超人日記・俳句

自作俳句を中心に、自作短歌や読書やクラシックの感想も書いています。

<span itemprop="headline">アバドの凄絶DVD全集</span>

2011-10-27 16:58:01 | 無題

クラウディオ・アバドのベートーヴェンのDVDのライヴ映像を見た。
ベーレンライター版を使った現代楽器による古楽器的演奏である。アバドはベルリンフィルの重厚さを避けたかったらしく、楽器編成も小編成で小ざっぱりとした音を聞かせる。
だがアバドは病み上がりで痩せ過ぎていて痛々しい。
第九を録音した後がんに倒れ、奇跡的に復活したアバド。そのドラマ性は十分感動的なのだが、闘病の傷跡が凄まじい。
体力の限界で全身全霊で指揮しているのは一目瞭然。それに応えようとベルリンフィルが本気を出しているのも手に取るようにわかる。
その全てを知り尽くしたローマの観客が熱い思いで拍手喝采しているのもわかる。
映像とは恐ろしいもので、それだけ痛切な感覚が直に伝わってくる。
同じベーレンライター版を元にした演奏でもハイティンクなどは元気溌剌。ティンパニーの強打など新機軸を打ち出した。
マッケラスのエジンバラ・ライヴもベーレンライター版ながらひじょうにヴィヴィッドな好演だった。
ベーレンライター版ではないが、シャイーの全集もベートーヴェンのメトロノーム記号に忠実であろうとするところはアバドと共通していて、ともに早いテンポの全集になっている。
病を乗り越えて指揮をするアバドはどこか吹っ切れていて、颯爽とした様子でさえある。
指揮を終えたアバドの眼は爛々と光っていて、音楽をする楽しみを全身で現している。
だがこれは音楽なのか。
痩せ過ぎたアバドは痛々しくて見ていられない。
高齢のギュンター・ヴァントが指揮している姿はこういう痛々しさは微塵も感じられなかった。
これは安価で売って万人が拍手喝采するような映像ではない。
アバドの熱烈なファンには嬉しい映像かもしれないが、繰り返し見るのは辛いベト全である。
yamagishi kenichi氏のサイトで絶賛されていたが、こうまで凄絶とは知らなかった。
今回再発売されて見た人は何を思うだろう。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする