズニーボイコットの対象となる可能性も出てきました。

対ディズニーの抗議を開始したのは
イギリス、オランダに次いで3番目。
抗議の理由はディズニーが
映画作品のDVD化&自由販売を
現行の映画公開から4ヵ月後という条件を一ヶ月早め、
映画公開後3ヶ月目から開始すると発表したことによります。

イタリア国内の映画館の状況は
決して先行きの明るいものではなく
市民に愛された街中の小さな映画館は
入場者数の減少により
閉鎖をやむなくされているケースも増えています。
新しいシステムを導入した郊外型大型映画館の登場と
ホームビデオ市場の急速な発展が原因とされていますが、
昨年の3D映画の導入で
3Dシステムに対応した映画館の入場者数は
一時的に増加しています。
今回ボイコット対象となっている「不思議の国のアリス」は
イタリアでも人気のJohnny Deppが出演し、
3D対応であることから
公開されれば興行収入が伸びることは容易に予想できます。
それを犠牲にしてもボイコットしなくてはならないというのが
映画館業界の厳しい現実。

映画配給会社にとっては
映画館での興行収入も重要ですが、
その一方でホームビデオ販売による収入も無視できない状況。
映画館にとっては年々動員数が減少する中、
3D映画が救世主となっているような状況。
そしてその狭間にある消費者は
娯楽として映画を楽しむ人も、
大スクリーンでの映画を好む人も
ホームビデオの発売を心待ちにする人も混在している状況。

最近の映画興行収入の97%は
公開から8週間で決着がついているのが普通で
それ以上のロングランになる映画は非常に少ないのも事実。
中には1週間で上映を外される映画も数多くあります。
上映から外されてからDVDの発売までの数週間は
海賊版の不法販売が横行する時期でもあります。
特にイタリアは取り締まり強化にもかかわらず
海賊版の市場流出やネットを利用した
違法ダウンロードによる被害が膨大になっています。
映画配給会社としては
上映からDVD発売までの期間を縮小することによって
こうした不法販売を減らせるのではないか
という期待もあるようです。

「不思議の国のアリス」の公開予定は3月5日。
映画館とディズニーの静かな闘いは
この10日ほどが正念場といったところです。

アメリカ嫌いといいいながらも
ディズニー映画はもちろん
ハリウッド映画も楽しみにしているイタリア人。
矛盾の中で生きる人々です。