夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『怪しい彼女』

2014年07月17日 | 映画(あ行)
『怪しい彼女』(英題:Miss Granny)
監督:ファン・ドンヒョク
出演:シム・ウンギョン,ナ・ムニ,ジニョン,イ・ジヌク,ソン・ドンイル,
   パク・イナン,ファン・ジョンミン,キム・スルギ,キム・ヒョンスク他

前述の『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』とハシゴ。
TOHOシネマズなんば別館から本館へ移動して。

本作のポスターに大写しの主人公。
彼女の顔と髪型がどうも松本明子に見えて(別に嫌いじゃないけど)敬遠しかけていたのですが、
監督は『トガニ 幼き瞳の告発』(2011)の人。
あんなヘヴィーな作品の次がこんなコメディかよと、やはり観に行くことに。

英語タイトルは“Miss Granny”、「ミスおばあちゃん」の意です。

70歳のオ・マルスンは人も呆れる意地悪ばあさん。
息子のパン・ヒョンチョルは老人問題を専門とする大学教授で、
女手ひとつでヒョンチョルを育て上げたのがマルスンの自慢。
しかし、同居する嫁はマルスンの毒舌に疲れ果てている。
目の前で勃発する嫁姑問題にヒョンチョルはおろおろするだけ。

そんなある日、ついに嫁が倒れる。
自分のせいで嫁が心労を抱えているなどと夢にも思わなかったマルスンは、
見舞いに訪れた病院で、「出て行ってほしい」と言われて愕然。
家に帰ることもできず、涙目になっているとき、
いつからこんなところにあったのか、一軒の写真店に目を惹かれる。

写真店に入ってみると、気のよさそうな店主がさっそく写真を撮ってくれる。
(ほぼカメオ出演のこの店主は、『トガニ』のエロ校長役の俳優さん。)
心機一転して外に出てみると、街ゆく人の応対がなんだか変。
「お嬢さん」と呼ばれて、鏡に映る自分の姿を見てビックリ。

それは50年前の自分の姿。なぜか20歳の容姿に戻ったマルスン。
家にはしばらく出かける旨を手紙で知らせ、オ・ドゥリと名乗って生活しはじめる。
昔も今も歌が大好きな彼女は、ひょんなことから孫のバンドで歌うことになり……。

冒頭のマルスンはとんでもなく嫌な婆さん。
嫁に対しても言いたい放題、色気全開の旧知の婆さんのことも罵倒。
私の義母がこんな姑じゃなくてよかったと感謝しました(笑)。

20歳に戻ったマルスン役にシム・ウンギョン。
つまりこれが松本明子にしか見えなかった女優なのですが、彼女がめちゃめちゃかわいい。
『サニー 永遠の仲間たち』(2011)でも若き日の主人公、
『王になった男』(2012)で毒味係を演じた彼女は、
口角上がりすぎの女優が多いなか、いつもへの字の口もと、好感度大。
顔はこんなにかわいいのに、仕草や物言いが婆ちゃんそのもの。
あんたいったいいつの時代の人間やねんと周囲に訝られ、そのさまが傑作。

幼い頃から彼女のことを想い続けてきたパク氏だけが
比較的早いうちから彼女の正体に気づき、何かと助けます。
若返った彼女に釣り合うようにと頑張る様子も可笑しい。

夢を叶えた、恋もした。
70歳には戻りたくなかったであろう彼女が選ぶ道にやっぱり泣いてしまいました。
しかし、あからさまに泣かせる場面よりも、私がいちばんグッと来たのは、
恋した相手を遠くから見つめるマルスンおばあちゃんの表情でした。
ずけずけ言うようになった嫁とのやりとりにもクスッ。

実はなんばの金券ショップが梅田界隈より朝早くから開いているとは思わず、
久々に定価で観てしまった映画なのですが、この1,800円は惜しくなかったです。

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