電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

モンゴメリ『赤毛のアン』を読む(3)

2009年06月25日 05時32分27秒 | -外国文学
モンゴメリ原作の『赤毛のアン』(松本侑子訳、集英社文庫)の続きです。

第23章「アン、名誉をかけた事件で、憂き目にあう」第24章「ステイシー先生と教え子たちの演芸会」。バリー家でのダイアナのパーティで、「できるものならやってみよ」ごっこが始まります。一種の度胸試しで、中学生くらいの年代ならば、ありそうななりゆきです。要するに、意地を張ったアンが屋根から落ちて骨折、新任のステイシー先生に会うこともできません。先生は、村で初めての女の先生です。自然観察をしたり体操をしたり、新しい教育方法を取り入れるだけでなく、アンの作文の力をも認めてくれました。もちろん、マシューのアンに対する全幅の信頼とほめ言葉が、世界中の良心的教育を束にしたよりも大きな教育効果をアンに与えているのですが。
第25章「マシュー、パフスリーブにこだわる」第26章「物語クラブの結成」。実際、マシューの観察は的確でした。同世代の女の子たちの中でアンに感じた違和感は、マリラが作ってくれる実用一点張りの洋服が原因でした。マシューは一大決心をして、パフスリーブのついた、かわいい洋服をアンにプレゼントします。演芸会では、アンの朗読が人気をさらいます。その余熱はなかなかさめず、アンとダイアナに数名の女の子が加わり、物語を書くクラブが結成されます。
第27章「虚栄心、そして苦悩」第28章「不運な百合の乙女」。自分の赤毛に対する劣等感から、行商人に髪染めを買わされたアン、どぎつい緑色に変わった頭を見て打ちひしがれます。赤毛でも、失って初めてわかる豊かな巻き毛の価値でした。中学生くらいならショートカットも可愛いと思うけれど、この時代ではそういう価値観はなかったのでしょうね。失敗はさらに続きます。桂冠詩人テニスンの悲劇にならい、舟に乗せられて流されていく娘の遺体を演じることになったアンは、途中で小舟が浸水していることに気づきます。かろうじて橋脚につかまり助けを呼ぶのですが、ダイアナたちは狼狽して走り回るばかりで助けに来てくれない。タイミングよく助けに来てくれたのは、白馬の王子様ならぬ、ギルバートでした。命を救われて、仲直りを申し出たギルバートに対し、アンの取った対応は誠実なものではありませんでした。それは後悔しても遅い、後の祭りです。
第29章「一生忘れられない思い出」第30章「クイーン学院受験クラス、編成される」。アンとダイアナは、バリー叔母さんの家に招かれます。立派なお屋敷で気ままな暮らしをしていても、きっと寂しく満たされないものがあるのでしょう。留守中、ステイシー先生が家庭訪問。クィーン学院の受験勉強クラスに入れたいかどうか、相談に来たとのこと。マシューとマリラは、アンを進学させることを決意します。放課後一時間の補習授業には、競争相手のギルバートも一緒でした。
第31章「小川と河が出会うところ」第32章「合格発表」。ダイアナの小さい妹の喉頭炎を治療し、アンの的確な対応に注目していたスペンサーヴェイルの医者が往診先でアンを見かけ、健康を懸念してマリラに手紙を寄越します。夏休みを健康回復にあてたアンは、新学期が始まると、また勉強を再開します。そして島中から志願者が集まったクィーン学院の入学試験の結果は、アンとギルバートが一位を分け合い、アルファベット順でアンの名前が一番上に載ったのでした。マシューとマリラは、さぞや嬉しく誇りに思ったことでしょう。
第33章「ホテルの演芸会」第34章「クィーン学院の女子学生」。ホテルで開かれた慈善演芸会で、アンの朗読は大人気を博します。それは多分、アンが知的な美しさを持った女性に成長していることを示すもの。アンがクィーン学院に進学するために町へと旅立つ日、マシューとマリラは嬉しさと寂しさがないまぜになった複雑な気持ちです。学院で、アンはエイヴリー奨学金に目標を定めます。



娘が生まれたとき、老父が言っていました。娘というのは、18歳くらいでもう家を離れる。せいぜい小さいうちに可愛がっておけ、と。実際、そうでした。大学生になると、もう心は家にはありません。飛び立つ鳥が可愛いほど、残される巣は寂しく感じられるものです。ましてや、マシューとマリラは高齢なのですから。

以下、続く。
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