夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『君と歩く世界』

2013年04月12日 | 映画(か行)
『君と歩く世界』(原題:De Rouille et d'Os)
監督:ジャック・オーディアール
出演:マリオン・コティヤール,マティアス・スーナールツ,アルマン・ヴェルデュール,
   セリーヌ・サレット,コリンヌ・マシエロ,ブーリ・ランネール他

前述の『桜、ふたたびの加奈子』とハシゴ、これも大阪ステーションシティシネマにて。

フランス/ベルギー作品。
原作はカナダ人作家クレイグ・デイヴィッドソンの2本の短編で、
それを1つの物語に再構成したのだそうです。
原題は“Rust and Bone(=サビと骨)”とのこと、この邦題、どないです?

格闘技が大好きで、腕っぷしにだけは自信がある中年男アリ。
妻と別れ、5歳の息子サムを連れてしばし放浪したのち、姉のもとへ転がり込む。
ナイトクラブの用心棒として勤務しはじめた日、
これ見よがしなミニスカートの美人客が他の客とトラブルになっているのを仲裁。
泥酔しているその美人、ステファニーを彼女の自宅まで送り届ける。

ステファニーは観光名所マリンランドで働く、シャチの調教師。
ところがその数日後、彼女は事故に巻き込まれ、両脚の膝から下を失ってしまう。
絶望感に襲われ、誰にも心を閉ざす彼女だったが、
ふとアリが置いていった電話番号のメモを思い出し、連絡してみることに。

こうしてふたりはしばしば会うように。
一緒に泳いだり食事をしたり、やがてステファニーの希望を叶える形で肉体関係も。
ステファニーはアリにどんどん惹かれてゆくのだが……。

鑑賞前に想像していた物語はこんな感じ。
「両脚を失ったシャチの美人調教師が、傷心の誠実な男と出会う。
ふたりはお互いを支え合い、彼女は再び調教師に挑戦する」。
……全然ちゃうやん。えっ、調教師として再生しないの!?と驚きました。

で、出会う男も誠実じゃない。アリはかなりテキトーな男です。
格闘技に夢中になって息子のサムのこともろくに見ない。
女と見ればヤル気満々、どこででもすぐに引っかけて、事が終わればすぐにサヨナラ。
ステファニーとはなんだかんだでつきあいつづけるものの、
アリがいったいどういうつもりなのかわからず、ステファニーはやきもき。

けれども、両脚を失った彼女に対する態度は、
『最強のふたり』(2011)のドリスのそれと似ていて、テキトーだけど温かい。
腫れ物に触るような接し方はせず、変な気の回し方もしません。
海を見れば「泳ぎたくなったから泳いでくる。アンタも泳ぐか」と普通に聞く。
最初ステファニーは、コイツ正気で言っているのかと驚きますが、
そうして普通に尋ねられたことによって泳ぐ気になります。

息子のことを鬱陶しがることもありますが、
嫌われたかなと思ったときにはきっちりと単純な方法でフォロー。
そんな父親のことを息子も大好きなのがわかります。

ラストはハリウッド映画なら、もっと盛り上げてみせたことでしょう。
これはかなり控えめ、『ソウル・サーファー』(2011)に涙した人は物足りなさを感じるかも。
涙しなかった私は、そんな控えめな本作に好感が持てました。

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