すぎなの風(ノルウェー編)       ∼北欧の北極圏・トロムソから∼

北欧の中のノルウェー、
北極圏でも、
穏やかで住みやすいトロムソから
お届けいたします。

巣立ち見送る この不思議

2024-03-11 | ノルウェーから
受験、卒業と、
何やら、ざわざわする時期ですねえ。

先週、我が家でも、
12月から下宿していた子が
巣立っていきました。
いや、日本に帰っただけなのですが。

昨年8月、
以前トロムソに旅行に来て
カフェで出逢った日本人女性から、
メールがありました。

「こういうお嬢さんがトロムソに行くので、
 晴子さんを紹介してもいいですか?」。

それで、トロムソに来て一週間という
本人に会いました。

日本の音楽大学の博士課程の学生で、
自分の研究のために来たと言います。

「提携校の留学生」というのは、
守られているものです。

でも、彼女の学校は、
トロムソ大学と提携がなく、
全く状況が違いました。

自分であちこち交渉し、
「学生」ではなく、
「お金を持ち合わせているリサーチャー
(ノルウェーで収入を得る必要はない)」

というポジションで、
ついに音楽院に
自分の研究場所を確保しました。

生活費、活動費、旅費など
全て自費

実際には、日本でバイトして
授業料も自分で払う学生です。

でも、
それしか方法がなかったのです。

ここに至るまでのプロセスだけでも、
私には初耳だらけで、
その心意気に感心しました。

しかし、「大学」という後ろ盾がないなど、
リサーチは難航。
音楽院では同志もおらず、
人との関りはなく、
トロムソの家賃、物価は高く、
精神的にかなりきつくなっていました。

そこで、
極夜を機に、彼女は、
うちに引っ越してくることになりました。

ご飯の作り方を教えてほしいとのこと。
夕食は3人で作って食べて、
食器洗いも協働。

「前、失礼しまぁす!」
なんてバイト用語が飛び交う。

そうそう、リクエストで和食も増えたなあ。
夜の散歩を一緒にしたり、
マンネリ化した私たちには、
いい刺激。
いろんな話をし、
いっぱい泣いて笑って、
時には、お互い謝りもした。

ノルウェーで、
「リラックスした暮らし」を 
彼女は初めて知ったと言います。

私たちは、ほぼ定刻に帰ってきて、
夫婦で料理して、食べる。
パンやケーキも手作り。
外を歩けば、景色は美しく治安もいい。
お化粧やお洒落をしてなくても、
誰も何も言わない。

私たちが心がけたのは、
彼女が
「安心」できること。

問題や彼女の変化に合わせて、
ルールを相談しながら変えていきました。

彼女は、私たちがしたことを
「子育て」と言ってくれます。
有難いことです。

私たちも、若者の視点、現実を知ったり、
私たちの暮らし方を
見直すきっかけにもなりました。

この時間の中で、彼女は、
人生の大きな決心をしました。

私たちは、そんな貴重なときを
一緒に過ごさせてもらったのです。

実に、人の巡り合わせとは、
不思議なものですねえ。

それにしても、
このような
意志ある学生を支援するシステムは、
他にないのでしょうか?

日本の問題なのか? 
ノルウェーの問題なのか?

とにかく、彼女が、ここでできることはやり切り、
元気に日本に帰ることができた。

彼氏と二人でくれた電話の後、
安堵して涙した私たちでした。


最後の夜、ベランダで。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 怒るって、エネルギー要るわあ。 | トップ | ふりだしから コロコロ、ポ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ノルウェーから」カテゴリの最新記事