夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『だいじょうぶ3組』

2013年04月01日 | 映画(た行)
『だいじょうぶ3組』
監督:廣木隆一
出演:国分太一,乙武洋匡,榮倉奈々,三宅弘城,安藤玉恵,渡辺真起子,
   木下ほうか,根岸季衣,田口トモロヲ,余貴美子他

前述の『メッセンジャー』と何をハシゴしようかと前日まで悩み、
当日立ち寄った金券ショップに本作の前売り券があればこれにしようと。
で、あったので購入、そのままTOHOシネマズ梅田へ。

予告編を観るかぎり、こんな「良い話」が全面に溢れでた作品はちょっと苦手そうです。
『ソウル・サーファー』(2011)などと同じく、
これを良かったと言わないと、冷酷極悪な人間みたいでしょ。

廣木隆一監督は、独創的なピンク映画で評判だった人。
ピンク脱却後、『ヴァイブレータ』(2003)で数々の映画賞を受賞。
『やわらかい生活』(2005)の頃はわりと好き、
重松清原作の『きみの友だち』(2008)も好きでした。
『雷桜』(2010)はイマイチで、『軽蔑』(2011)では鈴木杏にドン引き。
このところはなんとなく「いい話」路線で毒が抜けすぎかも。

と、極悪人的感想はさておき。
言うまでもなく、『五体不満足』の著者、乙武洋匡氏の実体験に基づく物語です。

桜が舞う新学期、東京郊外にある松浦西小学校。
5年3組の担任教師としてやってきたのは、
生まれつき手も足もない、電動車椅子に乗る赤尾慎之介。

教育委員会に勤める白石優作が、幼なじみの慎之介を推薦。
当初、教育委員会は難色を示していたが、
慎之介の補助教員として優作がつくことを条件に認められる。

優作が慎之介を推薦したのは、慎之介の教師としての能力を信じていたのは勿論だが、
かつては教師でありながら挫折してしまった自分に、
もう一度、子どもたちと向き合うチャンスがあればと思っていたから。

慎之介の姿に、初めは驚きと戸惑いを隠せない生徒たちだったが、
給食の時間に慎之介がみんなの注意を引きつけたことから、
教室内の空気に変化が現れはじめる。

そんなある日、生徒2名の上靴がなくなる事件が起き……。

優等生的作品だとひと言で終わらせてしまうこともできますが、
手足のない実在の人物が自らの実体験を自身で演じているのですから、
偽善だとかなんとか言っちゃ駄目ですよね。

私はただただ生徒の目線同様、乙武さんが食器を使いこなし、
ひとりで階段をのぼり、非常に美しい字を書くことに驚きました。
自分を見世物にしているとも言えるこの状態に、
『さよならドビュッシー』の台詞を思い出します。
おそらくこの人は生まれついての見世物だったと言っても過言ではないでしょう。
だけど、自虐的でも自嘲的でもない。

「普通ではない=変」ということではない。
「普通」とは何なのか考える時間がピカピカに輝いていました。

「私は○○だけど、☆☆だよ」。
○○には自分の苦手なこと、☆☆には自分の得意なことを当てはめてみる授業。
さて、あなたならどんな一文をつくりますか。

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