夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『手紙』

2006年12月06日 | 映画(た行)
『手紙』
監督:生野慈朗
出演:山田孝之,玉山鉄二,沢尻エリカ,尾上寛之他

ロードショーにて。今年いちばん泣かされた作品です。
東野圭吾原作の映画は、『秘密』(1999)の小林薫然り、
たぶん、男ならではの感情の抑え方にボロ泣き。

武島直貴、20歳。川崎のリサイクル工場で働いている。
優等生だった直貴が大学進学をあきらめたのは
兄の剛志が強盗殺人を犯して服役中だから。

剛志と直貴は幼い頃に両親を亡くし、
兄弟ふたりで暮らしてきた。
直貴になんとか大学に行かせてやりたいと願う剛志は、
運送会社の激務に耐えるうち、腰を痛めてクビに。
直貴の進学資金に困って空き巣を狙い、
そこへ帰宅した老婦人を刺し殺してしまう。

それからというもの、直貴は加害者の弟として
どこへ行っても差別を受け続ける。
就職先を見つけても、必ず事件のことが噂になり、
嫌がらせを受けて同じ場所には居られなくなる。

やがて、直貴は人づきあいを避けるようになる。
何でも話せるのはお笑いコンビを組む親友の祐輔だけ。
直貴に想いを寄せる由美子にもつれなくするが、
同僚の倉田にとある話を聞かされてから
夢だったお笑い芸人に挑戦する決意をする。

手紙を書くことがめっきり減った今、
本作の主役はタイトル通り、「手紙」です。
手紙を送ることで生きながらえる人がいれば、
手紙を受け取ることで救われる人もいる、
逆に絶望の淵に追い込まれる人もいる。
手紙一通でこんなにも人の気持ちが左右されます。

刑務所から手紙を送り続ける剛志を演じる玉山鉄二は、
『逆境ナイン』(2005)のキワモノ役者と思えないほど
(それも大好きだったけど)、本当に素晴らしい。
その他の出番の少ない脇役陣の演技も優れもの。
特に被害者の息子役、吹越満の「終わりにしようと思った瞬間」は圧巻。
ケーズデンキの会長役、杉浦直樹の台詞にも引き込まれます。
「差別のない場所を探すんじゃない。君は“ここ”で生きていくんだ」。
また、由美子役の沢尻エリカの関西弁はヒドイですが、
彼女の行動と台詞には共感。
「手紙ってめちゃ大事やねんで。命みたいに大事なときがあるねんで」。

いたるところでダダ泣き、ラストはボロ泣き。
剛志の表情に小田和正の『言葉にできない』がかぶさると、もうダメ。
「あなたに会えて ほんとうに良かった
 嬉しくて嬉しくて 言葉にできない」。
ほとんど反則技ですが、参りました。

心は通じ合う。

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