電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響第249回定期演奏会で、ペルト、シベリウス、シューベルトを聴く

2015年12月21日 06時17分42秒 | -オーケストラ
数日前にようやく雪が降ったものの、たちまち融けてしまった暖冬の日曜日、山形テルサホールで山形交響楽団第249回定期演奏会を聴きました。

今回のロビーコンサートは、1st-Vn:丸山さん、2nd-Vn:黒瀬さん、Vla:井戸さん、Vc:久良木さんの四人で、メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第2番から第4楽章とパンフレットに紹介されています。実際には、黒瀬さんに「新婚生活はいいものですか」と質問した西濱事務局長が紹介したように、第3楽章の途中から演奏し、第4楽章ぜんぶと、クリスマス・メドレーもありました。皆さん、けっこう楽しみにされているようで、ホワイエが聴衆でぎっしりになるほど集まっていました。

クリスマス・メドレーの途中でホール内でのアナウンスがホワイエにも入ってしまったのは、たぶんホールの音響担当者がアナウンス放送区域の設定を間違えたのだろうと思います。メンデルスゾーンの途中でなくて良かったかも(^o^;)>poripori

ホール内に入り、演奏前に恒例の指揮者プレトークがありますが、今回は2002年以来13年ぶりの登場となる高関健さんに、西濱事務局長がインタビューするという形です。高関さんは実はヴァイオリン出身で、シベリウスの協奏曲の第3楽章が演奏できず指揮者に転向したというエピソードを披露、ホールの音の向上とともに山響の音も向上したこと、とくに「アマデウスへの旅」というプロジェクトの経験と、金管楽器を主体にオリジナル楽器を採用したことが、シューベルトでは実に効果的に働くことを、あらためて認識して良い経験になったと話します。今回のソリストのキム・ダミさんについては、若いけれど実に成熟した音楽を演奏する素晴らしい演奏家とのことですので、期待が高まります。

本日のプログラムは、

  1. シューベルト 「ロザムンデ」序曲(魔法の竪琴) D.614
  2. シベリウス ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 Op.47
  3. ペルト ベンジャミン・ブリテンへの追悼歌
  4. シューベルト 交響曲第6番 ハ長調 D.589

というものです。

ステージ上の配置は、左から第1ヴァイオリン(8)、チェロ(5)、ヴィオラ(5)、第2ヴァイオリン(7)という対向配置で、チェロの左奥にコントラバス(3)が位置します。正面奥に、フルート(2)、オーボエ(2)、その奥にホルン(4)、クラリネット(2)、ファゴット(2)、最奥部にはトロンボーン(2)とバストロンボーン(1)、その右脇にバロックティンパニです。コンサートマスター席には、犬伏亜里さんが座ります。

指揮者の高関さんが登場し、最初の曲目は、シューベルトの「ロザムンデ」序曲です。実は、曲が始まるまでは、あの愛らしい「ロザムンデ」間奏曲とばかり思っていました。なんともマヌケなことに、実は序曲のほうだったのですね(^o^)/
でも、やわらかな弦楽器の響きによくバランスした、オリジナル楽器を用いた金管の華麗な炸裂を味わえて、良かったよかった(^o^)/

続いて協奏曲です。この曲では、オーケストラはもちろん現代楽器を使用しているようです。独奏者のキム・ダミさんが登場すると、スラリと伸びた長身がまっすぐに立ち、実にすっきりと姿勢が良いことに驚きました。元弓道有段者の立場から言えば、体の軸が垂直に保たれており、どこにも無理がなく安定感が感じられます。大好きなシベリウスの協奏曲の演奏は、ゆったりとしたテンポで堂々としたもので、豊かに楽器を鳴らします。そういえば、作曲家もヴァイオリン出身、指揮者も同じで、オーケストラの、特に弦楽器の響きの豊かさは当然のことかもしれませんが、独奏ヴァイオリンがオーケストラと交わす多彩な音色に、若い演奏家とは思えない、堂々たる落ち着きと成熟を感じました。

満場の拍手に応えて、アンコールはラフマニノフの「ヴォカリーズ」です。これも、ゆったりとしたテンポで、ロマンティックな情感をたっぷりと聴かせ、曲の終わりには思わずため息がもれました。

15分の休憩の後、後半はアルヴォ・ペルトのミニマル・ミュージック、「ベンジャミン・ブリテンへの追悼歌」です。8-7-5-5-3 の弦楽セクションに一本だけのチューブラー・ベルが加わり、鐘の音に導かれて、下降する音階が延々と繰り返されて続きます。しかも、しだいに熱と力を増して来るところはまさにミニマル・ミュージックの真骨頂でしょう。そして、音階が下降しなくなると、エネルギーがたまったままに終わり、これが哀悼の思いを表すのでしょうか。

最後の曲は、シューベルトの交響曲第6番です。楽器編成は、8-7-5-5-3 の弦楽セクションに加えて、Fl(2),Ob(2),Cl(2),Fg(2),Hrn(2),Tp(2),Timpというもので、典型的な二管編成です。もちろん、金管楽器とティンパニはオリジナル楽器を使用します。この曲は、フルートやオーボエなど、木管楽器が軽やかに活躍するあたりはいかにもロッシーニ風で、当時ウィーンを席巻していたロッシーニの影響を受けていたのは確かでしょうが、同じシューベルトの交響曲第三番あたりと比べれば、もう一度ベートーヴェンに立ち戻ったかのような面もあります。指揮者の高関さんは、やわらかなリズムと爽やかな音色で、弦楽器とのバランスの取れた音量ながら、金管楽器の輝かしさとインパクトを生かした、魅力的な演奏を引き出していました。

終演後、ファンの集いに参加しましたが、山形Qでおなじみのヴァイオリンの今井東子さんがマイクを持ち、インタビュアーをつとめたのには、ちょっと驚いてしまいました。たぶん、語学力を買われての登板?

  • キム・ダミさん  今年は、ルツェルン音楽祭で初のリサイタルを開けたのが一番印象的だった。二番目は、山形の演奏会とのこと(^o^)/ 社交辞令とはいえ、ちょいと嬉しいですね~
  • 高関健さん  金管楽器でオリジナル楽器を使用したのが、実に良い経験だった。シューベルトの曲では、モダン楽器の場合は、もっと抑えてと要求することが多いが、そうすると輝かしさが減退する。オリジナル楽器の場合は、「もっと吹いて」と要求しても、音量バランスが崩れず、輝かしさが発揮できる。あらためて山響の行き方の意味を認識した。また呼んでください、とのことでした。

うーむ、なるほど。古典派や前期ロマン派の音楽でオリジナル楽器を使用することには、響きの透明感の他に、そういう面もあったのか。解説を聴いて、初めて理屈を認識するとともに、ふだんから接している山響の音の魅力の理由をあらためて感じることができました。

今回も、良い演奏会でした。曲目の魅力もあったのか、お客様もけっこう入っていましたので、営業面でも少しは貢献できたのではないかと思います。次回の演奏会が楽しみです。

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