夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『父親たちの星条旗』

2006年12月11日 | 映画(た行)
『父親たちの星条旗』(原題:Flags of Our Fathers)
監督:クリント・イーストウッド
出演:ライアン・フィリップ,ジェシー・ブラッドフォード,アダム・ビーチ他

第二次世界大戦中、太平洋戦争で
もっとも重要な戦略拠点と言われた硫黄島の戦いを
米国側、日本側、それぞれの視点から描いた二部作の第一弾。
第二弾の『硫黄島からの手紙』も先週末から公開され、
すでに話題になっています。

恥ずかしながら、私には前知識がほとんどありませんでした。
前述の『手紙』を観たあと、時間的にちょうどよかったので選んだまで。
ところが、クリント・イーストウッド、恐るべし。参りました。

太平洋戦争の末期、硫黄島に上陸した米軍は、
予想を上回る日本軍の激しい抵抗に苦しみ、
数日間で終わると思っていた戦いに決着をつけられずにいた。

死傷者は増えるばかり、明るいニュースはひとつもない。
そんな中、米国民を熱狂させた1枚の写真があった。
それは、硫黄島の擂鉢山のてっぺんに
6名の兵士が星条旗を突き立てる写真だった。
この写真が新聞の一面を飾ることで、戦勝気分が盛りあがる。
これはカネになると考えた米国政府は、写真に写る兵士を探し出し、
戦時国債の販売キャンペーンのために帰国させる。

しかし、これは一種のヤラセで、
写真に写る光景は、実は2本目に立てられた旗。
擂鉢山を実際に攻略して立てた1本目の旗は別に存在した。
1本目を立てた直後、自分の部下たちが死ぬ思いで立てた旗が
どうせ政治家の家の壁を飾る運命にあると考えた上官が
取り替えさせたのが2本目だった。

2本目の星条旗を立てた者のうち、生き残っていた3名は
衛兵のジョン、伝令係のレイニー、
そして、ネイティブアメリカンの血を引くアイラ。
彼らは英雄としてもてはやされ、その後の人生が大きく変わる。

物語はジョンの息子が当時の関係者から聞き取る形で進みます。
凄絶な戦闘シーンと、同じ時間にあるとは思えないキャンペーンシーン。
グダグダと説明することなく、淡々と描くことによって、
逆に登場人物の心が伝わってきます。

毎度のことながら、イーストウッドの音楽も秀逸。
ジャズが大好きで、10年ほど前にはカーネギーホールで
仲良しのミュージシャンを集めてライブも開いたという彼。
そのときには本人もピアノを演奏したとのことですが、
本作で最後に流れるピアノの曲も本当に美しい。

これは第二弾も観に行かなければなりませぬ。

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