不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Dimostrazione Cucinarelontano

2013-04-14 22:20:07 | 日記・エッセイ・コラム
昨年の秋に続いて、
この春も3日間に亘り
共和国広場で繰り広げられた食と職の祭典。
イタリアって本当に美味しいものと、
職人技術に恵まれているんだねぇと感じる青空市。

このイベントの一角のスタンドで
テレビ局La7が主催する
クッキング・ショーが行われてました。
日曜日の17時からは
古くからの友人である
ジャンミッシェルおじちゃんが登場するというので
出かけてきました。

Facebookでの事前告知では
brik mugellesiを披露すると書いてあって、
その聞いたこともない不思議な食べ物が気になって(笑)。

ジャンミッシェルに出会ったのは18年前。
つまりイタリアに来たばっかりの頃。
その頃、慣れないイタリア生活のせいか、
言葉の壁のストレスか、
とにかく体調不良で
もともとの好き嫌いに輪をかけて
ひどくなっていた私の食生活。
そんな時に当時の同居人が連れて行ってくれたのは
Via degli Alfaniにあった伝説のヴェジタリアン・レストラン。
「Gauguin」という名のそのレストランは
店内の床の真ん中にセーヌ川が描かれていて、
壁には所狭しと芸術作品がかけられている、
とてもアーティスティックな空間で、
フィレンツェの美大の教授たちやら
フィレンツェ周辺の先鋭の現代芸術家たちが集う場所だった。

そのレストランの共同経営者の3人組の親分が
ジャンミッシェル。
1945年にベルギー領時代のコンゴに生まれた
フランス系ユダヤ人で
彼自身も芸術家であり、
若手アーティストの
キュレーターとしても活動していた時期があり
とにかく、文化の奥行きの深い、
頭の切れが良く、無数の引き出しをもっているおじちゃん。
彼の文化的背景のせいもあるだろうけれど、
食文化にも造詣が深くて、
彼の食に対する拘りも並大抵のものじゃない。
だからこそ、
あんなに不思議な空間だったヴェジレストランを
経営していたんだろうけれど、
残念ながら、そのレストランは今はもう存在しない。
そのレストランの土曜日のランチ営業前に
彼らからヴェジタリアン料理を習っていたのは
私にとってこの上ない幸福な出来事であったし、
今でもあの貴重な体験が自分の食に影響を与えていると思う。

だから、今回彼がbrik mugellesiという
よくわからない食べ物を披露するときいて
とてもわくわくした。

ブリックとはチュニジアのソールフード。
春巻きの皮のような薄い皮で具材を包み込んで揚げる
シンプルなファーストフード。
それをムジェッロ風にアレンジしたところが
ジャンミッシェルらしいところかな。

日曜の午後、西日の差す共和国広場で
ブリックを紹介するところから始まったクッキングショー。
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ムジェッロ風の具材は
ローズマリー、サルヴィア、スカローニョ(エシャロット)
そしてトマトソース、ポテトピューレ。
ローズマリー、サルヴィア、スカローニョを
まとめてみじん切りにして
トマトソースとピューレに混ぜ込んで
塩とたっぷりの胡椒で味付けしたものを
ブリックで包んで揚げる。
至ってシンプル!!
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テレビ局の主催ということで、
真っ赤な口紅の司会のおばちゃんが
色々と説明をしてくれる。
やっている本人たちが楽しそうなのが良いよね。
そして見ている方もとても楽しかったんだけど。
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うららかな春の日曜日の午後のイベントとしては
まったりした感じがとてもいい感じにマッチしていた。
用もなく街中をふらついているたくさんのイタリア人も
興味深そうに足を止めて、
いつの間にかスタンドの周りは人だかり。
揚げたてのブリックの試食ができるとあって
すごい勢いでみんな押し寄せてくるし(笑)。
観客席の端っこで食べ損ねそうになっている私を
ジャンミッシェルが目敏く見つけて
司会のおばちゃんの耳元でささやいた途端、
私にも揚げたてのブリックが届けられた!
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揚げ物なのに、さくさく感があって軽い。
あんなに胡椒もりもり入れていたのに、
胡椒臭くない。
とてもマイルドなスナックに仕上がっていて
結構周りのイタリア人にも評判よかった。

自宅で揚げ物しないので、
作ることはとりあえずなさそうだけど、
これもまた一つ新しい食との出会いだったような気がする。
ジャンミッシェルに感謝。
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